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[AHW31-P07] 千葉県九十九里沿岸地域における塩淡境界を対象とした多種物理探査の調査速報
キーワード:九十九里平野、塩淡境界、電磁探査、微動アレイ探査、マイクログラビティ探査
【研究背景および概要】
沿岸地域では内陸から海岸に向かって流動する地下水(以下、淡水)と海洋から内陸部に向かって流動する海水(以下、塩水)に複雑な流動様式があることが多数の研究で報告されている(例えば、丸井、林(2001)など)。沿岸地域における塩水の存在は飲料や工業用水としての井戸水の利用や地下浅部の建造物の基礎地盤の腐食といった課題の要因となる。このため、沿岸地域における塩水の流動領域の解釈が必要とされている。
本研究では非接触で地下の物理特性を推定する物理探査手法に着目し、塩水と淡水の境界域の推定を試みた。物理探査手法のうち密度構造を推定する重力探査法、比抵抗構造を推定する時間領域電磁探査法(以下、TDEM)、S波速度構造を推定する微動探査法の3種の手法で観測を実施した。本報告では微動探査実施時に並行して実施された複数機材の観測結果の比較、重力探査およびTDEMの観測データの概況を紹介する。
【調査地域および物理探査手法】
調査地域として千葉県山武市の九十九里沿岸地域を選定し、重力探査、TDEMおよび微動探査を実施した。データ取得は第一次調査を2024年8月23日~8月29日、第二次調査を2024年9月18日~24日にかけて実施した。観測点配置をFig.1(A)に示す。
重力探査は、シントレックス社の相対重力計CG-6を用いて観測を実施した。計測範囲は北西―南東方向に長軸6km、短軸500mの矩形範囲とし、500m間隔の概査および50m間隔の精査を道路や農道に沿って計75点取得した。TDEMはABEM社のGroundTEM10iを用いて、送信ループ20m×20m、1回巻、受信ループ3m×3m、4回巻のセントラルループ配置による観測を重力探査測線に沿って計10点実施した。微動探査は、TDEMを実施した箇所においてレナーツ社のLE-3D Lite地震計(レナーツ地震計)を使用して大三角形アレイ30m、小三角形アレイ15mの正三角形アレイ、L字アレイ配置等により1観測点あたり60分以上の測定を行い、計7地点でデータ取得を実施した。一部の地点では、LE-3D Lite地震計と同一地点においてSmartSolo社製 IGU-BD3C-5地震計(SmartSolo地震計)によるデータ取得を並行して実施し、比較を行った。
【速報と今後の課題】
微動探査では、レナーツ地震計およびSmartSolo地震計ともに概ね類似した波形が取得された(Fig.1(B))。また、観測データの特徴として低周波側の振幅スペクトルが卓越している。これは海岸が近いことによる波浪の影響が観測されたことを示唆している。
重力探査により取得した観測データに対して各種補正やフィルタ処理を適用し、ブーゲー異常分布を推定した(Fig.1(A))。本観測では50 m, 500 m間隔で観測したため、既往の広域重力点の結果と比較して空間分解能の向上を確認できる。
TDEMでは受信コイルで取得された過渡応答を用いてFitterman(1989)の式でLate Timeの見かけ比抵抗を算出し、A.I.Ammaret al.(2021)によるEquivalent Depthへの換算結果を行なった。Fig.1(C)より海岸からの距離によって見かけ比抵抗が変化することを確認できる。
今後は3種の物理探査手法それぞれの解析から塩水―淡水領域の比較と解釈を実施予定である。探査手法ごとに異なる空間、深度分解能の違いを考慮した複数の物性情報の比較および塩水―淡水領域の解釈が期待される。解析結果を基に、3次元地質構造の推定に貢献していきたい。
【引用文献】
丸井敦尚, 林武司(2001) 塩淡境界面の三次元的形状把握に関する研究, 資源素材学会, 資源と素材Vol117 pp. 816-821
Mitsuhata他(2006) Various-scale electromagnetic investigations of high-salinity zones in a coastal plain, Society of Exploration Geophysicist, Geophysics VOL71, NO6
