日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG48] 陸域から沿岸域における水・土砂動態

2025年5月27日(火) 09:00 〜 10:30 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、浅野 友子(東京大学大学院農学生命科学研究科)、有働 恵子(東北大学大学院工学研究科)、山崎 大(東京大学生産技術研究所)、座長:木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、山崎 大(東京大学生産技術研究所)

09:45 〜 10:00

[ACG48-03] 残存ルミネッセンス信号による沿岸漂砂の定量化-新潟県寺泊海岸での検討-

*本間 海那1,2田村 亨2,3白井 正明1 (1.東京都立大学大学院都市環境科学研究科、2.産業技術総合研究所地質調査総合センター、3.東京大学大学院新領域創成科学研究科)


キーワード:ルミネッセンス、長石粒子、海岸砂、堆積物運搬、ブリーチ実験

沿岸漂砂を検出し移動時間を定量化することは,海岸環境の実態に即した保全を行う上で重要である.本研究では,新潟県寺泊海岸周辺を対象地域として,長石粒子の残存ルミネッセンス信号による海岸砂の沿岸方向への移動時間の定量的検出を試みた.寺泊海岸は元来岩石性の海岸であったが,1922年の大河津分水の竣工以降,信濃川から大量の土砂が供給され,砂浜が形成された.一部の海岸砂は岬を迂回しながらさらに北方へ移動し,ポケットビーチを形成した.海岸砂を7地点の波打ち際で採取し,ふるい分けと重液分離により180-250 µmの長石粒子を抽出し,MET-pIRIR法によりpIRIR150, 225, 290の残存線量を測定した.本測定法では,同一粒子から安定性の異なる複数信号を測定し,結果を比較することが可能である.定量的検出に先立って,残存線量の沿岸方向への変化から海岸砂の移動方向を推定する定性的検出を行なった.各信号はほぼ同様の変化傾向を示し,最も安定的なpIRIR290の残存線量は,大河津分水河口北岸において72±22 Gyを示し,北岸から北方9 km地点では32±12 Gy,15 km地点では18±4 Gyまで減少し,少なくとも河口から北方15 km地点までの大河津分水からの海岸砂の供給が示唆された.一方で,23 km地点では23±4 Gyと増加に転じ,少なくともこの地点よりも北方の範囲は異なる漂砂系であることが示唆された.そこで,大河津分水から海岸砂の供給を受けていると考えられる範囲において,ブリーチ実験と地形モデルによる海岸砂移動時間の定量的検出を試みた.大河津分水河口北岸の試料に対して,人工太陽を用いて一定時間の光の照射を行なった後,残存線量をMET-pIRIR法で測定し,露光時間と残存線量の減少の関係式を求めた.この式に各地点での残存線量の実測値を代入することで,河口北岸から各地点到達までのブリーチ実験での照射時間に相当する露光時間を算出した.そして,人工太陽の照射強度からブリーチ実験における仮想的な日射量に変換し,これを対象地域である寺泊で観測された年平均の日射量で除すことによって,対象地域における露光時間に換算した.また,砂粒子は侵食・堆積を繰り返しながら海岸域を移動し,常に光を浴びるわけではないため,露光時間を海岸域における砂粒子の露光確率で除すことで移動時間(滞留時間)を算出した. 露光確率は海岸の地形モデルに依存し,本研究においては砂の混合域の厚さを最小で50 cm,最大で150 cmと仮定し,計算を行なった.異なる安定性を持つ3つの信号において,大河津分水北岸から北方15 km地点までの海岸砂の沿岸方向への移動時間を計算した結果,pIRIR150で最短13年/最長38年,pIRIR225で最短12年/最長35年,pIRIR290で最短10年/最長29年という整合的な結果を得ることができた.よって,沿岸漂砂の供給源である大河津分水河口付近から,沿岸方向への移動限界地点付近までは,概ね数十年スケールの移動が示唆された.