14:30 〜 14:45
[ACG50-03] 秋季の日本周辺における海洋からの酸素放出
キーワード:APO、大気ー海洋間酸素フラックス、BGCフロート
1. イントロダクション
Atmospheric Potential Oxygen (APO) はAPO = [O2] + 1.1 [CO2] で計算されるトレーサーであり、1.1は光合成や呼吸等、陸上生物圏における -O2 : C 変動比である。したがって、APOは陸上生物による活動の影響を受けず、化石燃料の燃焼や大気海洋間のO2やCO2の交換で変動する。化石燃料消費量の季節変動は比較的小さいため、APOの季節変動は大気海洋間のO2とCO2の交換、中でもガス交換速度の大きいO2のフラックスを反映していると考えられる。
秋季は海面水温の低下に伴って気体の溶解度が増加する。そのため、通常は大気に対しての飽和度が100%前後である酸素は溶解度の増加で不飽和となり、海洋は大気から酸素を吸収するはずである。しかしながら、Tohjima et al., [2024]は、船上のAPO観測値と気候値的酸素フラックスを使用したモデル計算を比較し、秋季の北西太平洋でAPO観測値がモデル計算より大きくなることから気候値では再現されていない海洋から大気への酸素放出を示唆した。この研究では秋季の表面の酸素過飽和の要因を、20–40°Nでは亜表層酸素極大 (Subsurface Oxygen Maximum; SOM) が混合層に取り込まれること、40–60°Nでは秋季ブルーミングによるものとしている。
Kosugi et al., [under review]はBGCフロートの観測結果から北西太平洋の中緯度域では秋季に広範囲で海面の酸素が過飽和であることを示した。さらに、フロートの鉛直プロファイルからSOMが混合層に取り込まれることで表面の酸素過飽和が維持され、混合層がSOMよりも深くなると過飽和状態は解消される観測例を示した。これはTohjima et al., [2024]で示された20–40°Nの酸素過飽和の形成過程と一致する。
このように、秋季の海面における酸素過飽和が大気と海洋の双方から徐々に明らかになっているが、まだ不明な点も多い。本研究では、従来北西太平洋のみで評価されていた秋季の酸素過飽和について、新たに日本海を対象海域に加え、緯度別にその時期と規模を評価し、より詳細な大気海洋間酸素フラックスとAPOの理解に貢献することを目的とする。
2. データ
気象庁の海洋気象観測船が取得した表面(水深8–12 m)のデータを使用した。溶存酸素濃度は2010年3月以前はボトル採水の値、それ以降はRINKOセンサーで取得した値を使用した。飽和酸素濃度の計算にはGarcia and Gordon [1992]の式を使用した。混合層は10 dbarからの密度差が0.03 kg m-3以内の層とした。
3. 結果
9月と10月は北緯25度から43度にかけてほぼ全ての海域で表面の酸素は過飽和となっていた。特に、北緯40度付近では110%近くの強い過飽和がみられた。11月に入ると北緯35–40度にかけて不飽和の領域が広がりはじめ、特にこの傾向はデータ数の多い日本海では顕著であった(Figure)。12月には過飽和の領域は北緯30度より南の海域に残るのみとなり、大半の海域が酸素不飽和となった。
4. 参考文献
Garcia and Gordon, (1992) Oxygen solubility in seawater: Better fitting equations
Kosugi et al., Air-sea oxygen fluxes in mid-latitude western North Pacific quantified by the array of biogeochemical Argo floats, under review
Tohjima et al., (2024) Observed APO Seasonal Cycle in the Pacific: Estimation of Autumn O2 Oceanic Emissions
5. 図キャプション
(a)10月と(b)11月の日本周辺海域の表面酸素飽和度。気象庁データを緯度経度1度毎に平均したもの。各グリッド周囲の線はグリッド内のデータ数を表す。
Atmospheric Potential Oxygen (APO) はAPO = [O2] + 1.1 [CO2] で計算されるトレーサーであり、1.1は光合成や呼吸等、陸上生物圏における -O2 : C 変動比である。したがって、APOは陸上生物による活動の影響を受けず、化石燃料の燃焼や大気海洋間のO2やCO2の交換で変動する。化石燃料消費量の季節変動は比較的小さいため、APOの季節変動は大気海洋間のO2とCO2の交換、中でもガス交換速度の大きいO2のフラックスを反映していると考えられる。
秋季は海面水温の低下に伴って気体の溶解度が増加する。そのため、通常は大気に対しての飽和度が100%前後である酸素は溶解度の増加で不飽和となり、海洋は大気から酸素を吸収するはずである。しかしながら、Tohjima et al., [2024]は、船上のAPO観測値と気候値的酸素フラックスを使用したモデル計算を比較し、秋季の北西太平洋でAPO観測値がモデル計算より大きくなることから気候値では再現されていない海洋から大気への酸素放出を示唆した。この研究では秋季の表面の酸素過飽和の要因を、20–40°Nでは亜表層酸素極大 (Subsurface Oxygen Maximum; SOM) が混合層に取り込まれること、40–60°Nでは秋季ブルーミングによるものとしている。
Kosugi et al., [under review]はBGCフロートの観測結果から北西太平洋の中緯度域では秋季に広範囲で海面の酸素が過飽和であることを示した。さらに、フロートの鉛直プロファイルからSOMが混合層に取り込まれることで表面の酸素過飽和が維持され、混合層がSOMよりも深くなると過飽和状態は解消される観測例を示した。これはTohjima et al., [2024]で示された20–40°Nの酸素過飽和の形成過程と一致する。
このように、秋季の海面における酸素過飽和が大気と海洋の双方から徐々に明らかになっているが、まだ不明な点も多い。本研究では、従来北西太平洋のみで評価されていた秋季の酸素過飽和について、新たに日本海を対象海域に加え、緯度別にその時期と規模を評価し、より詳細な大気海洋間酸素フラックスとAPOの理解に貢献することを目的とする。
2. データ
気象庁の海洋気象観測船が取得した表面(水深8–12 m)のデータを使用した。溶存酸素濃度は2010年3月以前はボトル採水の値、それ以降はRINKOセンサーで取得した値を使用した。飽和酸素濃度の計算にはGarcia and Gordon [1992]の式を使用した。混合層は10 dbarからの密度差が0.03 kg m-3以内の層とした。
3. 結果
9月と10月は北緯25度から43度にかけてほぼ全ての海域で表面の酸素は過飽和となっていた。特に、北緯40度付近では110%近くの強い過飽和がみられた。11月に入ると北緯35–40度にかけて不飽和の領域が広がりはじめ、特にこの傾向はデータ数の多い日本海では顕著であった(Figure)。12月には過飽和の領域は北緯30度より南の海域に残るのみとなり、大半の海域が酸素不飽和となった。
4. 参考文献
Garcia and Gordon, (1992) Oxygen solubility in seawater: Better fitting equations
Kosugi et al., Air-sea oxygen fluxes in mid-latitude western North Pacific quantified by the array of biogeochemical Argo floats, under review
Tohjima et al., (2024) Observed APO Seasonal Cycle in the Pacific: Estimation of Autumn O2 Oceanic Emissions
5. 図キャプション
(a)10月と(b)11月の日本周辺海域の表面酸素飽和度。気象庁データを緯度経度1度毎に平均したもの。各グリッド周囲の線はグリッド内のデータ数を表す。