日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG46] 陸域生態系の物質循環

2025年5月27日(火) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:寺本 宗正(鳥取大学乾燥地研究センター)、加藤 知道(北海道大学農学研究院)、市井 和仁(千葉大学)、伊勢 武史(京都大学フィールド科学教育研究センター)、座長:伊勢 武史(京都大学フィールド科学教育研究センター)

11:45 〜 12:00

[ACG46-10] 異なる樹冠形態を持つ針葉樹と広葉樹の競争と共存の解明

*佐藤 永1,2、隅田 明洋3 (1.海洋研究開発機構 地球環境部門、2.東京大学大学院 農学生命科学研究科、3.京都府立大学 生命環境科学研究科)

キーワード:樹冠形態、針葉樹と広葉樹、光環境分割、動的植生モデル

針葉樹は一般的に狭くて深い樹冠を持つのに対し、広葉樹は球状の樹冠を持つ。その理由として、針葉樹が多く分布する高緯度帯では太陽角度が浅く、広葉樹が多く分布する低緯度帯では太陽角度が深いことから、それぞれの樹冠形態が太陽光の取り込みを最大化するよう進化したと指摘されている。一方、針葉樹と広葉樹が混在する針広混交林では、樹冠構造の違いが光資源のニッチ分割をもたらし、それらの共存を可能にしていると考えられている。そのため、樹冠形態が多様な森林では、森林全体の植物生産性が高まるとする報告も存在する。

しかし、これまでの研究では比較的単純な構造を持つモデルが用いられ、樹冠形態の進化や共存条件に関するメカニズムが十分に考慮されていなかった。本研究では、空間的明示型個体ベース動的全球植生モデル(SEIB-DGVM)を用い、樹冠形態の違いが混交林の競争ダイナミクスや生態系生産性に与える影響を解析した。このモデルには、従来のモデルが考慮してきた要素に加えて、以下の新要素が組み込まれている:
1. 樹冠展開時の隣接個体との空間を巡る競争
2. 自己被陰や周辺木からの被陰による樹冠下部の枯れ上がり
3. 枯れ上がりによる樹冠基部断面積の縮小、および最大葉面積・最大樹冠幅の減少
本研究では、異なる樹冠形態を持つ針葉樹型と広葉樹型の稚樹を仮想林に植栽し、100年間の競争シミュレーションを実施した。その結果、針葉樹型と広葉樹型の樹冠の相対的有利性が、木本密度、太陽角度、太陽光構成(直達光・散乱光)に応じて変化することが示された。一方で、異なる樹冠形態の樹種の共存を促進する頻度依存選択(負の頻度依存選択)は確認されなかった。また、樹冠形態の違う樹種が混在することによる植物生産性の向上も見られなかった。

本研究は、針葉樹と広葉樹が共存する森林の形成要因や生産性向上のメカニズムに関する理解を深めるものであり、自然林および人工林の管理戦略への応用が期待される。