日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG53] 沿岸海洋生態系-1.水循環と陸海相互作用

2025年5月28日(水) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:杉本 亮(福井県立大学海洋生物資源学部)、藤井 賢彦(東京大学大気海洋研究所)、小森田 智大(熊本県立大学環境共生学部)、山田 誠(龍谷大学経済学部)、座長:藤井 賢彦(東京大学大気海洋研究所)、小森田 智大(熊本県立大学環境共生学部)

09:45 〜 10:00

[ACG53-04] 干出時において海底湧水が向上させる底生微細藻類の基礎生産量:砂質干潟と泥質干潟の比較

*尾崎 竜也1本田 陸斗1林 莉紗1杉本 亮2、大谷 壮介3小森田 智大1 (1.熊本県立大学、2.福井県立大学、3.大阪公立大学工業高等専門学校)

キーワード:海底湧水、干潟、底生微細藻類、基礎生産量、有明海

干潟は調整機能など重要な生態系サービスを人類に提供している(Costanza et al., 1997; Barbier et al., 2011).しかし,沿岸の開発による直接的な損失や気候変動に伴う海面上昇と海岸の浸食などによって,干潟の面積は年間0.55%ずつ減少している(Murray et al., 2019).失われつつある干潟を保全するためには,干潟生態系の根幹を担う基礎生産者の知見の拡充が急務である.
 干潟は潮汐により堆積物表面に日射が直接照射されることから,底生微細藻類が繁茂する(山口, 2011).干出時には堆積物表面の光条件が好適である一方で(Chevalier et al., 2010),水分の蒸発や間隙水中の栄養塩濃度の低下により底生微細藻類の基礎生産が制限されるという報告もある(一見ら, 2008; 一見ら,2013).また近年,沿岸海域では海底湧水(SGD)が主要な栄養塩の供給経路として注目されている(Wilson et al., 2024).SGDから供給される栄養塩が植物プランクトンの基礎生産に強く影響することは報告されているが(Nakajima et al., 2024),干潟の底生微細藻類とSGDの関係を対象とした研究は少ない.しかし,海底湧水は干出時の干潟に乾燥条件の改善と栄養塩の供給をもたらし,干出時の不適な環境要因を取り除くポテンシャルがあるため,干潟の基礎生産と密接に関係していると考えられる.
 本調査海域である緑川河口干潟は有明海に面しており,熊本・八代平野に面するため地下水資源が豊富に存在する(御薗生ら, 2012).また,岸から沖合にかけて不連続に泥質干潟と砂質干潟が形成されている.堆積物の粒度組成により光合成活性が異なることから(Under wood & Kromkamp, 1999),粒度組成ごとにSGDと底生微細藻類の基礎生産の関係を評価する必要がある.
 そこで本研究では,SGDが干出時の底生微細藻類の基礎生産に与える影響を解明することを目的とし,SGDによる乾燥条件の改善と栄養塩の供給によって干出時の底生微細藻類の基礎生産量は顕著に増加することを仮説とした.そして,干出時の受光量が最大となる夏季を対象に,SGDがある場所(SGD区)とない場所(non-SGD区)でチャンバー法により基礎生産量を定量し,泥質干潟と砂質干潟のそれぞれで干出時間の経過に伴う基礎生産量の増加量を比較した.
 泥質干潟における干出時の基礎生産量は,干出の経過によりSGD区で顕著に基礎生産量の増加量(104 mgC m–2 h–1)がnon-SGD区の値(47 mgC m–2 h–1)を上回った (Fig 1. a).砂質干潟でも,干出の経過に伴いSGD区で基礎生産量(126 mgC m–2 h–1)は顕著に増加し,non-SGD区の値(7 mgC m–2 h–1)を大きく上回った (Fig 1. b).このことから,SGDによって干出時の基礎生産量が顕著に増加することが示唆された.発表では,間隙水中の栄養塩や塩分といった様々な環境要因の関係を含めてSGDが干潟の干出時の基礎生産量に与える影響を詳述する.