日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] 大気化学

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:江波 進一(国立大学法人筑波大学)、入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、石戸谷 重之(産業技術総合研究所)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)

17:15 〜 19:15

[AAS11-P26] GOSATとGOSAT-2のカラム量データの超過濃度比を用いた中国のCO2排出の影響評価

*林 勇佑1齋藤 尚子1 (1.千葉大学環境リモートセンシング研究センター)


キーワード:GOSAT、GOSAT-2、化石燃料CO2、超過濃度比ER

本研究では、GOSAT(Greenhouse gases Observing Satellite)とGOSAT-2のXCO、XCH4データを用いて、バックグラウンド濃度に対する超過濃度(ΔXCO2、ΔXCH4)を算出し、2気体の超過濃度の比を取ることで、中国の3つの陸地域(中国東部、中国北部、中国南部)と日本と中国の間に位置する2つの海領域(東シナ海、日本海)で「Enhancement Ratio(ER)」を月ごとに算出した。さらに、算出したERとEDGAR(Emission Database for Global Atmospheric Research)のCO2、CH4インベントリデータを比較し、中国大陸におけるCO2の発生源について調べるとともに、中国大陸での化石燃料起源のCOの放出が日本の海域に与える影響を評価した。
ERを解析した結果、中国北部、中国東部ではΔXCO2/ΔXCH4のERと相関係数は年間を通して高く、特に冬(11~2月)と夏(7、8月)の期間で高いことが明らかになった。また、このERの季節変動は、同じ地域での電力産業由来のCO2排出量(EDGAR)の季節変動と類似していることから、中国北部、東部のERは電力産業によるCO2排出の影響を示していると考えられる。また、中国南部では、冬季にERが高く、電力産業由来のCO₂排出の影響が示唆された一方で、夏季にはERが低下し、農業起源のCH₄排出の影響を受けている可能性が示された。
CO2とCH4の大規模な排出源がほとんどないとみなせる海領域では、2、3月にERと相関係数が高く、先行研究のTohjima et al. [2014, 2020]が波照間島の地上観測データをもとに解析した結果と一致していた。2つの海領域には大規模なCO2の排出源がないこと、中国北部・東部ではΔXCO2/ΔXCH4のERが年間を通して高いことから、大陸側で化石燃料の燃焼によって放出されたCO2が冬季の東アジアモンスーンによって海領域に輸送され、海領域のΔXCO2の増加の原因になったと考えられる。
さらに、2月の東シナ海と日本海の空気塊の後方流跡線解析から、東シナ海では中国北部・東部から、日本海では中国北部から化石燃料CO2が運ばれている可能性が明らかになった。本研究のGOSAT、GOSAT-2データに基づくΔXCH4/ΔXCO2とTohjima et al. [2014]の波照間島の地上観測データに基づくΔCH4/ΔCO2の季節変動の特徴が一致していることからも、衛星データに基づくERの解析結果にも先行研究で議論された中国からの化石燃料起源CO2の日本の海域への輸送の特徴が表れていることが示された。