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[ACG48-P03] 攪拌水槽を用いたstickinessパラメータ推定手法に関する理論的考察と分布の多分散性を考慮した新規手法の提案

キーワード:懸濁粒子、凝集、多分散、stickinessパラメータ、攪拌水槽
懸濁粒子の凝集現象(coagulation, flocculation, aggregation)は,河口域での凝集性土砂や海洋表層の植物プランクトン,火山灰の降下など,地球物理学の様々な分野で普遍的にみられる現象の1つである.この過程を数値的にモデル化する上で“stickiness”が1つの重要なパラメータであり,これは分野によってflocculation efficiencyもしくはstability factorなどと呼ばれる.stickinessパラメータは粒子の組成や粒子間力と密接に関連した量であるが,実際の環境においてそのような詳細な情報は事前に得ることはしばしば困難であるため,数値実験においてはstickinessパラメータを簡単に定数として仮定することが適している場合もある.この定数stickinessは現場観測や水槽実験を通じて推定される.Edzwald et al. (1974) は攪拌水槽実験から定数stickinessを推定する簡便な手法を提案し,この手法はその後のいくつかの研究により発達してきた.この手法はSmoluchowskiの凝集理論に基づき閉鎖水槽内の粒子数減少率とstickinessパラメータとを関連づける.しかしながらこの手法は使用する粒子の粒径分布(PSD)形状に大きな制約を課すため,その適用範囲には制限があると考えられる.そこで本研究では,PSD形状がstickinessの推定値へどのような影響を及ぼすかを明らかにし,その効果を取り込んだ新たな推定手法について検討した.まず初めに凝集理論に基づいた考察から,従来手法は単分散粒子についてのみ成立し,多分散粒子においては“見かけの”stickinessを得ることしかできないことを示した.この値を真のstickinessへ変換するためには補正係数が必要で,これはPSD形状から得られる粒径のモーメントから陽に計算できるものである.続いて,この理論的考察を踏まえて既存手法と同じく簡便な水槽実験を使用しつつ分布の多分散性を取り込んだ新たな推定手法について検討した.本研究においてはLagrangian cloud model(Riechelmann et al., 2012; Nishino and Yoshikawa, 2024)を用いた数値実験によって従来手法と等価な水槽実験を再現した.また現実的な多分散PSDのモデルとして,先行研究(Edzwald et al., 1974; Ou et al., 2016)の水槽実験で使用されたPSDを再構成して与えた.検討の結果,実験初期のPSD形状から得られる初期補正係数だけでは精度の高いstickiness推定には不十分で,補正係数の(すなわちPSD形状の)時間変化も考慮する必要があることが分かった.したがって我々の手法は従来手法に加えて(例えばLISSTを用いた)PSD形状の測定を要するが,現実的な多分散性分布においても非常に高い精度(相対誤差 < 1%)で真のstickinessを推定できることが示された.