11:15 〜 11:30
[ACG47-09] 弱圧縮二相モデルによる砕波を伴う水面波の数値シミュレーション

キーワード:風波、気液二相流、数値シミュレーション
我々が見る海にはつねに波が立っている。この波は風波と呼ばれ、風から運動量・エネルギーを受け取って生じ、発達し、そして砕波して海流に運動量・エネルギーを渡す。この風波は大気海洋境界そのものであるため、大気と海洋は風波を通じて運動量や熱・物質を交換する。したがって、風波を通じた相互作用の理解は、大気及び海洋の現象を理解・予測するために不可欠である。
大気海洋間の交換過程において、運動量の交換は海面風応力τで表現される。このτは、大気海洋結合モデルでしばしば τ=ρ CD U102 (CD :海面抵抗係数、U10 :海上10m風速)と表される。このCD は波況によるが、実用的には風速に依存したパラメタリゼーションが多くなされている。その多くは風速とともにCD が増加する傾向にあるが、最近の研究では、強風時に風速に対して飽和する実験結果(Takagaki et al. 2012)や強風時に減少する観測結果(Shimura et al. 2024)が得られており、強風時の海面抵抗係数の知見が統一されていない。
また、強風時には砕波による効果も無視はできない。Takagaki et al. (2012) では、強風下で砕波することで風波の発達が抑制され、その結果として海面を平坦にすることでCDを飽和させるという解釈がなされている。また、Yang et al. (2018) は、順風の下で砕波の数値計算を行い、巻き波型砕波が気流を加速させる傾向にあることを示した。したがって、砕波は大気海洋間の運動量輸送を決定する重要な要素の一つである。
砕波時の運動量輸送を観測や実験から調査することは、計測技術の制約のため大きな困難が伴う。そのため、砕波を表現可能な数値シミュレーションによる再現と定量的な調査が期待される。しかし、現状では計算資源の問題により、砕波が気流に与える影響を精密に調査するには不十分である。砕波計算において特にボトルネックとなるのは、非圧縮条件から現れる、圧力の楕円型方程式を解く部分である。この楕円型方程式は密度比が大きい気液二相流では非常に収束し難く、この部分の計算に多くの時間が費やされる。この問題の克服のために、近年では弱圧縮流体計算 (Matsushita & Aoki 2021; etc.) という手法が提案されている。これは圧縮性を導入しつつも音速を低減することで時間刻み幅を確保する手法で、完全に陽的かつ高速な計算を可能にしている。この手法を用いることで、砕波計算における計算資源の問題を解決できるかもしれない。
以上を踏まえて、本研究では弱圧縮モデルを構築して、砕波の数値計算を実施した。界面の表現手法としてVOF法とフェイズフィールド法を採用して比較した。巻き波と崩れ波の計算を行ったところ、巻き波型砕波においては気流に大きく影響を及ぼす一方で、崩れ波型砕波では気流への影響が小さいという先行研究に整合的な結果が得られた。界面捕獲法としてVOF法とフェイズフィールド法を比較したところ、どちらも砕波をよく再現できていた。VOF 法では気相に微小な水滴が浮遊していたが、この浮遊は非物理的である可能性もあり、扱いに注意が必要である。また、フェイズフィールド法では気液界面を数グリッドの幅をもつ拡散型界面で表現することによる運動量輸送を過度に評価する傾向があった。また、音速の値を変えた数値実験を行なって弱圧縮性近似の妥当性も評価した。これらの結果の詳細は講演時に述べる予定である。
大気海洋間の交換過程において、運動量の交換は海面風応力τで表現される。このτは、大気海洋結合モデルでしばしば τ=ρ CD U102 (CD :海面抵抗係数、U10 :海上10m風速)と表される。このCD は波況によるが、実用的には風速に依存したパラメタリゼーションが多くなされている。その多くは風速とともにCD が増加する傾向にあるが、最近の研究では、強風時に風速に対して飽和する実験結果(Takagaki et al. 2012)や強風時に減少する観測結果(Shimura et al. 2024)が得られており、強風時の海面抵抗係数の知見が統一されていない。
また、強風時には砕波による効果も無視はできない。Takagaki et al. (2012) では、強風下で砕波することで風波の発達が抑制され、その結果として海面を平坦にすることでCDを飽和させるという解釈がなされている。また、Yang et al. (2018) は、順風の下で砕波の数値計算を行い、巻き波型砕波が気流を加速させる傾向にあることを示した。したがって、砕波は大気海洋間の運動量輸送を決定する重要な要素の一つである。
砕波時の運動量輸送を観測や実験から調査することは、計測技術の制約のため大きな困難が伴う。そのため、砕波を表現可能な数値シミュレーションによる再現と定量的な調査が期待される。しかし、現状では計算資源の問題により、砕波が気流に与える影響を精密に調査するには不十分である。砕波計算において特にボトルネックとなるのは、非圧縮条件から現れる、圧力の楕円型方程式を解く部分である。この楕円型方程式は密度比が大きい気液二相流では非常に収束し難く、この部分の計算に多くの時間が費やされる。この問題の克服のために、近年では弱圧縮流体計算 (Matsushita & Aoki 2021; etc.) という手法が提案されている。これは圧縮性を導入しつつも音速を低減することで時間刻み幅を確保する手法で、完全に陽的かつ高速な計算を可能にしている。この手法を用いることで、砕波計算における計算資源の問題を解決できるかもしれない。
以上を踏まえて、本研究では弱圧縮モデルを構築して、砕波の数値計算を実施した。界面の表現手法としてVOF法とフェイズフィールド法を採用して比較した。巻き波と崩れ波の計算を行ったところ、巻き波型砕波においては気流に大きく影響を及ぼす一方で、崩れ波型砕波では気流への影響が小さいという先行研究に整合的な結果が得られた。界面捕獲法としてVOF法とフェイズフィールド法を比較したところ、どちらも砕波をよく再現できていた。VOF 法では気相に微小な水滴が浮遊していたが、この浮遊は非物理的である可能性もあり、扱いに注意が必要である。また、フェイズフィールド法では気液界面を数グリッドの幅をもつ拡散型界面で表現することによる運動量輸送を過度に評価する傾向があった。また、音速の値を変えた数値実験を行なって弱圧縮性近似の妥当性も評価した。これらの結果の詳細は講演時に述べる予定である。