17:15 〜 19:15
[AAS11-P07] 夏季西部北太平洋上低層雲への大陸由来気塊中の黒色炭素エアロゾルの取り込み
キーワード:黒色炭素エアロゾル、雲取り込み、飛行機観測、バイオマス燃焼
黒色炭素エアロゾル(BC)は、不完全燃焼で排出される光吸収性エアロゾルであり、その直接効果に加え、雲に取り込まれるとその性質や寿命に影響を与える準直接効果をもつ。BCの雲への取り込みは、湿性沈着によるBC消失プロセスとしても重要である。しかし、BC雲取り込み率と雲水量など雲パラメーターとの定量的な関係はまだよくわかっていない。本研究では、航空機による雲とBCの同時直接観測データから、混合希釈と雲への取り込みによる濃度変化を分離し、雲に取り込まれるBC割合を定量化して雲パラメーターとの関係を明らかにすることを目的とした。
本研究では、放射収支に重要な夏季の西部北太平洋の下層雲の特徴と、雲に影響を与える海洋・人為起源エアロゾルの動態を明らかにすることを目的とし、2022年7~8月に女満別空港を拠点として北海道東方沖で実施された航空機観測データを使用した。観測にはDiamond Air Service株式会社のKing Air機が用いられ、洋上の下層雲とエアロゾルの相互作用や雲の特性に関するデータを取得するため、雲の上下をスキャンするように飛行し、雲水量(CLWC)や雲粒密度、BC濃度やエアロゾル成分、一酸化炭素(CO)や一酸化二窒素(N₂O)、水蒸気(H₂O)濃度等の鉛直分布が測定された。その観測中、高度1~3kmの下層雲が存在する領域で高濃度のCOおよびBCが観測された2022年7月29~30日とその前日の28日に焦点を当て、以下の解析を行った。
この期間の各フライトで何度も雲をスキャンし測定した雲の上下でのCO・N₂O・H₂O濃度の関係および後方流跡線解析から、それぞれ空気塊の由来や輸送経路を推定した。今回観測された比較的高濃度のBC・COを含む空気塊は、中国由来と思われるCOとN2Oが正相関を示し、水蒸気濃度が比較的高い空気塊 および東シベリアでのバイオマス燃焼由来のCOが大きく増加するがN2Oの濃度変化を伴わない空気塊と推定された。それらが低層雲の上側2km以上の高度から輸送され、北部太平洋海上低高度に存在したCO・BCが低濃度で、水蒸気濃度が高い空気塊に接する高度に低層雲が形成されていた。雲内のCO・N₂O・H₂O濃度が、雲上と雲下での各気体濃度をすべて同じ割合で内分した値になっている場合、雲内の空気は観測時にその上下にあった空気塊が混合したものであると判断した。3フライトで**回の雲スキャン中4プロファイルでのみ上記の関係が確認できた。それらにおける雲内空気に対する雲上の高CO・BC空気塊の混合割合は約45%が多く、10%のものもあった。
これら4プロファイルに対し、雲内及び雲の上下のCO・BC濃度の関係からBCが雲に取り込まれた割合を推定した。その中央値は約10%~60%、中央50%範囲も10%以下から約70%とばらつきが大きかった。同じシベリア由来の空気塊が雲下の北部太平洋海上気塊と同程度の混合比で混合していた7月30日に観測された3プロファイルでも、BCの雲に取り込まれた割合は大きくばらついていた。 これらのBCの雲取り込み率を対応する低層雲の雲水量の相関を調べた。雲水量・雲取り込み率両方ともばらつきが大きいため有意ではないが、逆相関のような関係がみられた。今回の観測で、観測時に雲がないところでも雲内と同じくBCが雲に取り込まれたと思われる濃度になっている空気塊があることが分かった。これらの結果から、BCの雲への取り込み割合は、同じ雲の中でもBC粒子自体の性質や雲の条件により大きくばらつき、また空気が雲を出入りするなどの履歴によっても変化すると考えられ、今回の手法では雲が発生した直後でもない限り、推定は難しいことがわかった。今後は、雲上および雲内の異なる雲取り込み率の空気でのBCの粒径や被覆状態の違いを調べ、BC粒子の性質と雲取り込み率の関係を調べることが重要と考える。
本研究では、放射収支に重要な夏季の西部北太平洋の下層雲の特徴と、雲に影響を与える海洋・人為起源エアロゾルの動態を明らかにすることを目的とし、2022年7~8月に女満別空港を拠点として北海道東方沖で実施された航空機観測データを使用した。観測にはDiamond Air Service株式会社のKing Air機が用いられ、洋上の下層雲とエアロゾルの相互作用や雲の特性に関するデータを取得するため、雲の上下をスキャンするように飛行し、雲水量(CLWC)や雲粒密度、BC濃度やエアロゾル成分、一酸化炭素(CO)や一酸化二窒素(N₂O)、水蒸気(H₂O)濃度等の鉛直分布が測定された。その観測中、高度1~3kmの下層雲が存在する領域で高濃度のCOおよびBCが観測された2022年7月29~30日とその前日の28日に焦点を当て、以下の解析を行った。
この期間の各フライトで何度も雲をスキャンし測定した雲の上下でのCO・N₂O・H₂O濃度の関係および後方流跡線解析から、それぞれ空気塊の由来や輸送経路を推定した。今回観測された比較的高濃度のBC・COを含む空気塊は、中国由来と思われるCOとN2Oが正相関を示し、水蒸気濃度が比較的高い空気塊 および東シベリアでのバイオマス燃焼由来のCOが大きく増加するがN2Oの濃度変化を伴わない空気塊と推定された。それらが低層雲の上側2km以上の高度から輸送され、北部太平洋海上低高度に存在したCO・BCが低濃度で、水蒸気濃度が高い空気塊に接する高度に低層雲が形成されていた。雲内のCO・N₂O・H₂O濃度が、雲上と雲下での各気体濃度をすべて同じ割合で内分した値になっている場合、雲内の空気は観測時にその上下にあった空気塊が混合したものであると判断した。3フライトで**回の雲スキャン中4プロファイルでのみ上記の関係が確認できた。それらにおける雲内空気に対する雲上の高CO・BC空気塊の混合割合は約45%が多く、10%のものもあった。
これら4プロファイルに対し、雲内及び雲の上下のCO・BC濃度の関係からBCが雲に取り込まれた割合を推定した。その中央値は約10%~60%、中央50%範囲も10%以下から約70%とばらつきが大きかった。同じシベリア由来の空気塊が雲下の北部太平洋海上気塊と同程度の混合比で混合していた7月30日に観測された3プロファイルでも、BCの雲に取り込まれた割合は大きくばらついていた。 これらのBCの雲取り込み率を対応する低層雲の雲水量の相関を調べた。雲水量・雲取り込み率両方ともばらつきが大きいため有意ではないが、逆相関のような関係がみられた。今回の観測で、観測時に雲がないところでも雲内と同じくBCが雲に取り込まれたと思われる濃度になっている空気塊があることが分かった。これらの結果から、BCの雲への取り込み割合は、同じ雲の中でもBC粒子自体の性質や雲の条件により大きくばらつき、また空気が雲を出入りするなどの履歴によっても変化すると考えられ、今回の手法では雲が発生した直後でもない限り、推定は難しいことがわかった。今後は、雲上および雲内の異なる雲取り込み率の空気でのBCの粒径や被覆状態の違いを調べ、BC粒子の性質と雲取り込み率の関係を調べることが重要と考える。