日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG51] 沿岸海洋生態系-2.サンゴ礁・藻場・マングローブ

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:梅澤 有(東京農工大学)、樋口 富彦(京都大学 人間・環境学研究科)、中村 隆志(東京科学大学 環境・社会理工学院)、渡辺 謙太(港湾空港技術研究所)

17:15 〜 19:15

[ACG51-P07] 小型水槽を用いたサンゴに対する日焼け止め剤の長期的な影響評価

*今宮 駿介1,2宮入 陽介1横山 祐典1,2,3 (1.東京大学 大気海洋研究所、2.東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻、3.東京大学 大学院総合文化研究科付属 国際環境学教育機構)

キーワード:サンゴ、日焼け止め、クロロフィル蛍光測定、慢性毒性、飼育実験

サンゴ礁は地球上で最も生物多様性に富む生態系の一つである。近年、自然的、あるいは人為的な影響によって、多くのサンゴ礁が白化や劣化の危険に晒されている。その人為的影響の一つとして、海洋中に流出する日焼け止め剤がサンゴに与える毒性が懸念されている。実際に、ハワイ州では特定の化学物質(オキシベンゾンとオクチノキサート)を含む日焼け止めの使用が禁止され、従来の日焼け止めに代わる新たな製品の開発が求められている。同時に、日焼け止め成分がサンゴに与える毒性についても、研究が進められている。
 サンゴに対する日焼け止め成分の影響評価方法として、サンゴを日焼け止め成分へ短時間(48h~96h)暴露する実験がしばしば用いられる。この実験方法ではサンゴのストレス反応による白化が、化学物質の急性毒性の指標の一つとして扱われている。しかし、自然環境においては、実験環境よりも低濃度の日焼け止め成分に対して、長期間の暴露が起きると考えられる。したがって、サンゴに対する日焼け止め成分の影響評価の際には、長期間の実験による慢性的な毒性の評価も必要である。そこで、本研究では、飼育条件を揃えた小型水槽を複数用いて、サンゴを日焼け止め成分に長期間暴露させることで、日焼け止め成分がサンゴに与える長期的な影響の評価を試みた。小型水槽でサンゴサンプルを1個体ずつ飼育することにより、感染症によるサンゴの病死のリスクを抑えつつ、長期的かつ段階的な薬剤の曝露に対するサンゴの反応の測定を目指した。
 まず、直径10cm程度のミドリイシ(Acropora sp.)1個体を18株のサンゴ片へ分割し、各サンゴ片に対して1つずつ、小型水槽による飼育環境を作成した。海水に添加する薬品ごとに3水槽ずつのグループに分け、合計6つのグループを同時に飼育し、水温、明暗サイクル、塩分濃度、換水頻度等の飼育条件はグループ間で揃えた。1ヶ月にわたり、週2日、クロロフィル蛍光測定と画像撮影を実施し、各薬品がサンゴに与える影響を評価した。クロロフィル蛍光測定はサンゴと共生する褐虫藻の光化学系Ⅱの最大量子収率を測定する手法であり、サンゴの白化の指標として用いた。画像撮影の際には目視によって、サンゴの健全性を観察した。実験の結果、対象となる試験薬剤を添加していないコントロール下のサンゴと、試験薬剤を添加したサンゴ間において有意な差が確認された。また、ストレス反応を示したサンゴ個体については、薬品への暴露に伴ってクロロフィル蛍光測定における最大量子収率が低下、すなわち白化が進行する様子が段階的に確認された。発表では、飼育結果を踏まえ、小型水槽を用いた飼育の有用性と展望について議論し検討する。