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[AAS11-P02] 不飽和有機化合物のオゾン反応メカニズム: 大気エアロゾルと皮膚表面で起こる多相酸化過程との関連性
キーワード:大気化学、エアロゾル、皮膚、ラジカル、テルペン、レーザー
エアロゾルに含まれる不飽和有機化合物は、気体のオゾンと反応することで、オゾニドなどの様々な化合物に変化する。このプロセスは、大気中のHOx/NOxサイクルに影響し、 またエアロゾルの変質に寄与するため、大気化学において重要である。また、皮膚の表面に含まれるスクアレンなどの不飽和有機化合物はオゾンと反応し、気相に揮発性有機化合物を放出するため、室内大気汚染の観点から注目されている。本研究では、代表的な不飽和有機化合物として、ヒトの皮脂に多量に存在する不飽和炭化水素であるスクアレン (C30H50, C=Cを6個持つ)と、植物由来テルペノイドの一種であるネロリドール (C15H25OH, C=Cを3個持つ)のオゾン酸化反応の研究を行った。 アセトニトリルと水を体積比で4:1の割合で混合した溶媒を用いて、スクアレンとネロリドールの1 mM溶液を調整した。また、中性のヒドロペルオキシドなどを検出するために塩化ナトリウムを添加し、溶液中の濃度が0.2 mMとなるように調整した。この溶液に気体オゾンを一定時間バブリングし、その後、質量分析法(四重極質量分析計 Agilent6130)で解析を行った。スクアレンについて、H2OとH218Oを用いた実験結果と比較することで、アルデヒドが生成物として存在することが示唆された。また、原液のスクアレンやネロリドールに直接オゾンを吹き込んで、赤外分光法(ATR-FT-IR,島津IRAffinity-1)による分析を行った結果、スクアレンについて、C=O結合の生成が確認されたほか、オゾニドに由来すると思われるC-O単結合生成が確認された。 スクアレン溶液のオゾン酸化では、クリーギー中間体を経由してアルデヒドを生成するという先行研究に矛盾しない結果が得られた。また、ネロリドール溶液のオゾン酸化では、複数のヒドロペルオキシドが生成することが明らかになった。一方で、原液の不飽和有機化合物と水溶液にした不飽和有機化合物のオゾン反応では生成物が大きく異なることが明らかになった。このことは、エアロゾルや皮膚表面における水分子の有無が、反応メカニズムに大きな影響を与えることを示唆している。今後は新規実験手法を用いて、不飽和有機化合物とオゾンの反応で気相に放出されると予想されているOHラジカルを直接検出する実験を行う予定である。本研究が完成すると、不飽和有機化合物とオゾンの多相反応のメカニズムの分子レベルでの解明が期待される。