日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC32] 雪氷学

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:大沼 友貴彦(宇宙航空研究開発機構)、谷川 朋範(気象庁気象研究所)、渡邊 達也(北見工業大学)、波多 俊太郎(国立極地研究所先端研究推進系地圏研究グループ)

17:15 〜 19:15

[ACC32-P06] 信越地方苗場山の積雪表面の水みち構造の物理および化学特性

*大原 江梨花1 (1.千葉大学)

キーワード:苗場山、積雪、水みち、雪氷藻類、融解水

融雪期の積雪表面には,斜面に沿って直線状にのびた模様のような構造が発達することがある.この構造は,積雪の融解水が積雪粒子の間隙を重力によって移動して特定の流路に集まることによって形成されると考えられており,水みちと呼ばれている.水みちには,雪氷藻類と呼ばれる寒冷環境で繁殖する光合成微生物が集中的に繁殖することがある.なぜ雪氷藻類は水みちで繁殖するのか,それは雪氷藻類の繁殖に適した条件があるためと考えられるが,水みちについての詳しい物理的及び化学的特性はまだ明らかになっていない.そこで,本研究では積雪上に形成された水みち構造の物理的,化学的条件を明らかにし,その雪氷藻類の繁殖との関係を明らかにすることを目的とした.積雪調査は,信越地方の苗場山山麓の樹林帯で2024年4月29日に行った.落葉樹林帯の積雪表面に観察された1本の直線上に伸びた水みちについて,水みちを横断するような測線をとり,測線沿いに表面と表面下の積雪の物理条件を測定し,さらに連続的に積雪採取してその化学的特性およびクロロフィルa濃度を分析した.
観測の結果,調査した水みちの積雪深は約60cmで,表面は凹状に低下して積雪下の地面には水みちに平行に水が流れていた.水みちの積雪の含水率は約60%で,周囲の積雪の含水率薬約10%よりも高かった.水みちの積雪の水の安定同位体比は周囲に比べ大きな違いはなかったが,水みちの表面積雪の電気伝導度とリン酸イオン濃度は周囲に比べ高いことがわかった.水みちの積雪の含水率が高く,溶存イオン濃度が高かったことは,周辺の積雪の融解水がによって積雪中の不溶性不純物が水みち上に集積し,溶存イオンを含みながら水みちに集中しためと考えられる供給していることを示している.積雪中のクロロフィルa濃度を測定した結果,水みちの表面では周囲の積雪よりも高く,水みち上では集中的に雪氷藻類が繁殖していることを示していた.以上の結果,水みちに沿った積雪の高い含水率と豊富な栄養塩濃度が,雪氷藻類の繁殖を促進している可能性が明らかになった.