16:00 〜 16:15
[ACG50-07] 房総沖浅海域におけるメタンプルームの分布とその起源
CH4は天然ガスの主成分であり、資源科学的に重要な物質である。また、代表的な温室効果気体であり、地球環境を考える上でも重要な物質である。水圏環境は大気CH4の主要供給源の1つとして知られているが、特に沿岸海域から大気中に放出されるCH4の起源や挙動については未解明の点が多い。
房総沖の水深30-50 m前後の浅海域では、表層水中のCH4濃度が特に大きい地点 (メタンスポット) の存在が確認されているが、その分布や起源については未解明な部分が多い。特に近接する九十九里周辺の陸域には南関東ガス田と呼ばれるCH4を主成分とする水溶性天然ガス鉱床が浅部に広く分布しており、川底や海浜では自然湧出するCH4ガスの気泡を確認することができるが、この陸域ガス鉱床と海域メタンスポットとの関係も不明である。そこで本研究では、「新青丸」KS-24-12次航海 (主席:岩本洋子) を実施し、房総沖メタンスポット周辺において計量魚群探知機やマルチビームソナーを用いた海底ガス湧出域の広域探査を行った。また、海水中の溶存CH4について濃度と安定同位体比 (δ13C- CH4値とδ2H-CH4値) を測定し、CH4の起源と海水中における挙動の解明を試みた。海域探査では、計13地点で海水試料の各層採取を行った。また、陸域に湧出する天然ガス試料や主要流出河川である利根川の河川水試料も採取し、海域試料と同様にCH4の安定同位体比を測定した。
まず陸域に自然湧出する天然ガス試料中のCH4の安定同位体比は、δ¹³C値が-67~-65‰、δ²H値が-203~-178‰となり、金子他 (2001) が茂原・九十九里地域において報告している、南関東ガス田のCH4と一致した。一方海域探査の結果、房総沖浅海域では海底ガス湧出と考えられる音響異常が大小合わせて約50ヶ所で確認できた。また、採取した海水試料中のCH4濃度は7.3-50.6 nmol/kgであり、大気平衡海水の値である2-3 nmol /kgと比較して著しく過飽和であることが確認された。さらに、海水試料中のCH4の濃度と同位体比の間に優位な相関が確認され、その高濃度側の端成分 (δ13C=-65±1‰、δ2H=-133±20‰) は、微生物がCO₂を基質として生成する、CO₂還元型のCH4の安定同位体比 (Whiticar, 1999) と特徴が一致した。この安定同位体比を陸域のCH4の安定同位体比と比較すると、いずれもわずかに大きくなる方向にズレていたが、このズレはメタン酸化の傾きと一致しており、一部が酸化されたとして説明できる。一方利根川河川水中のCH4 (δ¹³C=-61‰、δ2H=-177‰) も同じくCO₂還元型の特徴を示したが、海水の高濃度側端成分と比べるとδ13Cは大きく、δ2Hは小さくなる方向にズレており、利根川がメタンスポットにおける高濃度CH4の供給源とは考えにくい値を示した。以上より房総沖浅海域のメタンスポットは、陸域に自然湧出する天然ガスと同じく南関東ガス田をその起源とするものの、海底から湧出する直前にメタン酸化によって一部が除去されており、δ13Cとδ2Hがともに上昇した上で海水中に放出されているものと結論した。
房総沖の水深30-50 m前後の浅海域では、表層水中のCH4濃度が特に大きい地点 (メタンスポット) の存在が確認されているが、その分布や起源については未解明な部分が多い。特に近接する九十九里周辺の陸域には南関東ガス田と呼ばれるCH4を主成分とする水溶性天然ガス鉱床が浅部に広く分布しており、川底や海浜では自然湧出するCH4ガスの気泡を確認することができるが、この陸域ガス鉱床と海域メタンスポットとの関係も不明である。そこで本研究では、「新青丸」KS-24-12次航海 (主席:岩本洋子) を実施し、房総沖メタンスポット周辺において計量魚群探知機やマルチビームソナーを用いた海底ガス湧出域の広域探査を行った。また、海水中の溶存CH4について濃度と安定同位体比 (δ13C- CH4値とδ2H-CH4値) を測定し、CH4の起源と海水中における挙動の解明を試みた。海域探査では、計13地点で海水試料の各層採取を行った。また、陸域に湧出する天然ガス試料や主要流出河川である利根川の河川水試料も採取し、海域試料と同様にCH4の安定同位体比を測定した。
まず陸域に自然湧出する天然ガス試料中のCH4の安定同位体比は、δ¹³C値が-67~-65‰、δ²H値が-203~-178‰となり、金子他 (2001) が茂原・九十九里地域において報告している、南関東ガス田のCH4と一致した。一方海域探査の結果、房総沖浅海域では海底ガス湧出と考えられる音響異常が大小合わせて約50ヶ所で確認できた。また、採取した海水試料中のCH4濃度は7.3-50.6 nmol/kgであり、大気平衡海水の値である2-3 nmol /kgと比較して著しく過飽和であることが確認された。さらに、海水試料中のCH4の濃度と同位体比の間に優位な相関が確認され、その高濃度側の端成分 (δ13C=-65±1‰、δ2H=-133±20‰) は、微生物がCO₂を基質として生成する、CO₂還元型のCH4の安定同位体比 (Whiticar, 1999) と特徴が一致した。この安定同位体比を陸域のCH4の安定同位体比と比較すると、いずれもわずかに大きくなる方向にズレていたが、このズレはメタン酸化の傾きと一致しており、一部が酸化されたとして説明できる。一方利根川河川水中のCH4 (δ¹³C=-61‰、δ2H=-177‰) も同じくCO₂還元型の特徴を示したが、海水の高濃度側端成分と比べるとδ13Cは大きく、δ2Hは小さくなる方向にズレており、利根川がメタンスポットにおける高濃度CH4の供給源とは考えにくい値を示した。以上より房総沖浅海域のメタンスポットは、陸域に自然湧出する天然ガスと同じく南関東ガス田をその起源とするものの、海底から湧出する直前にメタン酸化によって一部が除去されており、δ13Cとδ2Hがともに上昇した上で海水中に放出されているものと結論した。