日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW31] 都市域の水環境と地質

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:林 武司(秋田大学教育文化学部)、宮越 昭暢(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

17:15 〜 19:15

[AHW31-P01] 首都圏の地下温度長期観測に認められた地下温暖化―低透水層内の温度変化の特徴と要因

*宮越 昭暢1林 武司2濱元 栄起3八戸 昭一3 (1.国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門、2.秋田大学教育文化学部、3.埼玉県環境科学国際センター)

キーワード:地下温度、地下水流動、地下温暖化、都市化,地下インフラ,首都圏、地下インフラ、首都圏

首都圏は世界有数の人口規模を有するメガシティであり,首都圏の中心である東京での気温の上昇は世界のメガシティのなかでも顕著である。筆者らは,このような都市に特有の熱環境や,地球温暖化・気候変動の進行,都市域の地下水利用の変遷が地下環境に及ぼす長期的な影響を把握するため,首都圏のうち山梨県を除く1都5県を対象として,平野部に整備されている地盤沈下・地下水位観測井網(以下,観測井)を活用して地下温度の観測を継続的に実施している。これまで東京都および埼玉県では,2000年から現在まで地下温度プロファイルを繰り返し観測するとともに,2007年(埼玉県内4地点)および2012・2013年(東京都内6地点)から地下温度の高精度モニタリングを実施し,地下温度の連続的かつ微細な変化と,都市化の程度(都心部-近郊―郊外)や深度による温度変化の違いを調査してきた。この結果,多くの地点において,地下浅部を中心に継続的に地下温度が上昇していることが明らかとなってきた。地下温度分布とその経年的な変化には明瞭な地域差が認められ,都心部では郊外よりも相対的に高温を示し,かつ温度上昇率が大きい。首都圏の地下温暖化は,各地における土地利用の変化,都市化に伴う地表面や地下浅部の温度上昇と,地下水利用を反映した広域スケールでの地下水流動,さらに地球温暖化の複合的な影響によって進行していると考えられる(宮越ほか,2019など)。このように複雑性を有する都市域地下熱環境の評価において,本発表では低透水層における地下温暖化に着目し,その特徴を報告する。低透水層中では地下水流動に伴う熱移流の影響が相対的に小さいと期待できるため,地表面や地下構造物等からの熱伝導の影響を評価するのに適している。
荒川低地内の2地点の地下温度プロファイルには,深度30~50mに地下温度の極小値が認められ,この極小値よりも浅部の沖積粘性土層内において顕著な温度上昇が確認された。ただし,深度20mにおける2003~2024年の温度上昇量は東京湾側(東京都江東区)の観測井で約0.4℃,内陸側(埼玉県川口市)の観測井で約0.7℃であり,地域差が認められた。また,この期間の地下温度の長期変化傾向(トレンド)は一様ではない。沖積粘性土層中の温度上昇の主たる要因は地表面付近の熱と考えらえるが,地下温暖化の地域差の要因としては,都市化の度合いや進行の時間的な違いが考えられた。一方,都心部・台地(東京都目黒区)や東京港埋立地(東京都江東区)に位置する観測井では,深度20mおよび40mなど地表面近傍ではない特定の深度において極大値を示す特異な地下温度プロファイルが確認された。これらの地下温度上昇量は、地表面の熱の影響による地下温暖化よりも数~十倍程度大きい。観測井周辺の地下インフラ等からの排熱が温度上昇の主たる要因であり,地下温暖化トレンドの変化は,これら地下構造物の設置や利用状況と関係していると考えられた。これらの結果は,都市域における地下温暖化が都市化や地球温暖化に伴う地表面温度上昇の影響だけでなく,地下開発の影響を大きく受け得ることを示すものであり,両者の寄与の度合いを評価することで,都市域における地下温暖化メカニズムの解明が期待できる。
本研究は,産業技術総合研究所・秋田大学・埼玉県による共同研究の一環として実施したものであり,一部はJSPS科研費22K12410,22K05012の助成を受けた。