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[ACC33-09] グリーンランド南東ドームアイスコアの1908年のイベント層に含まれる不揮発性微粒子の同定
大規模な火災は温室効果ガスや微粒子の放出を通じて地域や地球の気候に影響を与える(Bowman et al., 2009)。森林火災などのバイオマス燃焼は化石燃料の燃焼の50%に相当するCO2を年間排出するため、陸から大気への炭素循環において重要な役割を果たしている(Bowman et al., 2009)。森林火災で生じた大気エアロゾル粒子の一部は極域氷床に沈着し、氷内に保存される。本研究では、グリーンランド南東ドームのアイスコアに含まれる不揮発性粒子のラマン分析から、森林火災由来をはじめとする過去のエアロゾル粒子の組成を同定した。
微粒子に対してクリーンな環境で、グリーンランド南東ドームアイスコアをセラミックナイフで削り、粉末状にした雪氷試料を直径10mmの丸いステンレス板の上に載せた。ステンレス板を円柱状の治具に入れ、-50℃の温度環境で窒素を通風させ、治具内の雪を昇華させた。昇華後に残渣としてステンレス板上に抽出された不揮発性粒子の形状と化学組成を顕微鏡ラマン分光器(HORIBA、XploRA LabSpec6)で分析した。本研究では100倍の対物レンズを使用し、2つの励起レーザー532nm、785nmを用いてレーザー出力1%または10%、露光時間5s、積算回数2回の条件でラマン分析した。
アイスコア全層(1800-2020年)で最もアンモニウムイオン濃度の高い1908年7月の試料には多くの有機物が含まれていると予想される。1908年の試料だけでなく、バックグラウンドとしてアンモニウムイオンピークのない1804年(産業革命前)、1970年(人為SOx, NOx最盛期)の試料に含まれる微粒子(3試料全体で382粒子)のラマンスペクトルを分析した。その結果、1908年の試料からのみデヒドロアビエチン酸を含む粒子を検出した(33/152粒子)。デヒドロアビエチン酸は、針葉樹が燃焼する際に生成される森林火災のトレーサーであることから、1908年7月に森林火災イベントが生じたことが示された。1908年6月30日にはロシアシベリアで生じたとされるツングースカ爆発が生じ、これまでグリーンランドアイスコアにこの爆発の痕跡が保存されているか議論されてきた(Zennaro et al., 2014; Legrand et al., 2016)が、本研究において、デヒドロアビエチン酸が1908年7月の層に含まれるという結果は、Legrandら(2016)が議論している北米の森林火災由来であることを示唆している。
引用文献
Bowman, D. M., Balch, J. K., Artaxo, P., Bond, W. J., Carlson, J. M., Cochrane, M. A., ... & Pyne, S. J. (2009). Fire in the Earth system. science, 324(5926), 481-484.
Zennaro, P., Kehrwald, N. A. T. A. L. I. E., McConnell, J. R., Schüpbach, S., Maselli, O. J., Marlon, J., ... & Barbante, C. (2014). Fire in ice: two millennia of boreal forest fire history from the Greenland NEEM ice core. Climate of the Past, 10(5), 1905-1924.
Legrand, M., McConnell, J., Fischer, H., Wolff, E. W., Preunkert, S., Arienzo, M., ... & Flannigan, M. (2016). Boreal fire records in Northern Hemisphere ice cores: a review. Climate of the Past, 12(10), 2033-2059.
微粒子に対してクリーンな環境で、グリーンランド南東ドームアイスコアをセラミックナイフで削り、粉末状にした雪氷試料を直径10mmの丸いステンレス板の上に載せた。ステンレス板を円柱状の治具に入れ、-50℃の温度環境で窒素を通風させ、治具内の雪を昇華させた。昇華後に残渣としてステンレス板上に抽出された不揮発性粒子の形状と化学組成を顕微鏡ラマン分光器(HORIBA、XploRA LabSpec6)で分析した。本研究では100倍の対物レンズを使用し、2つの励起レーザー532nm、785nmを用いてレーザー出力1%または10%、露光時間5s、積算回数2回の条件でラマン分析した。
アイスコア全層(1800-2020年)で最もアンモニウムイオン濃度の高い1908年7月の試料には多くの有機物が含まれていると予想される。1908年の試料だけでなく、バックグラウンドとしてアンモニウムイオンピークのない1804年(産業革命前)、1970年(人為SOx, NOx最盛期)の試料に含まれる微粒子(3試料全体で382粒子)のラマンスペクトルを分析した。その結果、1908年の試料からのみデヒドロアビエチン酸を含む粒子を検出した(33/152粒子)。デヒドロアビエチン酸は、針葉樹が燃焼する際に生成される森林火災のトレーサーであることから、1908年7月に森林火災イベントが生じたことが示された。1908年6月30日にはロシアシベリアで生じたとされるツングースカ爆発が生じ、これまでグリーンランドアイスコアにこの爆発の痕跡が保存されているか議論されてきた(Zennaro et al., 2014; Legrand et al., 2016)が、本研究において、デヒドロアビエチン酸が1908年7月の層に含まれるという結果は、Legrandら(2016)が議論している北米の森林火災由来であることを示唆している。
引用文献
Bowman, D. M., Balch, J. K., Artaxo, P., Bond, W. J., Carlson, J. M., Cochrane, M. A., ... & Pyne, S. J. (2009). Fire in the Earth system. science, 324(5926), 481-484.
Zennaro, P., Kehrwald, N. A. T. A. L. I. E., McConnell, J. R., Schüpbach, S., Maselli, O. J., Marlon, J., ... & Barbante, C. (2014). Fire in ice: two millennia of boreal forest fire history from the Greenland NEEM ice core. Climate of the Past, 10(5), 1905-1924.
Legrand, M., McConnell, J., Fischer, H., Wolff, E. W., Preunkert, S., Arienzo, M., ... & Flannigan, M. (2016). Boreal fire records in Northern Hemisphere ice cores: a review. Climate of the Past, 12(10), 2033-2059.