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[AHW29-P01] 粘着性を有する堤防の決壊進行過程とそれに伴う氾濫原の地形変化に関する実物大水理実験
キーワード:堤防決壊、粘着性土、氾濫原、クレバススプレー
1. はじめに
河川が氾濫すると、浸水被害が発生する。また、堤防が決壊に至ると氾濫流量が増大し、浸水被害が拡大する。さらに、氾濫流が激しくなると、浸水に加え氾濫原の侵食や堆積も発生し、被害がより拡大する。令和元年の東日本台風の際にも、氾濫原での土砂堆積により、浸水が解消した後も堆積土砂の除去作業を行う必要があり、復旧にかかる時間や費用が増大したと報告されている。1)しかし、堤防の決壊進行過程は十分に解明されておらず、特に砂礫土の堤防に比べ粘着性を有する堤防に関する知見は少ない。2)また、河道内に比べ、氾濫原の地形変化を定量的に研究した事例は少ない。そこで、本研究では、これらの現象を明らかにすることを目的に、実物大の堤防決壊実験を実施し、粘着性を有する堤防の決壊進行過程とそれに伴う氾濫原の地形変化を観察した。
2.方法
本研究では、北海道の十勝川にある千代田実験水路3)にて実験を行った。Figure1 に実験箇所の全景を示す。堤防の高さは2.5m、天端幅は2m、法勾配は2割、長さは30m であり、その背後には長さ70m、幅30m、勾配1/500 の氾濫原を設けた。
決壊実験は以下の手順で実施した。(A)最初は流量を概ね一定に保ち、その後通水を一時停止し地形を計測した。(B)次に流量を増加させ、約6時間後に堤防が決壊した。堤防材料は細粒分を40%程度含む粘着性を有した土、河床材料は砂礫であった。計測項目は、水位、流速、地形計測を行い、ビデオによる流況撮影も実施した。
3.結果
3.1 粘着性を有する堤防の決壊進行過程
決壊の進行過程は以下の3段階に分類できることが確認された。
①越水による裏法面の侵食段階:河川水が堤防天端から越水すると、堤防裏法面が段状に侵食された。
②決壊発生:堤防裏法面の侵食が進み、天端が表法肩付近まで侵食された。この結果、堤防の断面積が小さくなり安定性が低下し、表法面が急速になくなって決壊に至った。
③決壊口の拡大: Figure2に決壊幅の時間変化を示す。堤防材料は粘着性を有しているため、表層土が徐々に掃流されていくのではなく、粘性土堤防の河岸侵食4)と同様に、まず基盤の砂礫が侵食され、次いで上部の堤防が1~2m程度の塊状に崩落することで決壊が進行したと考えられる。
3.2 氾濫原の地形変化(クレバススプレー)
決壊に伴い、氾濫原の地形変化が確認された。Figure 3に地形変化と流速の様子を示す。実験初期段階では、氾濫原において数cm 程度の堆積が見られるのみであった。 決壊後には、堤防直下から下流方向へ落堀が形成され、その外側に舌状に砂礫が堆積した。さらにその後方には、細粒土の堆積が確認され、最大1m 程度の堤防材料からなる土塊も散乱していた。流速に応じた土砂の分級によってこれらの地形変化が生じたと考えられる。
4. 結論
本研究から、粘着性を有する堤防の決壊は越水による裏法面侵食、決壊発生、決壊口の拡大という3段階を経て進行し、それに伴い氾濫原で地形が変化することが確認された。今後はより詳細に水理条件の分析を行うとともに、実災害事例との比較を通じて、氾濫原を含めた防災対策の検討にいかしていきたい。
謝辞
本研究を行うにあたり、十勝川千代田実験水路等アドバイザー委員会と同実験検討会より、多くの助言を頂いた。ここに記して謝意を表します。
参考文献
1)川池健司, 武田誠, 豊田政史, 余川弘至, 山野井一輝, 中川一:氾濫流による土砂堆積に着目した千曲川決壊氾濫の現地調査と数値解析,土木学会論文集B1(水工学),Vol.76,No.2,pp.I_883-I_888,2020.
2) ASCE/EWRI Task Committee on Dam/Levee Breaching: Earthen embankment breaching, J. Hydraul. Eng., 137(12), 1549–1564, 2011.
3) Experiment on a Levee Breach from Overtopping at the World’s Largest Experimental Channel, https://www.ceri.go.jp/news/2024GEWEX_Shimada.pdf (See 2025-02-06)
4) K. Zhang, Z. Gong, K. Zhao, K. Wang, S. Pan, G. Coco: Experimental and numerical modeling of ov erhanging riverbank stability, Journal of Geophysical Research-Earth Surface 126(10), 2021.
