日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW26] Hydrological processes of surface-groundwater interactions

2025年5月25日(日) 09:00 〜 10:30 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:劉 佳奇(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 環境システム学専攻)、ツァイ チサン(東京大学)、田嶋 智(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)、PINGYU CHANG(National Central University, Taiwan)、座長:劉 佳奇(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 環境システム学専攻)、ツァイ チサン(東京大学)、田嶋 智(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)、CHANG PINGYU(National Central University, Taiwan)

09:45 〜 10:07

[AHW26-04] 鉛直準二次元地表・地中流モデルを用いた地質や洪水規模の違いがモデル適用性にもたらす影響の分析

★招待講演

*普神 素良1市川 温1 (1.京都大学大学院工学研究科)

キーワード:リチャーズ式、降雨流出モデル、準二次元モデル、地質

洪水予測では、流域特性や洪水規模によらず高い精度での予測が可能な降雨流出モデルが求められる。我々はこれまで、鉛直二次元のリチャーズ式に基づき土壌中の飽和不飽和流を物理的に表現しつつ、斜面傾斜方向の動水勾配を斜面勾配で近似することでモデリングの簡略化を図る、鉛直準二次元地表・地中流モデル(以下、準二次元モデル)を開発してきた。準二次元モデルは、河川流域規模においても十分詳細な解像度で山地斜面表土層中の降雨流出現象を精緻に解析できる。準二次元モデルを京都・鴨川上流域に適用した先行研究では、観測された土壌物性値を用いることでパラメータ値の調整をおこなうことなく良好な再現性が得られることが確認された。
本研究では、日本各地の流域特性が異なる数十~約百km²の河川流域に準二次元モデルを適用し、同一の土層厚および土壌パラメータを用いて降雨流出計算をおこなった。そして、流域間の再現性の違いと地質との関連性、さらには洪水規模の違いがモデルの適用性に与える影響について分析した。
いくつかの流域における計算・観測ハイドログラフを図1に示す。花崗岩の割合が高い流域では他の流域と比べて、モデルの過大推定の傾向が顕著にみられた。花崗岩は風化によりマサ土と呼ばれる砂質土からなる厚い風化層を形成することが知られており、基岩の透水性や貯留効果が高いと考えられる。一方、現状のモデルでは基岩への浸透や損失が考慮されていないため、このような特性を持つ流域において計算流量が過大となり、再現性が低かったと考えられる。
図1で特に高い再現性が得られた滝沢ダム流域について、規模の異なる3つの洪水イベントの計算結果と観測データの比較を図2に示す。土層厚D=1.0 mの計算結果をみると、イベント総降水量が増加するにつれて、流量逓減部において観測値よりも計算値が過小となる方向に両者の差が広がることが分かる。流域によって程度の差はあるものの、ほぼすべての流域でこのような傾向がみられた。また、斜面の土層厚を1.6 mに増やして計算をおこなった結果、土層を厚くすると流量逓減が遅れる方向に計算流量が変化し、逓減部の計算値が観測値より小さかったイベントでは両者がよく合うようになった一方で、もともと計算値と観測値がよく合っていた総降水量の少ないイベントでは再現性が低下した。このことから、規模の異なる洪水イベント間の再現性の差は、モデルで考慮されている山地斜面表土層の流出機構だけでは説明が難しく、他の流出経路、具体的には地下水帯からの比較的遅い流出機構によりもたらされている可能性が示唆される。
以上より、山地域での洪水時の降雨流出過程において、山地斜面表土層だけでなく基岩への浸透および山体地下水の流出も重要なプロセスであると考えられる。今後は、検証流域を増やすことで地質特性の違いに起因するモデル適用性の違いをより詳細に分析するとともに、地下水流動機構のモデルへの導入により一般性の高い降雨流出モデルの実現を目指す。