日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW28] 水循環・水環境

2025年5月28日(水) 09:00 〜 10:30 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:濱 侃(千葉大学大学院園芸学研究院)、榊原 厚一(信州大学理学部理学科)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:榊原 厚一(信州大学理学部理学科)

09:15 〜 09:30

[AHW28-02] アルカリ塩湖によるCO₂固定量の推定: モンゴルBoon Tsagaan湖の例

*安 大鉉1、Shuukhaaz Ganbat1、Gankhurel Baasansuren1長谷部 徳子3落合 伸也3、Davaadorj Davaasuren2福士 圭介3 (1.金沢大学、2.モンゴル国立大学、3.金沢大学環日本海域環境研究センター)

キーワード:アルカリ塩湖、炭素循環、炭素固定、物質収支

地球史において岩石の風化は、大気のCO₂を除去する役割を果たしてきた。特に、MgやCaを含むケイ酸塩鉱物は溶解時に2価の陽イオンを溶出し、大気のCO₂を吸収する性質を有する。吸収されたCO₂は、流域の末端(主に海洋や湖沼)において炭酸塩鉱物として沈殿する(式1)。
CaSiO3+CO2CaCO3+SiO2 (1)
海洋におけるケイ酸塩鉱物の風化による生物学的炭酸塩沈殿で固定されるCO₂の量は年間0.13-0.17Gt/yearに達すると推定される (Zhang, et al., 2021)。人間活動による年間炭素排出量が約40Gtであることを考慮すると、海洋での岩石風化プロセスによる炭酸塩沈殿は、人間活動による炭素排出の約0.4%に相当する。海洋では生物学的作用による炭酸塩鉱物の生成が広く研究されているが、湖沼における炭酸塩鉱物の生成と炭素固定に関する研究は比較的少ない。
大陸内部の乾燥地域には、流入河川を有する一方、流出河川を持たない塩湖が多く存在する。なかでも、酸性物質の影響を受けていない塩湖はアルカリ化しており、アルカリ塩湖と呼ばれている。これらの塩湖では、流入河川から湖内へ塩が供給されるものの、流出河川が存在しないため、蒸発によって水位が維持され、湖内における塩が濃集する。その結果、無機的な鉱物生成が生じる。 (Fukushi, et al., 2020)と (Zeyen, et al., 2021)の研究によると、大陸内部のアルカリ塩湖ではカルシウムやマグネシウムの炭酸塩鉱物生成が普遍的に生成されていることが示されている。アルカリ塩湖においては、流出河川の不在及び水の蒸発によって、流入するイオンが蓄積し、炭酸塩が沈殿することが明らかになっている。炭酸塩の沈殿プロセスによりCO₂が固定されることが知られているものの、単位時間あたりの炭酸塩生成量や、地球炭素循環における寄与量に関する定量的な検討は十分に行われていない。本研究では、モンゴルのBoon Tsagaan湖(BTS湖)を対象として、物質収支の観点からアルカリ塩湖が単位時間あたりにどの程度のCO₂を固定するのかを推定することを目的とする。