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[ACG52-12] ユーコン準州ビーバークリークにおける永久凍土融解よる地盤沈下:InSAR時系列解析とGNSS観測の比較検証
キーワード:永久凍土、サーモカルスト、森林火災、InSAR、合成開口レーダ、GNSS
北極圏における近年の気温上昇は世界平均を大きく上回る速度で進行し、気候シミュレーションでは温暖化の継続と森林火災の発生頻度の増加が予測されている。しかし、永久凍土の融解プロセスを考慮した地球システムモデルは限られており、特に地盤沈下を伴う急激な融解現象や、植生変化や森林火災と永久凍土融解の相互作用についての考慮が不十分である。これらの影響を正確に評価し、気候変動に伴う環境変化を理解するためには、急激な融解を含めた広域的な永久凍土の融解プロセスを面的に観測することが不可欠である。
研究対象地域のユーコン準州ビーバークリーク(以下,BC)の南部ではコアリングや電気探査等による先行研究において地下氷が検出されており、急速的な永久凍土の融解が地盤沈下を引き起こす可能性がある。本研究は、特にBC南部で2019年に発生した火災跡地(約28 km²)内部に検証サイトを設置し,合成開口レーダー干渉法(InSAR)を用いた面的な地盤変動の解析と検証を行った。解析にはJAXAのLバンドSAR衛星 ALOS-2/PALSAR-2 のデータを使用した。ALOS-2のStripMap 10 m(SM3)モードによる解析は、BC周辺の空間的に不均一な地盤沈下を対象とした場合に分解能が不十分で局所的に干渉性が低下する事例がある(柳谷他, JpGU2023)。そのため、2023年夏季から高分解能のStripMap 3 m(SM1)モード による観測を開始し、検証サイトにおいて詳細な季節的地盤変動を明らかにした(柳谷他, JpGU2024)。
本研究では,2023–2024年の2年間の高分解能観測データを用いたInSAR時系列解析を行い、季節的変動に加えて年間の地盤変動量を検出すると共に,2023–2024年のGNSS観測により検証サイトの地盤変動量を直接測定し、同期間に取得されたInSARデータとの比較検証を行った。本研究における現地観測は、永久凍土の融解が土壌・水フラックス・炭素循環に与える影響の解明を目的とした国際研究プロジェクト PRISMARCTYC の一環として実施された。
InSAR時系列解析の結果、火災跡地内部の北向斜面において季節的および年間の地盤沈下を検出した。斜面上の地盤沈下プロセスは地形条件により異なり、斜面上部(基盤岩分布域)では顕著な変動は見られなかった。一方、斜面中腹では最大の地盤沈下が検出され、2023年には最大約14 cm、2024年には同地点で最大5 cmの季節的沈下シグナルが検出された。また、斜面下部では沈下量が比較的少なく、2023年には約7 cm、2024年には約3 cmの沈下シグナルが検出された。InSAR時系列解析から得られた地盤沈下の空間分布は、現地観測で計測した融解深の空間分布と一致した。特に、沈下量が最も大きい斜面中腹域では、融解深が最大100 cm以上に達し、2022年から2024年にかけて深化する傾向が見られた。一方、沈下量が中程度の斜面下部では融解深が約60 cmであり、2024年には過去2年間に比べて4–20 cm程度浅くなっていた。
また、Sentinel-2の光学画像を用いた正規化植生指数(NDVI)時系列を解析し、火災後の斜面全体の植生回復過程を評価した。2019年の火災直後にNDVI値は著しく低下したが、その後上昇する傾向が確認された。特に、地盤沈下量が小さく融解深が浅くなる傾向がある斜面下部においてNDVIの回復が顕著であった。2023年晩夏から2024年晩夏の年間変動はほとんど見られず、2024年は前年の季節凍土層のみが融解し、それより深部の融解は進行しなかった可能性が示唆された。同期間のGNSS観測では、一部の観測点を除き顕著な変動は観測されず、InSARで得られた結果と整合することが確認された。火災跡地における永久凍土の融解プロセスは、同一斜面内の隣接地点においても時空間的に異なる変動プロセスを示し、地形や植生回復過程との関連性が示唆された。
研究対象地域のユーコン準州ビーバークリーク(以下,BC)の南部ではコアリングや電気探査等による先行研究において地下氷が検出されており、急速的な永久凍土の融解が地盤沈下を引き起こす可能性がある。本研究は、特にBC南部で2019年に発生した火災跡地(約28 km²)内部に検証サイトを設置し,合成開口レーダー干渉法(InSAR)を用いた面的な地盤変動の解析と検証を行った。解析にはJAXAのLバンドSAR衛星 ALOS-2/PALSAR-2 のデータを使用した。ALOS-2のStripMap 10 m(SM3)モードによる解析は、BC周辺の空間的に不均一な地盤沈下を対象とした場合に分解能が不十分で局所的に干渉性が低下する事例がある(柳谷他, JpGU2023)。そのため、2023年夏季から高分解能のStripMap 3 m(SM1)モード による観測を開始し、検証サイトにおいて詳細な季節的地盤変動を明らかにした(柳谷他, JpGU2024)。
本研究では,2023–2024年の2年間の高分解能観測データを用いたInSAR時系列解析を行い、季節的変動に加えて年間の地盤変動量を検出すると共に,2023–2024年のGNSS観測により検証サイトの地盤変動量を直接測定し、同期間に取得されたInSARデータとの比較検証を行った。本研究における現地観測は、永久凍土の融解が土壌・水フラックス・炭素循環に与える影響の解明を目的とした国際研究プロジェクト PRISMARCTYC の一環として実施された。
InSAR時系列解析の結果、火災跡地内部の北向斜面において季節的および年間の地盤沈下を検出した。斜面上の地盤沈下プロセスは地形条件により異なり、斜面上部(基盤岩分布域)では顕著な変動は見られなかった。一方、斜面中腹では最大の地盤沈下が検出され、2023年には最大約14 cm、2024年には同地点で最大5 cmの季節的沈下シグナルが検出された。また、斜面下部では沈下量が比較的少なく、2023年には約7 cm、2024年には約3 cmの沈下シグナルが検出された。InSAR時系列解析から得られた地盤沈下の空間分布は、現地観測で計測した融解深の空間分布と一致した。特に、沈下量が最も大きい斜面中腹域では、融解深が最大100 cm以上に達し、2022年から2024年にかけて深化する傾向が見られた。一方、沈下量が中程度の斜面下部では融解深が約60 cmであり、2024年には過去2年間に比べて4–20 cm程度浅くなっていた。
また、Sentinel-2の光学画像を用いた正規化植生指数(NDVI)時系列を解析し、火災後の斜面全体の植生回復過程を評価した。2019年の火災直後にNDVI値は著しく低下したが、その後上昇する傾向が確認された。特に、地盤沈下量が小さく融解深が浅くなる傾向がある斜面下部においてNDVIの回復が顕著であった。2023年晩夏から2024年晩夏の年間変動はほとんど見られず、2024年は前年の季節凍土層のみが融解し、それより深部の融解は進行しなかった可能性が示唆された。同期間のGNSS観測では、一部の観測点を除き顕著な変動は観測されず、InSARで得られた結果と整合することが確認された。火災跡地における永久凍土の融解プロセスは、同一斜面内の隣接地点においても時空間的に異なる変動プロセスを示し、地形や植生回復過程との関連性が示唆された。