日本地球惑星科学連合2025年大会

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[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW28] 水循環・水環境

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:濱 侃(千葉大学大学院園芸学研究院)、榊原 厚一(信州大学理学部理学科)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)

17:15 〜 19:15

[AHW28-P20] 遠賀川流域における主要溶存成分からみた河川水の水質特性とその形成要因

*花田 心吾1 (1.駒澤大学 人文科学研究科 地理学専攻)

キーワード:主要溶存成分、硫酸イオン、クラスター分析、遠賀川、筑豊炭田

福岡県の筑豊地域を流れ響灘に注ぐ遠賀川は,流域内の自治体や北九州市の水源としての役割を果たしている.遠賀川流域の水質に関する懸念としては,(1)九州の一級水系の中では最も高い人口密度に対して流域内の自治体の下水道人口普及率,汚水処理人口普及率が低いこと,(2)河口堰をはじめとした堰での河川水の滞留による藻類の増殖,(3)水田などの農地からの栄養塩などの流出,(4)流域内各所に残存する採掘坑跡や,石炭を選炭した際に残った岩石や粗悪な石炭を積み上げたボタ山の存在などが挙げられる.水質の特徴やその形成要因を明らかにすることは,水環境の改善や河川の管理に不可欠である.しかし,流域内の河川における水質の特徴とその形成要因は明らかになってないのが現状である.
本研究では遠賀川流域の河川水の主要溶存化学成分の濃度及び組成,空間分布などの特性を明らかにする.さらに水質の分析結果をもとに観測地点を起点とした小流域ごとに因子を検討し,水質組成の形成要因の推定を試みる.
主要溶存成分8項目の当量濃度の値を用いてウェード式によるクラスター分析を行った.クラスター分析の結果のもと,水質タイプを大まかに3つのグループに分けた. 1つ目はカルシウム-重炭酸型で溶存成分量が少ないグループ(Group A),2つ目は前述のものよりも溶存成分量が多く,組成はカルシウム-重炭酸型とナトリウム-重炭酸型の2パターンに細分された(Group B). 3つ目は最も溶存成分量が多いグループ(Group C)である.主にカルシム(またはナトリウム)-硫酸型のものが多いが,ナトリウム-塩化物型,ナトリウム-重炭酸型のものもそれぞれ1地点ずつある.
カルシウム-重炭酸型(Group A)は一般的な河川の組成で,上流部に多く分布していた.そのことから人為的な影響がほとんどないタイプと考えられる.Group Bは都市よりも下流に多く分布している. Group Cは流域の東側を流れる彦山川の支流にはみられなかった.硫酸イオンは火山や温泉のある地域で検出されることが多いが,遠賀川流域にそのようなものほとんど存在しない.山下(1989)では,筑豊炭田における採掘坑跡で湧出した水にgroup Cと同じような硫酸型のものが多くあったことが報告されている。したがって,石炭産業終焉後50年近く経った現在でも,遠賀川流域の水質には採掘坑跡やボタ山からの浸出水が影響を及ぼしていることが推定される.しかし,炭坑跡が多く分布する英彦山川隆起にGroup Cに分類されて地点が認められない理由は,現時点で不明である。