日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG51] 沿岸海洋生態系-2.サンゴ礁・藻場・マングローブ

2025年5月28日(水) 15:30 〜 17:00 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:梅澤 有(東京農工大学)、樋口 富彦(京都大学 人間・環境学研究科)、中村 隆志(東京科学大学 環境・社会理工学院)、渡辺 謙太(港湾空港技術研究所)、座長:中村 隆志(東京科学大学 環境・社会理工学院)、樋口 富彦(東京大学大気海洋研究所)、梅澤 有(東京農工大学)、渡辺 謙太(港湾空港技術研究所)

16:10 〜 16:25

[ACG51-09] 琉球列島におけるマングローブ林の地形・潮汐・樹木分布の相互作用

*笠井 克己1後藤 和久1 (1.東京大学)


キーワード:マングローブ、LiDAR、潮汐、数値シミュレーション

熱帯・亜熱帯の潮間帯上半部に発達するといわれているマングローブ林は,微地形スケールでの地形変化によって優占する樹種が置き換わる,いわゆるゾーネーションを示すことが知られている.局所的なマングローブの生育環境を規定する要因としては,降雨量や潮汐,波浪,河川水の影響などがこれまで指摘されており,それらも林内の微地形の与える影響が大きいと考えられる.しかしながら,微地形がマングローブ生態系の形成・生育メカニズムにどのように影響しているのか未だ詳細な解明には至っていない.そのため,適切な保全・植林活動が行えずに枯死し,失敗に終わったケースが多く報告されている(Lewis, 2005).特に,マングローブ林内の微地形や樹木の分布など,マングローブの生育環境を広範囲かつ高解像度に把握することは極めて重要であると言える.本研究では,琉球列島に分布しているマングローブ林を対象とし,樹種分布と微地形を広域で定量的に比較し,マングローブ樹種が地形とどのように影響し合っているのかについて検討を行った.マングローブ林内の地形や樹木分布を把握する方法としては,2種類のLiDAR技術を適用し,林内環境の3次元把握を行った(Kasai et al., 2024).また,マングローブ樹種分布の規定要因の一つと考えられている潮汐に着目し,Delft3Dにより2023年の1年間の潮汐変動計算を実施することで,林内での潮汐の流れの数値シミュレーションを行った.そして,シミュレーション結果から,微地形がマングローブ林内での潮汐の動きに及ぼす影響や,樹木分布が潮汐でどのように規定されているのかについて検討を行った.
琉球列島の各地域でLiDAR測量を行い,分布の比較を行った結果,マングローブ樹木の生育標高のモード値や標高範囲には地域差があることが明らかとなった.微地形に基づく分布の違いを数千本数単位で定量的に把握できたことにより,マングローブ樹木の分布に地形が及ぼす影響を統計的に議論できる結果となった.
潮汐の数値シミュレーションでは,高精細な地形データ,樹木分布を得ることで,従来より高解像度で潮汐の局所的な動きを再現することが可能となった.また,マングローブ樹木の分布範囲が潮汐によって制約されている様子を把握することができた.
このような高解像度かつ高精細なデータセットを用いた樹木分布比較と数値シミュレーションを行うことで,地域ごとの分布の違いの理由など,マングローブ生育環境が規定される要因の解明につながることが今後期待される.