A.I.Ammar他(2021) Applying of SP, DC-Resistivity, DC-TDIP and TDEM soundings in high saline coastal aquifer, Heliyon, Volume7, Issue7
沿岸地域では内陸から海岸に向かって流動する地下水(以下、淡水)と海洋から内陸部に向かって流動する海水(以下、塩水)に複雑な流動様式があることが多数の研究で報告されている(例えば、丸井、林(2001)など)。沿岸地域における塩水の存在は飲料や工業用水としての井戸水の利用や地下浅部の建造物の基礎地盤の腐食といった課題の要因となる。このため、沿岸地域における塩水の流動領域の解釈が必要とされている。
本研究では非接触で地下の物理特性を推定する物理探査手法に着目し、塩水と淡水の境界域の推定を試みた。物理探査手法のうち密度構造を推定する重力探査法、比抵抗構造を推定する時間領域電磁探査法(以下、TDEM)、S波速度構造を推定する微動探査法の3種の手法で観測を実施した。本報告では微動探査実施時に並行して実施された複数機材の観測結果の比較、重力探査およびTDEMの観測データの概況を紹介する。
【調査地域および物理探査手法】
調査地域として千葉県山武市の九十九里沿岸地域を選定し、重力探査、TDEMおよび微動探査を実施した。データ取得は第一次調査を2024年8月23日~8月29日、第二次調査を2024年9月18日~24日にかけて実施した。観測点配置をFig.1(A)に示す。
重力探査は、シントレックス社の相対重力計CG-6を用いて観測を実施した。計測範囲は北西―南東方向に長軸6km、短軸500mの矩形範囲とし、500m間隔の概査および50m間隔の精査を道路や農道に沿って計75点取得した。TDEMはABEM社のGroundTEM10iを用いて、送信ループ20m×20m、1回巻、受信ループ3m×3m、4回巻のセントラルループ配置による観測を重力探査測線に沿って計10点実施した。微動探査は、TDEMを実施した箇所においてレナーツ社のLE-3D Lite地震計(レナーツ地震計)を使用して大三角形アレイ30m、小三角形アレイ15mの正三角形アレイ、L字アレイ配置等により1観測点あたり60分以上の測定を行い、計7地点でデータ取得を実施した。一部の地点では、LE-3D Lite地震計と同一地点においてSmartSolo社製 IGU-BD3C-5地震計(SmartSolo地震計)によるデータ取得を並行して実施し、比較を行った。
【速報と今後の課題】
微動探査では、レナーツ地震計およびSmartSolo地震計ともに概ね類似した波形が取得された(Fig.1(B))。また、観測データの特徴として低周波側の振幅スペクトルが卓越している。これは海岸が近いことによる波浪の影響が観測されたことを示唆している。
重力探査により取得した観測データに対して各種補正やフィルタ処理を適用し、ブーゲー異常分布を推定した(Fig.1(A))。本観測では50 m, 500 m間隔で観測したため、既往の広域重力点の結果と比較して空間分解能の向上を確認できる。
TDEMでは受信コイルで取得された過渡応答を用いてFitterman(1989)の式でLate Timeの見かけ比抵抗を算出し、A.I.Ammaret al.(2021)によるEquivalent Depthへの換算結果を行なった。Fig.1(C)より海岸からの距離によって見かけ比抵抗が変化することを確認できる。
今後は3種の物理探査手法それぞれの解析から塩水―淡水領域の比較と解釈を実施予定である。探査手法ごとに異なる空間、深度分解能の違いを考慮した複数の物性情報の比較および塩水―淡水領域の解釈が期待される。解析結果を基に、3次元地質構造の推定に貢献していきたい。
【引用文献】
丸井敦尚, 林武司(2001) 塩淡境界面の三次元的形状把握に関する研究, 資源素材学会, 資源と素材Vol117 pp. 816-821
Mitsuhata他(2006) Various-scale electromagnetic investigations of high-salinity zones in a coastal plain, Society of Exploration Geophysicist, Geophysics VOL71, NO6
A.I.Ammar他(2021) Applying of SP, DC-Resistivity, DC-TDIP and TDEM soundings in high saline coastal aquifer, Heliyon, Volume7, Issue7