11:30 〜 11:45
[ACG53-10] ドローン空撮と環境DNAを併用した八代海・大島地先干潟における魚類の生物攪拌の定量化に向けた試み

キーワード:環境DNA、生物攪拌
【はじめに】
干潟に生息する二枚貝類や多毛類などの底生動物は,巣穴形成やろ過食などを通して物質循環を促進する生物攪拌を行っており,重要な生態系機能を担っている.一方,セイウチOdobenus rosmarusなどの哺乳類やアカエイ科エイ類Dasyatidae spp.などの軟骨魚類も捕食活動に伴って生物攪拌を行っていると考えられ,研究が進められてきた.これらの大型動物の生物攪拌を定量的に評価している報告はいまだ少ないが,多くの堆積物を移動させている可能性が指摘されている.エイ類などの軟骨魚類に加え,クロダイAcanthopagrus schlegeliiなどの硬骨魚類も干潟を餌場として利用しており,摂餌行動を通して堆積物上に目視可能な活動痕を残すものの,従来,それらの行動は生物攪拌とみなされておらず,現在に至るまで,硬骨魚類による生物攪拌の定量的評価に関する報告は少ない.これまでに確立されている空撮画像による大型動物の捕食痕の評価は,生物攪拌に伴う堆積物の移動量は算出できるが,捕食者の特定は困難である.一方,近年急速な発展を遂げた環境DNA分析を空撮評価と組み合わせることで,干潟に来訪する魚類相の網羅的評価が可能である.
そこで,本研究では空撮画像による捕食痕の抽出と環境DNAによる魚類相の評価を組み合わせることで,特定の魚種による生物攪拌量の定量を行うことを目的とする.
【材料と方法】
本研究の調査域が位置する八代海は,熊本県と鹿児島県に囲まれており,約1200 km²の海域面積で閉鎖性が高く,球磨川河口が位置する北部に広大な干潟を有している.本研究は,球磨川の北部に位置する大島地先干潟(北緯32.5465490°, 東経130.5576281°)において実施した.
本研究の調査は,2023年6月から2024年1月に月1回,2日連続で実施した.環境DNAによる魚類相の調査は,捕集材を入れた金属製カゴ(n = 3)をコンポーズに結束バンドで固定し,約1日係留した.回収後,シリンジで海綿の水分を除去し,持ち帰り,冷凍保存したものからDNAを抽出し,魚類の網羅的な同定を行った.さらに,検出された魚類の中から干潟を攪拌する行動を行い,且つ画像解析で検出可能と判断される種を優占種として選定した.また,各優占種の出現率Pi,k(%)は以下の式(1)を用いて算出した.この計算はすべての捕集材(k=1,2,3)ごとに実施した.
Pi,k = Ni,k /ΣjNj,k ×100 (1)
ここでNi,kは捕集材kにおいて検出された優占種iのリード数, ΣjNj,kは捕集材kにおける全魚類jの総リード数である.
調査時にドローン(Mavic3, DJI)を用いて干潟を上空約100 mから空撮した画像を結合して1枚の画像として出力した.出力画像から調査定点付近を抽出し,目視で捕食痕を検出した. 1日目と2日目の捕食痕面積Ai,d(m2)(d = 1,2)をそれぞれ算出し,各月の1日あたり攪拌率Ri(% d-1)を以下の式(2)で用いて算出した.
Ri = (Ai,2 – Ai,1) / Si ×100 (2)
ここでiは抽出した地点(各月5箇所)であり,Siは地点iの抽出した面積(約100 m2)である.加えて,2023年10月から2024年1月にかけて,調査対象域では保護網の内側と外側において10 cm方形枠を用いて底生動物の定量も行った(各月n = 5).
【結果と考察】
本研究域において攪拌率は温暖期(7月-10月)で平均4.41 ± 0.718 % d–1, 寒冷期(11月-1月)で平均0.431 ± 0.354 % d–1と温暖期の方が高く,水温の変動と一致していた.保護網を設置していない区は保護網を設置している区よりも底生動物の数も種数も少なかったことから,底生動物は捕食されていると考えられる.環境DNAの結果によると,本研究域の優占種はクロダイを含む7種であり,その中でもクロダイのみが調査期間を通して出現率が高かった.魚には種類ごとに選好温度があり,クロダイは夏季に活発に捕食活動を行い,冬季にはその活動が減衰することが報告されている.これらのことから,本研究で抽出した活動痕を形成した種はクロダイであり,夏季には捕食などの攪拌を伴う活動を行う一方で,冬季には活動をあまりしないため,冬季の攪拌率が低くなったと考えられる.
