日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG52] 北極域の科学

2025年5月29日(木) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:川上 達也(北海道大学)、堀 正岳(東京大学大気海洋研究所)、柳谷 一輝(宇宙航空研究開発機構)、佐藤 洋太(海洋研究開発機構)、座長:堀 正岳(東京大学大気海洋研究所)、川上 達也(北海道大学)

14:30 〜 14:45

[ACG52-16] 冬季シベリア北東部における水蒸気輸送量の長期変化の要因分析

*野沢 徹1、村田 茉莉花2、杉本 芽生1 (1.岡山大学大学院環境生命自然科学研究科、2.岡山大学大学院自然科学研究科)

キーワード:地球温暖化、水循環変化

雨量計による観測事実によれば、地球温暖化にともない、北半球高緯度域では20世紀半ば以降に降水量が有意に増加している。一方、ユーラシア大陸最東端のシベリア北東部においては、特に12~2月の冬季に降水量が有意に減少している。気象庁55年長期再解析データ(JRA-55)を用いたこれまでの解析により、冬季シベリア北東部では、この領域に南から流れ込む水蒸気が減少したことで降水が減少した可能性が高いことが判明している。本研究では、水蒸気フラックスの長期変化を季節平均とそこからのズレである季節内変動に切り分け、冬季シベリア北東部への水蒸気流入が減少した要因について解析した。
鉛直積算した水蒸気フラックスは「季節平均した風と比湿の積」の項と「季節平均からのズレ同士の積」の項(季節内変動成分)に切り分けられる。JRA-55を用いて1958~2023年の65冬季における水蒸気フラックスの長期変化を解析した結果、「季節平均同士の積」の項にはベーリング海で南向き、アラスカ半島で北向きの有意なトレンドがみられた。また、「季節内変動成分」にはシベリア北東部で東向き、アラスカ半島で西向きに収束した水蒸気が南のベーリング海に向かう有意なトレンドが確認できた。さらに、「季節平均同士の積」の項を「循環場(風)の長期変化に起因する項」と「水蒸気量(比湿)の長期変化に起因する項」に分離して解析した結果、「循環場の変化」の寄与が大きく、特に大気下層で顕著であった。冬季平均した大気下層の循環場および高度場の長期変化から、冬季のベーリング海に位置するアリューシャン低気圧が東に張り出したことで、同低気圧の東側でシベリア北東部に南(北太平洋)から流入する水蒸気フラックスが減少したことが明らかとなった。講演では、アリューシャン低気圧が東に張り出した要因についての解析結果も述べる予定である。