日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG48] 陸域から沿岸域における水・土砂動態

2025年5月27日(火) 09:00 〜 10:30 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、浅野 友子(東京大学大学院農学生命科学研究科)、有働 恵子(東北大学大学院工学研究科)、山崎 大(東京大学生産技術研究所)、座長:木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、山崎 大(東京大学生産技術研究所)

09:25 〜 09:45

[ACG48-02] 電動リールを用いた水温の鉛直分布および河川流速の横断分布観測

★招待講演

*坪野 考樹1津旨 大輔2芳村 毅3三角 和弘1、新井田 靖朗1岡田 輝久1 (1.一般財団法人 電力中央研究所、2.筑波大学、3.北海道大学)

キーワード:沿岸環境モニタリング、電動ウィンチ搭載UAV、電動リール、現地観測

汽水域を含む沿岸域において水温等を観測するには,船舶を用いた定点観測や定点に設置した計器による観測手法が用いられてきた.近年では,UAVを用いた観測の検討がなされており,画像を用いた海表面の面的な観測(波浪や濁り)が実施されている.我々は,船舶が航行できない海域(浅い海や湖沼・港の凍結により船舶が出せない場合等)における観測を目的に,UAVに搭載した電動ウィンチで水温塩分計および水圧計を降下・上昇させる定点の鉛直観測を検討している.一方で,この計測では,センサーの応答速度の影響により,昇降で水温等の鉛直分布が異なる結果が得られ,センサーの移動速度の検討が必要となっている.また,水質の鉛直計測や流速計を搭載した船による河川流速の横断観測等では,紐等で計器を牽引する必要があるが,一定時間間隔で計測・記録するには,牽引速度をなるべく一定かつ低速度で実施することが望ましい.近年釣り用の電動リールが安価となっており,高負荷に耐えられるラインも登場している.電動リールは,防水で様々な巻き上げ速度で一定に維持させることが可能であることから,前述した牽引を伴う観測をより理想的に実施することが可能となり,センサーの応答に対する移動速度についての検討が容易である.このことから,電動リールの海域観測への利用やウィンチ搭載型UAV用の水温・塩分計の応答速度および移動速度の把握を目的に,実海域において電動リールを用いた水温の鉛直観測・河川流速の断面観測,および室内実験を実施した.
 電動リールを用いた水温観測および河川流速のADCPによる断面観測は尾駮沼および尾駮川で実施した. CTDを用いた水温の観測は沼の最深部において,ADCP搭載のリバーボートを用いた河川断面流速観測は尾駮川河口付近において実施した.CTD観測では,UAVのウィンチ下部の高さやペイロードの制約を受けづらい計測器であるSonTek CastAway-CTD (以降CA-CTDと記載)について検討した.電動リールの表示するモードを1~7まで変化させて巻き上げ速度を変化させて,底層から上昇する経路の0.2秒毎で計測された水温(塩分は電導度と水温の関数であるため水温を検討した)および水深を用いて,水温の鉛直分布の再現性について検討した.そして,CA-CTDとRINKO-Profiler(以降RINKOと記載)を温水と冷水を充填したバケツに交互に馴致・移動させることで,両水温センサーの応答速度を推定した.ADCPによる断面観測では,尾駮川河口の両端に設置した杭に細紐を結び付けてガイドロープ(川幅は約40m)とし,そのガイドロープにADCP搭載のリバーボートを紐で繋いだ滑車を取り付けて,右岸から手動で,左岸から電動リールで滑車を牽引して実施した.電動リールの速度を変化させて流速,船速,およびロール・ピッチを計測し,それらの標準偏差を計算することでADCPの揺動について検討した.
電動リールは,ある速度以下では滑らかに巻き上げらず,その影響で水温値が振動したため,その速度を把握する必要がある.本研究で用いた電動リールでは10cm s-1以上の巻上げ速度が必要であった.電動リールの巻上げ速度を変更してCA-CTDで得られた水温の鉛直分布は,高速の場合では,水温センサーが実水温に追随できないために低速の場合の鉛直分布に対して上向きにずれが生じる.これら鉛直分布のラグ相関から,巻上げ速度20cm s-1未満の水温の鉛直分布はおおむね一致(ラグが0cm)した.CA-CTDとRINKOの応答速度を意味するセンサーと現場との初期温度差の半減期は,実験から約0.4,0.1秒と推定され,水温の定点観測を実施する場合では,現場水温とセンサー水温の初期の差を1/1000未満とするためには5秒程度計測器をその地点で馴致させる必要がある.リバーボートを電動リール(mode1を除く)で牽引することにより,手動よりも船速・傾きの揺動を小さく(精度向上に寄与)かつ低速(高解像度化に寄与)で流速の鉛直分布を観測することが可能となった.
 これらの観測と併せて,断面流速観測において,モーションカメラ用のケーブルをゴンドラのように自動で往復することが可能なWiral Liteを用いてリバーボート搭載のADCPを駆動させている.また,水圧計で沼と河口で長期観測するとともに,浮きにGPS(+ ichimill)を用いた水位観測で補正して,水圧から沼と河口での水位の計測を実施している.発表の際には,その結果も含めて報告する予定である.