日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG54] 有人・無人航空機による気候・地球システム科学研究の推進

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、小池 真(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、町田 敏暢(国立環境研究所)、篠田 太郎(名古屋大学宇宙地球環境研究所)


17:15 〜 19:15

[ACG54-P01] 衛星搭載ドップラーレーダのアルゴリズム開発に向けた航空機搭載レーダのミラーイメージの解析

*高橋 暢宏1 (1.名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

キーワード:降水観測、ドップラーレーダ、航空機搭載レーダ

人工衛星搭載の降水レーダは、これまで熱帯降雨観測衛星(TRMM)で世界初の降雨レーダ(PR)を搭載し、その後継ミッションである全球降水観測計画(GPM)では、二周波降水レーダ(DPR)を搭載して観測を行ってきた。現在、JAXAはNASAのAOSと連携してKu帯のドップラーレーダ(KuDPR)の開発を開始している。軌道上からのドップラー速度観測は、鉛直下向きに限られているが、降水粒子の鉛直方向の運動を表しており適切な落下速度を与えることにより大気の鉛直流の推定が可能となる。衛星搭載のドップラーレーダはEarthCARE/CPRが衛星搭載雲レーダとして初のドップラーレーダであり、現在もドップラー速度データの検証が行われている。KuDPRにおいてもドップラー速度計測の評価方法を確立する必要がある。地表面で散乱した送信波が上空の降水粒子が後方散乱して再び地表面で散乱し衛星に受信されるエコー、いわゆるミラーイメージ、がドップラー速度および減衰量の推定に有効であることが知られている。
本研究では、この手法の有効性を確認する目的で航空機に搭載されたレーダによる観測事例をもとに、減衰のないレーダ反射強度因子(Z)の推定方法および減衰係数の推定方法の開発を行い、その上でZとドップラー速度の関係について評価を行う手法を検討した。利用した航空機搭載レーダはNASA/JPLのAPR2であり、2003年に日本周辺で実施されたときのデータを用いた。APR2はKu帯とKa帯の二周波を備えており、ドップラー速度およびLDRはKu帯のみで得られる。直接エコーとミラーエコーのZの和のプロファイルは減衰の無いZのプロファイルに総減衰量(Path Integrated Attenuation: PIA)と地表面での散乱効率によるロスが加わったものであり、プロファイルの形状は減衰の無いZのプロファイルと同じなる。そのため、減衰が無視できるような非常に弱い降水や降雪のプロファイルまでミラーエコーが観測できれば、減衰の無いプロファイルが再現できる。また、直接エコーとミラーエコーのZの差のプロファイルは地表面から対象とした高度までの減衰量の積分値を表すため、高さ方向への傾きが減衰係数(dB/Km)を表すことになる。直接エコーとミラーエコーのドップラー速度は理想的なミラーイメージの条件では正負が逆になるため、両者の和はゼロになると考えられる。実際の観測データにおいて、この値がゼロにならない場合は何らかのバイアス(例えば航空機自体の鉛直運動)を考える必要がある。
この手法を2003年1月19日に太平洋上で観測された層状性降水に適用した。APR2は進行方向に直行する方向に走査するが、今回は直下に近いデータのみを用いた。その結果、多くのプロファイルにおいて減衰が非常に小さい高度までミラーエコーが得られたため、減衰の無いZのプロファイルを推定することができた。それを用いて、Zと減衰係数の関係を調べたところ、KaはZと減衰係数が非常に良い関係を示したが、Kuはそれほど明確な関係が得られなかった。原因として考えられることとしては、直接エコーとミラーエコーのZの差の傾きから減衰係数を求める手法や高さ方向に一様とした仮定に課題が残ることが考えられる。一方で、Zに対してDSDが変化した可能性も残る。ドップラー速度とZの関係を調べたところ、良い相関関係が得られた。今後、既往研究での関係式との比較を通じて手法の評価を行う。