日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG48] 陸域から沿岸域における水・土砂動態

2025年5月27日(火) 10:45 〜 12:15 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、浅野 友子(東京大学大学院農学生命科学研究科)、有働 恵子(東北大学大学院工学研究科)、山崎 大(東京大学生産技術研究所)、座長:浅野 友子(東京大学大学院農学生命科学研究科)、有働 恵子(東北大学大学院工学研究科)

11:25 〜 11:40

[ACG48-08] 白川全域を対象とした、海洋・河川・流出統合レイヤーモデル JORROによる河川流量解析と水文モデルとの比較

*佐藤 啓明1山敷 庸亮1木田 新一郎2 (1.京都大学大学院総合生存学館、2.九州大学・応用力学研究所)

キーワード:水文モデル、海洋モデル、白川

汽水域・沿岸域の生態系評価には、河川と海洋における水の動態解析が不可欠である。従来の解析では河川モデルと海洋モデルを組み合わせる手法が用いられていたが、境界部の流れの把握が十分ではなかった。本研究で用いる海洋・河川・流出統合レイヤーモデル「JORRO」は、陸域と海域の流れを一体的に解析できる点が特徴である。しかし、陸域における解析精度の検証が十分ではなく、土地利用や地下水の影響も考慮されていない。そこで、本発表ではJORROの流量解析結果を水文モデルCDRMV3.3.1や観測データと比較し、その特性を評価する。
JORROは、海洋層厚モデルを基に淡水と海水を異なる層として扱い、陸域では一層、海域では二層のモデルを採用している。一方、CDRMV3.3.1は土壌を三層に分け、中間流を考慮できる水文モデルであり、キャリブレーションを通じて流量の再現性を向上させている。ただし、パラメータの調整による最適化のため、物理的な理解が難しく、異なる環境への適用が制約される。一方、JORROはシンプルな構造のため、他の領域への応用や論理的な評価が容易である。

本発表では、平坦地・急斜面・蛇行など多様な物理過程を含み、各プロセスの重要性を検証するのに適している熊本県阿蘇白川流域を対象に、2015年9月の豪雨時の流出過程を検証した。JORROの解析には30m解像度の数値標高データを用いたが、河川網データとの統合時に不自然な貯水地が発生し、流れが意図しない方向へ分岐する問題が見られた。これを解消するため、地形データを調整し、白川上流から下流まで一貫した水の流れを確保している。

流量解析は上流の立野、中流の陣内、下流の代継橋の3地点で実施した。立野・陣内では観測ピークとのずれは数時間程度だったが、代継橋では1日程度の差異が生じており、下流に行くほど観測値との差異が大きくなることが確認された。また、流量の絶対値に関しても、立野では最初のピークが過小評価され、陣内では2つ目のピークが過大評価される傾向が見られた。観測データでは下流の陣内の流量が立野より少ないが、JORROでは逆転していた。これらの要因として、JORROでは地下水の影響を考慮せず、調整した地形により水の流れが固定されている点が挙げられる。他にも、地質や土地利用の影響が考えられる。再現性向上には、地下水を考慮するなど、モデルの改良が必要とされる。

CDRMV3.3.1の解析では、ピーク流量に差異が見られるものの、陣内の流量が立野より少ないといった点や、代継橋の流量変化の再現性がJORROよりも高かった。これは、CDRMV3.3.1がキャリブレーションを通じて現実の流量に合わせているからである。しかし、各観測点ごとにパラメータを調整しており、流域全体で精度の良い解析が実現しているわけではない。一方、JORROは流路ごとにフルード数を変化させるなど物理的な特性を考慮しており、地下水の影響を組み込むことで、キャリブレーションなしで現実に近い流れを再現できる可能性がある。今後の改良により、より汎用性の高い水理モデルとしての発展が期待される。