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[ACC32-P07] 飛驒山脈北部に存在する氷河および多年性雪渓の氷厚,流動,質量収支の観測

キーワード:氷河、氷厚、流動、質量収支
飛驒山脈北部ではこれまでに9個の氷河が確認されている(福井ほか,2018,Arie et al., 2025など).これらの氷河は,世界の氷河分布域とは異なり,中緯度の標高2000m前後の温暖な環境で維持されており,その分布や質量収支特性の解明は,将来の気候変動に対して存続する氷河の環境条件を明らかにするうえで重要な課題である.Arie et al.(2022)は飛驒山脈の5個の氷河において,2015~2019年の年間質量収支,冬期の積雪深,夏期の融雪深を算出し,質量収支は主に冬期の積雪深に影響されていることを報告した.しかしながら,質量収支の永年変化をみるには最低30年の観測が必要であると考えられており(大村,2010),より長期間かつ複数の氷河で観測がおこなわれる必要がある.そこで本研究では,後立山連峰に存在する白馬沢雪渓において氷厚測定と氷体の流動測定をおこない,氷河の可能性を検討した.また,飛驒山脈の8個の多年性雪渓・氷河において1960年代~2024年の質量収支を算出した.
現地調査を実施した白馬沢雪渓は,飛驒山脈北部,後立山連峰に位置する白馬岳(2932m)の東側に位置する多年性雪渓である.質量収支観測を実施したのは,多年性雪渓の白馬沢雪渓に加え,後立山連峰に存在する杓子沢氷河,不帰沢氷河,唐松沢氷河,カクネ里氷河,立山連峰の小窓氷河,三ノ窓氷河,御前沢氷河である.これらの氷河・雪渓は,標高1700~2700mに分布しており,水蒸気を含んだ北西季節風による降雪に加え(朝日,2016;Kawase,2020),雪崩による多量の積雪によって維持されている.
地中レーダー探査による氷厚測定の結果から,2024年10月時点で最大氷厚約25m,長さ約400mの氷体が存在することが判明した.また,2022~2024年の2年間で,GNSS測量によって測定したステークの水平移動距離は約2mであった(基盤岩の不動点:3㎝).これまでに飛驒山脈で確認された氷河と同程度の氷厚および流動が確認されたため,白馬沢雪渓は国内で10例目となる定義上の氷河であると考えられる.
1970年代~2010年代半ばの積算質量収支はわずかに減少または増加していたのに対し,2016年の少雪年を契機に減少傾向に転じ,その後2024年までにすべての氷河・雪渓で大幅な質量の減少が確認された.これは,最近10年間で飛驒山脈の氷河が温暖化による影響を受け始めていることを示唆する.中部山岳域における夏と春の気温が上昇傾向にあることから(鈴木,2024),夏期の融雪量の増加や積雪期間の短縮が質量収支の減少に寄与している可能性がある.
現地調査を実施した白馬沢雪渓は,飛驒山脈北部,後立山連峰に位置する白馬岳(2932m)の東側に位置する多年性雪渓である.質量収支観測を実施したのは,多年性雪渓の白馬沢雪渓に加え,後立山連峰に存在する杓子沢氷河,不帰沢氷河,唐松沢氷河,カクネ里氷河,立山連峰の小窓氷河,三ノ窓氷河,御前沢氷河である.これらの氷河・雪渓は,標高1700~2700mに分布しており,水蒸気を含んだ北西季節風による降雪に加え(朝日,2016;Kawase,2020),雪崩による多量の積雪によって維持されている.
地中レーダー探査による氷厚測定の結果から,2024年10月時点で最大氷厚約25m,長さ約400mの氷体が存在することが判明した.また,2022~2024年の2年間で,GNSS測量によって測定したステークの水平移動距離は約2mであった(基盤岩の不動点:3㎝).これまでに飛驒山脈で確認された氷河と同程度の氷厚および流動が確認されたため,白馬沢雪渓は国内で10例目となる定義上の氷河であると考えられる.
1970年代~2010年代半ばの積算質量収支はわずかに減少または増加していたのに対し,2016年の少雪年を契機に減少傾向に転じ,その後2024年までにすべての氷河・雪渓で大幅な質量の減少が確認された.これは,最近10年間で飛驒山脈の氷河が温暖化による影響を受け始めていることを示唆する.中部山岳域における夏と春の気温が上昇傾向にあることから(鈴木,2024),夏期の融雪量の増加や積雪期間の短縮が質量収支の減少に寄与している可能性がある.