日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG51] 沿岸海洋生態系-2.サンゴ礁・藻場・マングローブ

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:梅澤 有(東京農工大学)、樋口 富彦(京都大学 人間・環境学研究科)、中村 隆志(東京科学大学 環境・社会理工学院)、渡辺 謙太(港湾空港技術研究所)

17:15 〜 19:15

[ACG51-P06] 西表島網取湾における2016年大規模白化前後のサンゴ分布と多様性の変化

*宇治 陽介1村上 智一2下川 信也2 (1.筑波大学、2.国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

キーワード:西表島、網取湾、サンゴ白化、サンゴ分布、サンゴ多様性

サンゴ礁は海洋で最も生物多様性の豊富な場所であり,人類にも豊かな水産資源を提供したり観光地として経済効果をもたらしたりと様々な恩恵がある.しかし近年,地球温暖化の影響で高海水温によるサンゴの白化が世界中で発生し,サンゴ礁が危機に瀕している.サンゴ礁を保全するために白化に伴うサンゴ分布と多様性の変化を調査することが重要である.西表島網取湾は物理環境勾配が大きく,人為的影響が少ないため,様々なサンゴを有する自然豊かな場所である.その網取湾で2016年に大規模な白化が発生した.そこで,本研究ではこの白化前後に撮影されたコドラート写真をもとにサンゴの被度を解析することでサンゴ分布の変化を明らかにした。そして,得られた被度の値をもとにShannon-Wienerの多様性指数H’(文献1)を算出することで多様性の変化を明らかにした.さらに,観測と数値シミュレーションによって計算された網取湾における有義波高と土粒子数の平面分布のデータ(文献2)を整理し,被度解析を行った地点における平均的な有義波高と土粒子数を求め,サンゴの被度・多様性と有義波高・土粒子数との関係を解析した.主な結果は以下の通りである.(1)白化前は枝状サンゴと卓状サンゴが支配的であったが,白化後には枝状サンゴと卓状サンゴの被度は80%以上減少して支配的ではなくなった(図1).(2)減少率が最も小さかったのは塊状サンゴで10%程度であった(図1).(3)枝状サンゴの中では白化前はミドリイシ属の被度が最大であったが,白化後は大幅にその被度が減少し,ハナヤサイサンゴ属の被度が最大となった.さらに,ハナヤサイサンゴ属の被度は白化前より増加していた(図2).(4)白化後に多様性指数が増加していた地点の方が多かった.(5)有義波高が最大の地点では卓状サンゴが卓越していた.(6)土粒子数が最多の地点では塊状サンゴと被覆状サンゴの被度が大きかった.(7)多様性指数と物理環境との関係において,中間規模撹乱仮説は成り立っていなかった.(1),(2)は枝状・卓状サンゴは成長速度は速いが白化耐性は弱く,塊状サンゴは成長速度は遅いが白化耐性は強いためであると考えられる.(3)はミドリイシ属が白化によって大幅に減少し,生じたスペースに産卵周期の関係でハナヤサイサンゴ属が進出できた可能性を示唆する.(4)はもともと支配的であった群体形・属が白化によって減少することで,多様性が豊富になる場合があることを示唆する.(5),(6)は先行研究と整合的であるが(7)は先行研究と非整合的である.後者は調査地点数の少なさが原因の可能性があると考えられる.本発表では被度解析地点を増やした結果も示す予定である.

参考文献:
1.Clarke K. R, Gorley R. N, Somerfield P. J, Warwick R. M(2014)CHANGE IN MARINE COMMUNITIES: An Approach to Statistical Analysis and Interpretation 3rd edition. PRIMER-E Ltd, Plymouth, 262p.
2.Shimokawa S., Murakami T., Ukai A., Kohno H., Mizutani A., Nakase K.(2014a)Relationship between coral distributions and physical variables in Amitori Bay, Iriomote Island, Japan. Journal of Geophysical Research : Oceans, 119, 8336-8356.