日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] 大気化学

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:江波 進一(国立大学法人筑波大学)、入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、石戸谷 重之(産業技術総合研究所)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)

17:15 〜 19:15

[AAS11-P25] 大阪国際空港周辺のCO₂カラム混合比計測

*河野 光彦1長濱 智生2水野 亮2 (1.関西学院大学、2.名古屋大学)

キーワード:温室効果ガス、都市域、大阪、空港、二酸化炭素、CO₂

【はじめに】
温室効果ガスであるCO₂について大気中の濃度を予測することは未だ不確実で,発生源や吸収源の正確な位置と原因は未解明なままである。とくに大規模な排出実態が予想される都市部の詳細なデータ、とりわけ上空における観測データは決定的に不足している。そこで本研究では大阪国際空港(伊丹空港:ITM)周辺で日中のCO₂傾斜カラム平均混合比を観測し,その時間変動や季節変動などを測定したので報告する。これらのデータ取得により,温室効果ガスの排出問題における航空機の影響や生活環境・地形・気象などの影響について考察する。
【方法】
観測地点はITM周辺の4地点である。ITMの滑走路は南東から北西に伸びている。これら4地点は,南西と北東の滑走路に沿わない2地点(滑走路から約1 km)と,着陸方向に当たる南東地点(滑走路端から約0.5 km)および離陸方向に当たる北西地点(滑走路端から約0.5 km)である。観測方法として小型可搬型CO₂計測器を用いて行うが,その原理は太陽を光源とした赤外線スペクトルを観測し大気CO₂の光吸収からその濃度がわかる分析法である。そのため,地上のみならず航空機が通過するような高い場所でのCO₂測定が可能になる。秋・冬・春でそれぞれ4週間の4回の週末に観測装置を観測地まで運び,日中の6時間以上にわたり測定データを取得した。観測地4地点におけるCO₂の季節変動などを気象データとともに記録する一方で,平日には大阪府箕面市の関西学院千里国際キャンパス(SOIS)でも同様の観測をして,データの比較を行った。
【結果】
2024年秋にあたる9月4~30日の観測データを図1「ITM 周辺およびSOISにおけるCO₂カラム混合比(任意単位)」に示す。太陽高度が51.9~52.6°である時の平均値を示し,エラーバーは変動している値の標準偏差を表す。白抜き四角(□)がITM 周辺の観測データで,赤丸(●)がSOISのそれとなっている。白抜き四角に添えられているSW,SE,NW,NEは,ITM滑走路からみた観測地点の方位を示し,それぞれ南西,南東,北西,北東を表している。
SOISで観測したCO₂カラム混合比よりもITMでの観測値のほうがNWの値を除いて低いことがわかる。その一方で、飛行機が離陸する方向はNWであり、その事実を考えると飛行機からのCO₂排出が原因でNWの値が高くなっているとも考えられる。別の見方として,飛行機からのCO₂排出とは関係なく,9月23日前後がなんらか他の原因でITMおよびSOISでともにCO₂カラム混合比が高くなってしまっていた時期であったのではないか。そしてそのことから,このような結果になったという考え方もできる。
ところが実は,2024年冬にあたる12月の観測では,上記の観測のような顕著な濃度の傾向はみられなかった。むしろ,SOISでのCO₂カラム混合比のほうがITMのそれより高いぐらいであったし,ITM周辺の観測地点によるCO₂カラム混合比の違いもあまりみられなかった。そして,この時期の観測結果は全体的にCO₂カラム混合比が高くなっていた。
【考察】
これは冬季による光合成の寄与が小さくなったことによると考えられる。ITM周辺はSOISに比べ比較的自然が残されている一方で,SOISは住宅開発によって比較的住宅が密集している。そのうえ,ITM周辺は平地が広いのに対して,SOIS周辺は山が接近していることも影響しているのかもしれない。ITM周辺の秋季では比較的光合成が活発であり,CO₂吸収されることによって全体のCO₂カラム混合比が抑えられ,飛行機からのCO₂排出が顕著に見えたのに対し,冬季では光合成によるCO₂吸収が弱まったことによる,全体的なCO₂カラム混合比の押し上げによって,飛行機からのCO₂排出が見えにくくなったと考えることができる。一方,SOIS周辺では光合成によるCO₂吸収がもともと少なかったことにより,その影響がほとんど出なかったのではないかと考えられる。
【展望】
2025年の春季観測は3~4月に予定しており,この予稿では報告できないが,比較的光合成が活発になる時期に秋季のような変化が観測できるかが期待される。ITM周辺とSOISでのデータの比較によって不確定要素を削減できるが,さらに頻繁で長期的な観測によって蓄積された大量のデータが観測日による変動など不確定要素をさらに小さくできるだろうと期待する。今後の取り組みで観測回数を多くすることによる信頼性を向上を目指す。