日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG53] 沿岸海洋生態系-1.水循環と陸海相互作用

2025年5月28日(水) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:杉本 亮(福井県立大学海洋生物資源学部)、藤井 賢彦(東京大学大気海洋研究所)、小森田 智大(熊本県立大学環境共生学部)、山田 誠(龍谷大学経済学部)、座長:藤井 賢彦(東京大学大気海洋研究所)、小森田 智大(熊本県立大学環境共生学部)

10:00 〜 10:15

[ACG53-05] 岩手県大槌湾における海洋酸性化・地球温暖化指標の連続モニタリング

*藤井 賢彦1、Bernardo Lawrence1、渡邊 望海2、脇田 昌英3 (1.東京大学大気海洋研究所、2.岩手県立大槌高等学校、3.海洋研究開発機構むつ研究所)

キーワード:海洋酸性化、地球温暖化、連続モニタリング

漁業・養殖業が重要な地場産業である三陸では近年、地球温暖化と黒潮大蛇行による海水温の上昇が顕著であり、冷水性魚種の減少、暖海性魚種の加入、貝類養殖種の斃死や貝毒の頻発との関係が取り沙汰されている。また、将来的には世界的な人為起源CO2の大量排出に伴う海洋酸性化が貝類養殖種に及ぼす影響も懸念される。このような状況において沿岸社会が取り組むべき対策を講じる上での科学的根拠となる地球温暖化・海洋酸性化指標の現状を把握し、将来を予測することが急務である。そこで本研究では三陸の他湾と同様、養殖が盛んな大槌湾の2測点でこれらの指標の連続モニタリングを2023年に開始した。水温、塩分、pHは測器を用いて連続観測を行うと共に、1か月程度に1回、測器のメンテナンスを行う際に採水した海水の分析により得られた全アルカリ度と溶存無機炭素濃度の値を用いて、海洋酸性化指標のひとつであるアラゴナイト飽和度を見積もった。その結果、大槌湾では水温の顕著な季節変動と塩分の急激な低下が認められた。海水の塩分を低下させる要因として、雨水の他に海底湧水が流入した影響も考えられる。アラゴナイト飽和度は短期的にではあるがマガキ幼生に深刻な海洋酸性化影響が及ぶと考えられる閾値(1.5)を下回った。モニタリング期間中の高水温の一因として、黒潮大蛇行に伴う暖水の流入が考えられるが、より正確かつ定量的な評価のためにはモニタリングの継続が必要である。今後の気候変動の進行に伴い、沿岸域では暴風雨や海洋熱波といった局所的な極端現象の頻度や強度が増大すると共に地球規模での地球温暖化や海洋酸性化との複合影響が懸念され、安定したモニタリングシステムの構築が求められる。