干潟に生息する二枚貝類や多毛類などの底生動物は,巣穴形成やろ過食などを通して物質循環を促進する生物攪拌を行っており,重要な生態系機能を担っている.一方,セイウチOdobenus rosmarusなどの哺乳類やアカエイ科エイ類Dasyatidae spp.などの軟骨魚類も捕食活動に伴って生物攪拌を行っていると考えられ,研究が進められてきた.これらの大型動物の生物攪拌を定量的に評価している報告はいまだ少ないが,多くの堆積物を移動させている可能性が指摘されている.エイ類などの軟骨魚類に加え,クロダイAcanthopagrus schlegeliiなどの硬骨魚類も干潟を餌場として利用しており,摂餌行動を通して堆積物上に目視可能な活動痕を残すものの,従来,それらの行動は生物攪拌とみなされておらず,現在に至るまで,硬骨魚類による生物攪拌の定量的評価に関する報告は少ない.これまでに確立されている空撮画像による大型動物の捕食痕の評価は,生物攪拌に伴う堆積物の移動量は算出できるが,捕食者の特定は困難である.一方,近年急速な発展を遂げた環境DNA分析を空撮評価と組み合わせることで,干潟に来訪する魚類相の網羅的評価が可能である.
そこで,本研究では空撮画像による捕食痕の抽出と環境DNAによる魚類相の評価を組み合わせることで,特定の魚種による生物攪拌量の定量を行うことを目的とする.
【材料と方法】
本研究の調査域が位置する八代海は,熊本県と鹿児島県に囲まれており,約1200 km²の海域面積で閉鎖性が高く,球磨川河口が位置する北部に広大な干潟を有している.本研究は,球磨川の北部に位置する大島地先干潟(北緯32.5465490°, 東経130.5576281°)において実施した.
本研究の調査は,2023年6月から2024年1月に月1回,2日連続で実施した.環境DNAによる魚類相の調査は,捕集材を入れた金属製カゴ(n = 3)をコンポーズに結束バンドで固定し,約1日係留した.回収後,シリンジで海綿の水分を除去し,持ち帰り,冷凍保存したものからDNAを抽出し,魚類の網羅的な同定を行った.さらに,検出された魚類の中から干潟を攪拌する行動を行い,且つ画像解析で検出可能と判断される種を優占種として選定した.また,各優占種の出現率Pi,k(%)は以下の式(1)を用いて算出した.この計算はすべての捕集材(k=1,2,3)ごとに実施した.
Pi,k = Ni,k /ΣjNj,k ×100 (1)
ここでNi,kは捕集材kにおいて検出された優占種iのリード数, ΣjNj,kは捕集材kにおける全魚類jの総リード数である.
調査時にドローン(Mavic3, DJI)を用いて干潟を上空約100 mから空撮した画像を結合して1枚の画像として出力した.出力画像から調査定点付近を抽出し,目視で捕食痕を検出した. 1日目と2日目の捕食痕面積Ai,d(m2)(d = 1,2)をそれぞれ算出し,各月の1日あたり攪拌率Ri(% d-1)を以下の式(2)で用いて算出した.
Ri = (Ai,2 – Ai,1) / Si ×100 (2)
ここでiは抽出した地点(各月5箇所)であり,Siは地点iの抽出した面積(約100 m2)である.加えて,2023年10月から2024年1月にかけて,調査対象域では保護網の内側と外側において10 cm方形枠を用いて底生動物の定量も行った(各月n = 5).
【結果と考察】
本研究域において攪拌率は温暖期(7月-10月)で平均4.41 ± 0.718 % d–1, 寒冷期(11月-1月)で平均0.431 ± 0.354 % d–1と温暖期の方が高く,水温の変動と一致していた.保護網を設置していない区は保護網を設置している区よりも底生動物の数も種数も少なかったことから,底生動物は捕食されていると考えられる.環境DNAの結果によると,本研究域の優占種はクロダイを含む7種であり,その中でもクロダイのみが調査期間を通して出現率が高かった.魚には種類ごとに選好温度があり,クロダイは夏季に活発に捕食活動を行い,冬季にはその活動が減衰することが報告されている.これらのことから,本研究で抽出した活動痕を形成した種はクロダイであり,夏季には捕食などの攪拌を伴う活動を行う一方で,冬季には活動をあまりしないため,冬季の攪拌率が低くなったと考えられる.