日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG54] 有人・無人航空機による気候・地球システム科学研究の推進

2025年5月27日(火) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (4) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、小池 真(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、町田 敏暢(国立環境研究所)、篠田 太郎(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、座長:高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、小池 真(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)


14:00 〜 14:15

[ACG54-02] 夏季西部北太平洋の下層雲の鉛直構造: 2013年および2022年夏の航空機観測に基づく解析

*山田 耀1小池 真1、2022年 夏の観測チーム (1.東京大学)


キーワード:雲物理、境界層、航空機観測

層積雲などの下層雲は地球の放射収支に影響し、気候予測に不確実性をもたらす要因となっている。層積雲の鉛直構造の基本的描像は、主として亜熱帯東太平洋で多く実施された航空機観測に基づいて得られてきた。一方で西部北太平洋を含む中緯度では、夏季の下層雲量が多いにも拘らず、航空機からの直接観測事例は限られてきた。本研究の目的は、2013年と2022年に実施された航空機観測のデータや観測時の気象場に基づき、夏季における中緯度での下層雲の鉛直構造の特徴やその形成要因を、亜熱帯東太平洋での描像との対比により明らかにすることである。

本研究では主に、2022年7月下旬から8月上旬にかけて北海道東方沖(西部北太平洋)で実施された航空機からの直接観測によって得られたデータを使用した。この観測では、雲水量を測定する測器などを搭載した観測機を連続的に上昇・下降させることにより95個の雲の高度分布データが得られている。本研究ではこれらの観測に基づき、雲水量の断熱性(断熱的な雲の雲水量の鉛直分布からのずれの大きさ)、境界層の鉛直方向のカップリングの強さ(上層と下層の液水温位の差)、雲頂での逆転層の強さなどに着目した解析を実施した。

これらの雲の鉛直構造の多様性を理解するために、雲を形成した空気の履歴を、トラジェクトリー解析により調べた。また2022年夏の観測から得られた雲の鉛直構造が西部北太平洋で普遍性を持つかどうかを確認するために、2013年7月に同地域で実施された航空機観測データも解析した。

今回観測を行った夏季西部北太平洋の下層雲は亜熱帯のものと比較して、雲頂での逆転層が弱く、また雲頂より上での比湿が高かった。雲頂高度の中央値は亜熱帯のものよりも低い一方で、高度2000mに達するような雲も見られた。これらの雲頂高度が高い雲は非断熱的な構造を持ち、境界層もデカップリングしている傾向が見られた。トラジェクトリー解析から、高度によって雲を構成する空気の由来が異なることが示唆された。発表においては、2013年夏の同領域における航空機観測データとも比較しながら、このような夏季西部北太平洋の多様な鉛直構造を持つ下層雲の特徴と成因について議論する予定である。