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[AAS11-25] 筑波山における氷晶核粒子濃度の変動

キーワード:エアロゾル、バイオエアロゾル、氷晶核粒子
混相雲内の氷晶の増減は、その雲の微物理過程を変化させ、結果として雲特性(雲寿命、降水量、放射収支)を変調させ得る。混相雲における氷晶の形成には、氷晶核粒子(Ice Nucleating Particle, INP)と呼ばれるエアロゾル粒子の存在が不可欠であり、これまで鉱物粒子やいくつかのバイオエアロゾル粒子は有効なINPであることが示唆されてきた[1]。しかしながら、実大気中でのINP濃度の観測はいまだに不足しており、これらのエアロゾル粒子濃度が変動することによる、INP濃度への定量的な影響は十分に解明されていない。特に、バイオエアロゾル粒子は、その濃度や種類、時空的変動などの実大気中における基礎的な理解も未だ十分ではなく、その種類ごとに有する氷核活性も大きく異なる可能性が示唆されている。したがって、実大気中のINPの理解向上には、バイオエアロゾル粒子の氷核活性を明らかにすることが不可欠である。そこでエアロゾル粒子濃度、特にINPと深く関連すると考えられる鉱物粒子とバイオエアロゾル粒子に着目し、これらとINP濃度との関係を明らかにするために、筑波山山頂の観測所(36.225° N, 140.098° E; 標高 877 m)において、エアロゾル粒子観測とINP濃度の測定を行った。
INP濃度測定ではポリカーボネートメンブレンフィルター(φ47 mm, pore size: 0.4 µm, Cytiva)上に、5 L/minで167時間、粒子を吸引捕集した。フィルター試料の一部(φ11 mm)を超純水(1 mL)に懸濁させた。その液滴2.5 µlを、ワセリンを塗布した冷却プレート上に、約100個設置し、乾燥空気を約0.7 L/minで導入しながら1 ℃/minで冷却し液滴の凍結温度を記録した。その後、捕集空気量からINP濃度を算出した。さらに、鉱物粒子などの耐熱性INP濃度を測定するために、上記と同様の方法で調製した懸濁液を95℃の湯浴で30分間加熱し、この試料に含まれるINP濃度についても同様に算出した[2]。INP濃度測定のための粒子捕集に並行して、筑波山山頂の観測所では、Optical Particle Counter (OPC, KC-01E, RION)、 Polarization OPC (POPC, YGK)、Wideband Integrated Bioaerosol Sensor (WIBS, DMT)を用いてエアロゾル粒子を測定した。本要旨では2024年4 - 8月の結果を示す。
4 - 8月における-15℃で活性するINP濃度は、およそ0.01 - 1.64 /L、-20℃でおよそ0.16 – 1.00 /Lであった。次にエアロゾル粒子表面積当たりの氷核活性サイト(Ice Nucleation Active Site, INAS)密度を算出した。-15℃でのINAS密度は、およそ0.39 – 154 /cm2、-20℃でおよそ3.04 – 168 /cm2であった。INP濃度、INAS密度の明瞭な変化傾向は見られず、黄砂が飛来した期間などに比較的高い値が得られることがあった。また、本研究のINP濃度測定値と、0.5 µm以上の粒子の個数濃度から経験的に推定されたINP濃度[3]を比較すると、一部の期間を除き、推定値は概してINP濃度を過小評価することが示唆された。
さらに、0.5 µm以上の粒子数に対する各蛍光粒子の割合において、リボフラビン由来の蛍光粒子割合と-15℃でのINAS密度には他の蛍光粒子に比べ強い相関がみられた。これらの結果から、氷晶形成時の温度によってバイオエアロゾルのINPとしての活性が異なることが示唆された。長期間を通して同様な傾向がみられるかは今後の解析で明らかにする必要がある。
[1] Creamean, et al., 2013, Science, 339, 1572-1578.
[2] Tobo, 2016, Sci. Rep., 6.
[3] DeMott, et al., 2010, PNAS, 107.25, 11217-11222.
INP濃度測定ではポリカーボネートメンブレンフィルター(φ47 mm, pore size: 0.4 µm, Cytiva)上に、5 L/minで167時間、粒子を吸引捕集した。フィルター試料の一部(φ11 mm)を超純水(1 mL)に懸濁させた。その液滴2.5 µlを、ワセリンを塗布した冷却プレート上に、約100個設置し、乾燥空気を約0.7 L/minで導入しながら1 ℃/minで冷却し液滴の凍結温度を記録した。その後、捕集空気量からINP濃度を算出した。さらに、鉱物粒子などの耐熱性INP濃度を測定するために、上記と同様の方法で調製した懸濁液を95℃の湯浴で30分間加熱し、この試料に含まれるINP濃度についても同様に算出した[2]。INP濃度測定のための粒子捕集に並行して、筑波山山頂の観測所では、Optical Particle Counter (OPC, KC-01E, RION)、 Polarization OPC (POPC, YGK)、Wideband Integrated Bioaerosol Sensor (WIBS, DMT)を用いてエアロゾル粒子を測定した。本要旨では2024年4 - 8月の結果を示す。
4 - 8月における-15℃で活性するINP濃度は、およそ0.01 - 1.64 /L、-20℃でおよそ0.16 – 1.00 /Lであった。次にエアロゾル粒子表面積当たりの氷核活性サイト(Ice Nucleation Active Site, INAS)密度を算出した。-15℃でのINAS密度は、およそ0.39 – 154 /cm2、-20℃でおよそ3.04 – 168 /cm2であった。INP濃度、INAS密度の明瞭な変化傾向は見られず、黄砂が飛来した期間などに比較的高い値が得られることがあった。また、本研究のINP濃度測定値と、0.5 µm以上の粒子の個数濃度から経験的に推定されたINP濃度[3]を比較すると、一部の期間を除き、推定値は概してINP濃度を過小評価することが示唆された。
さらに、0.5 µm以上の粒子数に対する各蛍光粒子の割合において、リボフラビン由来の蛍光粒子割合と-15℃でのINAS密度には他の蛍光粒子に比べ強い相関がみられた。これらの結果から、氷晶形成時の温度によってバイオエアロゾルのINPとしての活性が異なることが示唆された。長期間を通して同様な傾向がみられるかは今後の解析で明らかにする必要がある。
[1] Creamean, et al., 2013, Science, 339, 1572-1578.
[2] Tobo, 2016, Sci. Rep., 6.
[3] DeMott, et al., 2010, PNAS, 107.25, 11217-11222.