日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW27] 流域圏生態系における生物多様性・栄養循環・物質輸送

2025年5月29日(木) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:奥田 昇(神戸大学)、石田 卓也(広島大学)、小林 政広(国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所 関西支所)、Paytan Adina(University of California Santa Cruz)、座長:奥田 昇(神戸大学)


09:45 〜 10:00

[AHW27-04] ため池表層水における二酸化炭素分圧の日周変動と季節変動

*宮下 直也1,2山本 彦3坂部 綾香3奥 勇一郎2伊藤 雅之3,2 (1.姫路科学館、2.兵庫県立大学、3.京都大学)

キーワード:ため池、二酸化炭素、日周変動、光合成、呼吸

湖沼や貯水池は二酸化炭素(CO2)のソース(e.g., Canadell and Monteiro, 2021)あるいは有機炭素のシンク(e.g., Tranvik et al., 2009)として知られており、炭素循環における重要な構成要素であると考えられている。陸水域における溶存CO2濃度やCO2分圧(pCO2)は日周変動をすることが知られているが(e.g., Martinez-Cruz et al., 2020)、数日程度の観測例から結論付けられたものであるため、日周変動の制御要因や長期的な傾向は明らかになっていない。pCO2は時刻によって数倍の変動があるため、陸水域からのCO2放出量を正確に推定するためにはこれを考慮する必要がある。そこで本研究は日本で最もため池が多い兵庫県において、ため池における溶存CO2濃度及びpCO2の日周変動と季節変動を明らかにすることを目的とした。
調査は2022年9月から2023年8月にかけて兵庫県姫路市の上池(湛水時面積約45,000 m2平均水深4.9 m)で行った。渓流が池に流入する地点から約50 m下流側に設置された桟橋付近(水深約1.5 m)において、光合成有効放射量(PAR)などの気象データや表層水温などの池の物理的環境の連続観測を行った。また、隔膜式CO2計を用いた溶存CO2濃度のインターバル(30分間隔)観測及び随時観測(いずれも週に3~5日)、採取した水試料の実験分析(クロロフィルの分光分析など)も実施した。取得した溶存CO2濃度及び水温からpCO2を計算した。インターバル観測によるpCO2を用いて、月ごとの平均日変化を算出してから、さらに3か月ごとに平均することで季節ごとの日周変動を調べた。
随時観測から、pCO2はクロロフィル濃度が高いほど低くなることが確認され、pCO2の変動は光合成によって制御されていると考えられた。季節ごとの日周変動の結果から、pCO2が日内の最大値(pCO2 max)に達する時刻及び最小値(pCO2 min)に達する時刻はいずれも夏に最も早く(5:00–5:30に最大、13:00–13:30に最小)、冬に最も遅かった(9:00–9:30に最大、17:00–17:30に最小)。pCO2 maxまたはpCO2 minは日平均水温・PARと季節によって異なる関係を示した。pCO2 maxは、①秋にいずれの要因とも有意な関係が見られず、②冬にいずれとも正の関係、③春に水温と負の関係、④夏に水温と負、PARと正の関係があった。pCO2 minは、①秋にいずれの要因とも負の関係、②冬に水温と正に関係、③春と夏に水温と負の関係があった。また、溶存CO2濃度の30分間変化量(ΔCO2)の平均日変化と各時刻の水温・PARの間には、①秋にいずれの要因とも負、②冬にPARと負、③春と夏に水温と正、PARと負の関係があった。pCO2 maxまたはpCO2 minとΔCO2は春と夏に水温から異なる影響を受けており、季節変化において水温上昇は溶存CO2濃度に負の影響を与える一方、日変化においては正の影響を与えることが示唆された。さらに、水温やPARが負に寄与することは光合成によるCO2の固定を意味し、水温が正に寄与することは呼吸によるCO2の増加を、PARが正に寄与することは光合成の光阻害(e.g., Neale and Richerson, 1987)あるいは有機物の光分解(e.g., Granéli et al., 1998)を意味すると考えられた。