日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG41] 衛星による地球環境観測

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:沖 理子(宇宙航空研究開発機構)、本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、松永 恒雄(国立環境研究所地球環境研究センター/衛星観測センター)、高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

17:15 〜 19:15

[ACG41-P05] 機械学習を用いたGSMaP降水補完アルゴリズムの初期検証

*広瀬 民志1、由良 建人1山本 宗尚2久保田 拓志2牛尾 知雄1 (1.大阪大学 大学院工学研究科、2.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:全球降水推定、機械学習、衛星観測

全球降水衛星マップ(GSMaP)は静止気象衛星(GEO)の高頻度IR雲観測を用いて,複数の極軌道衛星に搭載されたマイクロ波放射計(PMW)による降水観測網の隙間を補完する.具体的にはGEOの連続観測から雲の移動ベクトルを計算し,前後時間にPMWが観測した降水雲の移動先を予測する.さらに移動中の降水雲が発達・衰退することで生じる降水強度の変化を考慮するため,移動後の雲頂温度に対応するよう降水強度を補正している.しかしながら雲頂温度に基づく降水強度の補正法は,地形性降水や強い降水を伴わない巻雲などに対して誤差が大きくなるという課題が存在する.Nguyen et al. (2020)は機械学習を用いて降水雲のタイプを事前に分類し,各降水雲のタイプごとに輝度温度と降水強度のフィッティング関数を個別に作成することで,IR輝度温度ベースの降水推定精度が大きく向上すると報告している.本研究ではGSMaPの降水補間アルゴリズムにこの機械学習を用いた降水タイプ分類手法を導入することで,GSMaPの降水推定精度を飛躍的に向上させることを試みた.
先行論文の手法はHoug et al. (2004)で開発されたPERSIANN-Cloud Classification System (CCS) に基づいている.初めにIR輝度温度を閾値として雲パッチを検出し,各雲パッチ内部のIR輝度温度の空間分布パラメータを特徴量として抽出する.各特徴量をベクトル化して自己組織化マップを作成することで,類似した特徴を持つ降水雲を可視化することが可能になる.本研究ではひまわり8号のIRマルチバンド観測を用いて日本域の降水雲パッチに対して自己組織化マップを作製した.その結果輝度温度極小値付近の温度勾配が地形性降水の分類に有効であるという先行論文と整合的な結果が得られた.また先行論文では単一のIRバンド情報のみが用いられていたが,split-window観測による雲光学的厚さの指標や,水蒸気バンドの輝度温度差の指標が地形性降水の分類に有効であることがわかった.分類した各降水タイプごとに輝度温度と降水強度のフィッティング関数を作成し直した結果,降水強度の推定誤差が大幅に減少するという結果が得られた.本州南岸の降水事例に対してこの降水タイプごとのフィッティングを適用した結果,山岳斜面部で発生した地形性降水の過小評価が大きく減少するという結果が得られた.
本研究は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の助成を受け,共同研究「高分解能GSMaPアルゴリズムの研究開発」として行われているものである.