日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG36] 中緯度大気海洋相互作用

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:安藤 雄太(九州大学大学院理学研究院)、王 童(海洋研究開発機構)、田村 健太(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、桂 将太(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)


17:15 〜 19:15

[ACG36-P17] 高解像度モデリングに基づく粒子追跡法を用いた北太平洋中層循環の経路推定

*毛利 奈央1羽角 博康1川崎 高雄1 (1.東京大学大気海洋研究所)


キーワード:北太平洋中層循環、粒子追跡、渦解像大循環モデル

全球熱塩循環の終着点にあたる北太平洋には、炭素や栄養塩を豊富に含む深層水が存在し、豊かな生物生産によって大気からの二酸化炭素吸収量が世界で最も多い海域となっている。海面で吸収された二酸化炭素の深層への輸送量や、再び海面に戻り大気へ放出されるまでの時間は、地球温暖化などの気候変動に大きな影響を与える。そのため北太平洋の深層循環の全体像とその変動を理解することは、将来の生態系や気候システムへの影響を考える上で不可欠であるが、北太平洋深層循環の物理的メカニズムや具体的な経路には未解明な点が多く残されている。北太平洋には深層循環とは別に、海面冷却によって形成される中層水を輸送する中層循環が存在し、千島列島付近の強い鉛直混合によって中層循環から深層循環に熱が運ばれ、深層循環が駆動されているという指摘がある (Kawasaki and Hasumi, 2010)が、中層循環の構造・流量・時間スケール、および深層循環との相互作用については不明瞭な点が多く残されている。北太平洋中層水の輸送には渦が重要な役割を果たすことが示されており、中層循環の実態をモデリングで明らかにするためには渦運動を解像できる必要がある。本研究では、渦解像海洋大循環モデルを用いて、北太平洋中層循環の三次元構造を明らかにすることを目的とする。モデルで得られた高時空間解像度の流速場に対して、仮想の粒子を流す粒子追跡手法を適用し、北太平洋中層循環の経路や流量、時間スケールを定量的に解析する。

使用した海洋大循環モデルは、水平解像度を全球 1/4 度、ただし北太平洋部分は1/12 度としたネストモデルである。水温・塩分の観測気候値 (WOA18)を初期値とし、大気再解析データ (JRA55-do)の1990年のデータを海面境界条件に繰り返し適用した。鉛直混合の強度はこれまでに最も高い観測との整合性が確認されている値(Kawasaki et al., 2021)を用いた。準定常状態に至るまで時間発展を計算した後、水温・塩分の分布等について観測との整合性を検証し、得られた流速や拡散係数を粒子追跡モデルに適用した。密度と緯度で定義した北太平洋の中層領域に仮想粒子を大量かつ等間隔に配置し、20年間追跡後、中層水の滞在時間や中層を出た後の経路を解析した。

中層に初期配置した粒子のうち、20年間で8割が中層を出ており、そのうち約6割は再び中層に戻ってくることがわかった。1~2年の短い時間スケールで中層に戻る粒子と、長期間中層に戻らない粒子の経路の違いについては今後解析予定である。また、中層を出る場所を解析した結果、中層よりも軽い密度層へ移動する粒子と重い密度層へ沈む粒子の割合がどちらも4割程度で最も多いことがわかった。発表当日は、図示した結果を含めて、北太平洋中層循環の代表的な経路や流量、循環の時間スケールについて詳しく報告する。