河川が氾濫すると、浸水被害が発生する。また、堤防が決壊に至ると氾濫流量が増大し、浸水被害が拡大する。さらに、氾濫流が激しくなると、浸水に加え氾濫原の侵食や堆積も発生し、被害がより拡大する。令和元年の東日本台風の際にも、氾濫原での土砂堆積により、浸水が解消した後も堆積土砂の除去作業を行う必要があり、復旧にかかる時間や費用が増大したと報告されている。1)しかし、堤防の決壊進行過程は十分に解明されておらず、特に砂礫土の堤防に比べ粘着性を有する堤防に関する知見は少ない。2)また、河道内に比べ、氾濫原の地形変化を定量的に研究した事例は少ない。そこで、本研究では、これらの現象を明らかにすることを目的に、実物大の堤防決壊実験を実施し、粘着性を有する堤防の決壊進行過程とそれに伴う氾濫原の地形変化を観察した。
2.方法
本研究では、北海道の十勝川にある千代田実験水路3)にて実験を行った。Figure1 に実験箇所の全景を示す。堤防の高さは2.5m、天端幅は2m、法勾配は2割、長さは30m であり、その背後には長さ70m、幅30m、勾配1/500 の氾濫原を設けた。
決壊実験は以下の手順で実施した。(A)最初は流量を概ね一定に保ち、その後通水を一時停止し地形を計測した。(B)次に流量を増加させ、約6時間後に堤防が決壊した。堤防材料は細粒分を40%程度含む粘着性を有した土、河床材料は砂礫であった。計測項目は、水位、流速、地形計測を行い、ビデオによる流況撮影も実施した。
3.結果
3.1 粘着性を有する堤防の決壊進行過程
決壊の進行過程は以下の3段階に分類できることが確認された。
①越水による裏法面の侵食段階:河川水が堤防天端から越水すると、堤防裏法面が段状に侵食された。
②決壊発生:堤防裏法面の侵食が進み、天端が表法肩付近まで侵食された。この結果、堤防の断面積が小さくなり安定性が低下し、表法面が急速になくなって決壊に至った。
③決壊口の拡大: Figure2に決壊幅の時間変化を示す。堤防材料は粘着性を有しているため、表層土が徐々に掃流されていくのではなく、粘性土堤防の河岸侵食4)と同様に、まず基盤の砂礫が侵食され、次いで上部の堤防が1~2m程度の塊状に崩落することで決壊が進行したと考えられる。
3.2 氾濫原の地形変化(クレバススプレー)
決壊に伴い、氾濫原の地形変化が確認された。Figure 3に地形変化と流速の様子を示す。実験初期段階では、氾濫原において数cm 程度の堆積が見られるのみであった。 決壊後には、堤防直下から下流方向へ落堀が形成され、その外側に舌状に砂礫が堆積した。さらにその後方には、細粒土の堆積が確認され、最大1m 程度の堤防材料からなる土塊も散乱していた。流速に応じた土砂の分級によってこれらの地形変化が生じたと考えられる。
4. 結論
本研究から、粘着性を有する堤防の決壊は越水による裏法面侵食、決壊発生、決壊口の拡大という3段階を経て進行し、それに伴い氾濫原で地形が変化することが確認された。今後はより詳細に水理条件の分析を行うとともに、実災害事例との比較を通じて、氾濫原を含めた防災対策の検討にいかしていきたい。
謝辞
本研究を行うにあたり、十勝川千代田実験水路等アドバイザー委員会と同実験検討会より、多くの助言を頂いた。ここに記して謝意を表します。
参考文献
1)川池健司, 武田誠, 豊田政史, 余川弘至, 山野井一輝, 中川一:氾濫流による土砂堆積に着目した千曲川決壊氾濫の現地調査と数値解析,土木学会論文集B1(水工学),Vol.76,No.2,pp.I_883-I_888,2020.
2) ASCE/EWRI Task Committee on Dam/Levee Breaching: Earthen embankment breaching, J. Hydraul. Eng., 137(12), 1549–1564, 2011.
3) Experiment on a Levee Breach from Overtopping at the World’s Largest Experimental Channel, https://www.ceri.go.jp/news/2024GEWEX_Shimada.pdf (See 2025-02-06)
4) K. Zhang, Z. Gong, K. Zhao, K. Wang, S. Pan, G. Coco: Experimental and numerical modeling of ov erhanging riverbank stability, Journal of Geophysical Research-Earth Surface 126(10), 2021.