日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW31] 都市域の水環境と地質

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:林 武司(秋田大学教育文化学部)、宮越 昭暢(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

17:15 〜 19:15

[AHW31-P03] 都市の地下水から検出された花粉はなにを物語るのか?―東京都品川区の浅層地下水を例にー

*安原 正也1、米林 仲1伊東 優希2李 盛源1 (1.立正大学地球環境科学部、2.立正大学・院)

キーワード:東京、都市地下水、花粉、虫媒花、地下水涵養源、下水漏水

日本有数の人口密集地帯である東京都品川区北品川地区の浅層地下水から多種多様な花粉が検出された.2021年8月の地下水からの花粉の産状を報告するとともに,都市地下水中にこのような花粉がもたらされたプロセスについて議論する.
当該井戸は深さ9.1 m,直径約10 cmの打ち込み式の井戸である.井戸パイプの上端には常時蓋がしてあることから,空中花粉が井戸内部に侵入する可能性はない.地層は砂質シルトやシルト・粘土質砂などの互層からなり,2021年8月には地下水面は地表面下0.9 mにあった.付近の下水道本管の埋設深度は地表面下1.2-1.9 mである.北品川地区の地表面はその90 %程度が建築物やアスファルトで被覆されており,降水の浸透可能域は面積的に限られる.
テフロン製のベーラーを用いて当該井戸の地下水面下1-2 mから地下水を採水し,約1 mLに蒸発濃縮したのち花粉を同定したところ,地下水1 L中に38個の花粉が検出された.同定した花粉の総数を基数として各花粉分類群の出現率を求めたところ,スギ属34.2 %,コナラ属コナラ亜属14.5 %,マツ属6.6 %と,基本的には通年の空中花粉が流れ込んだと考えて矛盾のない結果であった.ただし,虫媒のアブラナ科が10.5 %と,通常の空中花粉組成ではみられない高率を示したことは注目に値する.
ここで,2021年8月の当該井戸の地下水については,Cl-濃度と水の酸素同位体比に基づく混合解析により,その52 %が雨水起源,また48 %が汚水(し尿と家庭雑排水)起源と推定されている(伊東ほか,2022).地表面の被覆率の高さや低透水性の(平均間隙径が小さい)地質から判断すると,地表面から地中に浸入した花粉が通気帯を通過して地下水へ大量にもたらされるとは考えにくい.むしろ,道路面などに溜まっていた花粉が,雨水とともに雨水管(取り付け管)中を下水道本管へと排水される過程で,雨水管の地下破損部からの漏水を通じて地下水に直接もたらされるというプロセスが想定される.また,虫媒のアブラナ科の花粉が高い割合で検出された事実は,汚水管(取り付け管)からの地中漏水を通じて糞便中のブロッコリーやカリフラワーなどの花粉が地下水に負荷されるというプロセスを強く示唆する.