日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW28] 水循環・水環境

2025年5月28日(水) 13:45 〜 15:15 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:濱 侃(千葉大学大学院園芸学研究院)、榊原 厚一(信州大学理学部理学科)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)

13:45 〜 14:00

[AHW28-12] 硫化鉱物・硫酸塩鉱物の溶解・析出サイクルによる強酸性水の継続プロセスの解明

*柳澤 良亮1榊原 厚一1角野 浩史2、高橋 康1福島 菜奈絵2、山本 淳一3江島 輝美1 (1.信州大学理学部理学科、2.東京大学先端科学技術研究センター、3.長野県総合教育センター)


キーワード:水–岩石相互作用、強酸性、溶出試験、3H–3He法

強酸性湧水の形成・継続は水質汚染の要因となるため,問題視されている.水の酸性化は様々な要因で生じるが,水と鉱物の反応による酸性化はその代表例である.しかし,水と鉱物の反応による酸性化プロセスは,水と鉱物の接触時間,鉱物種,鉱物の組み合わせ,酸性化の要因となる鉱物の形成環境によって反応が異なるため,未解明な要素が多い.そこで本研究では,熱水変質域から強酸性水が湧水する毒沢鉱泉を対象とし,強酸性化を引き起こす要因となる鉱物や環境要因の影響を議論することで,鉱物による水の強酸性化の素過程を解明することを目的とした.
 毒沢鉱泉源泉および周辺の沢で地質踏査及び岩石・水試料採取を実施した.岩石試料は,鉱物の組織観察,組成分析,鉱物同定を実施した.水試料は,主要イオン濃度,希ガス同位体比(3He/4He,4He/20Ne)を分析し,3H-3He法により毒沢鉱泉地域の地下水の滞留時間推定を行った.また, 析出実験として水試料を蒸発させることで水から析出する鉱物を調べた. さらに,溶出実験として岩石試料を超純水に浸し,10分間でのpHおよびECの変化と溶出する元素分析を行うことで,強酸性化を引き起こしている鉱物を調べた.
 毒沢鉱泉源泉に分布する変質岩石からは黄鉄鉱や粘土鉱物,ジャロサイト,リューコキシンおよび少量の酸化銀が存在する.これらの鉱物は,過去の熱水変質により形成したものであり,この中の黄鉄鉱とジャロサイトは強酸性化の要因となる鉱物として知られている.また変質岩石表面は黄色を呈し,鉱物粒子間には微細な硫酸塩鉱物が存在する.析出実験の結果,毒沢鉱泉の水試料からはメタボルノ石およびアルノーゲンが析出した.このことから,岩石表面に存在する微細な硫酸塩鉱物は強酸性水から析出したメタボルノ石およびアルノ―ゲンである可能性が高いと考えられる。変質岩石の溶出実験の結果は,短時間での急激なpH低下とECの上昇を示した.このことは,毒沢鉱泉の岩石に多量の硫酸塩鉱物を含んでおり,雨水が岩石に浸透する強酸性反応の初期段階では,溶解性の高い硫酸塩鉱物の溶解が支配的であることを示している.
 本研究結果により.毒沢鉱泉では,過去の熱水変質により形成した黄鉄鉱と硫酸塩鉱物が溶解することで,水の強酸性化が始まったと考えられる.その後,強酸性水の蒸発により硫酸塩鉱物が水から析出し,天水により再溶解する.この溶解と析出のサイクルを繰り返すことで,毒沢鉱泉では現在まで水の強酸性化が維持されていると考察した.