日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC32] 雪氷学

2025年5月28日(水) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (4) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:大沼 友貴彦(宇宙航空研究開発機構)、谷川 朋範(気象庁気象研究所)、渡邊 達也(北見工業大学)、波多 俊太郎(国立極地研究所先端研究推進系地圏研究グループ)、座長:大沼 友貴彦(宇宙航空研究開発機構)

14:30 〜 14:45

[ACC32-04] 光学ボアホールカメラを用いたスバールバル諸島Kongsvegen氷河の内部構造直接観察

*波多 俊太郎1杉山 慎1,2、Hult John3、Revheim Maiken3、Innanen Satu3、下畑 克洋4、喜多 淳滋4、Schuler Thomas3 (1.北海道大学低温科学研究所、2.北海道大学北極域研究センター、3.オスロ大学地球科学科、4.株式会社レアックス)

キーワード:氷河、スバールバル諸島、氷河堆積物、氷河底面環境、掘削孔カメラ

氷河の内部構造には氷河流動や氷底における堆積物取り込み過程について重要な情報が含まれている。しかしながら、氷河内部へのアクセスは困難で、特に底面付近における氷や堆積物の構造の把握は非常に困難である。氷河内部の氷および堆積物の構造を調査するために、2024年8月にスバールバル諸島Kongsvegen氷河(78°48’N, 12°59’E)で光学ボアホールカメラを用いた氷河観測を行った。ここでは、氷河底面に至る掘削孔全層で得られた氷河内部構造に関する初期解析結果を報告する。

Kongsvegen氷河は面積約100km2を持ち、氷河末端がKongsfjordenフィヨルドに流入するカービング氷河である。Kongsvegen氷河はサージ氷河に分類され、観測された最近のサージは1948年で、現在は静穏期にある。2005–2015年の流動速度は平衡線高度近傍で~5 m a−1であったが、2016年以降加速傾向を示しており、2022年の流動速度は~40 m a−1であった。Kongsvegen氷河の底面には堆積物が分布していることが判明しているため、氷河底面の氷河氷には氷河流動に伴って氷に取り込まれた堆積物が含まれていることが予想される。

2024年8月に、Kongsvegen氷河の消耗域で熱水掘削を用いた全層掘削を実施した。ボアホールカメラ観測は、BIP-6システム(レアックス社製)を用いた。このシステムは円錐鏡がプローブに内包されており、横方向360度にわたって孔壁画像を取得できる。また、プローブに含まれる方位計を用いて、方位情報と共に孔壁画像を記録した。今回の観測では、水平/鉛直方向それぞれ1 mmの分解能で観測を行い、361 m全層にわたって孔壁画像の取得に成功した。

取得された孔壁画像からは、異なる種類の氷河内部層が観察された。まず氷河氷からは、輝度によって異なる構造の氷が互層となる様子が確認された。これは氷内に含まれる気泡の密度に影響を受けるものと考えられる。また、深度245–361 mでは氷内に堆積物が分布しており、孔壁画像の目視観察により64層の堆積物層が確認された。堆積物層の頻度は深くなるにつれて増加していた。堆積物層の傾斜方向は南方向が卓越しており、北方向への氷河流動から予想されるスラスト構造の傾斜方向と整合的である。これらの結果は、底面から上方約100 mの深度にまで氷河内部に堆積物層が存在することを示し、氷河底面における堆積物取り込み過程に貴重な情報を提供するものである。