日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS14] 陸域海洋相互作用ー惑星スケールの物質輸送

2025年5月26日(月) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:山敷 庸亮(京都大学大学院総合生存学館)、升本 順夫(東京大学大学院理学系研究科)、Behera Swadhin(Climate Variation Predictability and Applicability Research Group, Application Laboratory, JAMSTEC, 3173-25 Showa-machi, Yokohama 236-0001)、佐々木 貴教(京都大学 大学院理学研究科 宇宙物理学教室)、座長:升本 順夫(東京大学大学院理学系研究科)、Behera Swadhin(Climate Variation Predictability and Applicability Research Group, Application Laboratory, JAMSTEC, 3173-25 Showa-machi, Yokohama 236-0001)

11:00 〜 11:15

[AOS14-08] 人工重力施設内の水流挙動を対象とする水理模型実験

*山上 路生1山敷 庸亮2、大野 琢也2,3、大浜 大3、三浦 勉1、達山 康人1、中本 幹大1 (1.京都大学防災研究所、2.京都大学大学院総合生存学館、3.鹿島建設株式会社)

キーワード:人工重力施設、水理模型実験、月面居住環境、火星居住環境

ルナグラス、マーズグラス構想は、人工重力を利用する月面と火星の居住施設で、鹿島建設株式会社と京都大学が共同で研究を進めている。これらの外観は、2次曲線を回転させた形状である。鉛直軸を中心に回転することで、遠心力が発生し、内壁の一部領域に1Gの領域が創出する。湖沼のや人工水路のような水域を作ることが計画されているが、回転によるコリオリ力の影響を検討する必要がある。
 本研究では、第1段階として卓上装置により、複数種類の予備実験を行った.マーズグラスを想定し、直径約20cmの調理用ボウルを回転体模型に用いた。これを電動ろくろに載せて1Hz(1回転/秒=60回転/分)で回転させた。模型の上方にビデオカメラを設置し、回転場を視点とする流れの流況を撮影した。可視化のために模型にペンキで着色した水を入れた。流速分布をPIV法(Particle Image Velocimetry)によって評価した。PIVでは、撮影画像に一定の大きさの検査窓を設ける。計測点における検査窓の輝度パターンが、次の時刻の画像内でどの場所に現れるかを相関係数の計算により求める。この方法では、多点の流速計測を同時に行える利点があり、乱流渦の観察や定量評価が可能となる。
 回転させると遠心力により水は模型の外淵の方に集まり、外側で水位が上昇し、内側では下降する。本研究の水理条件では、静止時の外淵水深は2.3cmであるが、回転時には4.0cmまで上昇する。一方で模型の中心では水位が低下する。水面に浮遊性のトレーサー粒子を散布して流速分布を計測した。回転開始の5秒後では、水面領域の大部分で大きな流速が観察された。一方で、時間とともにボウルの外淵付近では流れがほとんどなくなっている。これは水の粘性の存在によって、ボウルが水を引きずった結果である。この粘性の効果が時間とともに中心部に伝わり、40秒後では水面全体で水が静止しすることがわかった。
 2つ目の実験として、5cm長の金属プレートを模型内に設置して長時間回転させた。観察結果から、このような物体が存在しても、回転場の視点では水が静止してみえることが確認できた。回転させると、遠心効果で水面形状は変化するが、水は静止することがわかった。
 3つ目の実験では、小型の水中ポンプをボウルに設置した。水流ポンプによって噴流が形成される。静止場(非回転場)では、左右対象の大きな循環が形成された。一方で回転させると回転方向とは反対方向の循環が顕著となり、静止場と様相が大きく異なる。これはコリオリ効果によるものである。回転場で一定流速をもつ流れが生じるとコリオリ力によって、流向が変化することに注意が必要である。回転体内に、人工水路、人工造波などを設計する際にはコリオリ効果は重要である。
 以上は水面流の観察であるが、今回のPIVでは水面の凹凸を考慮せずに、流速解析を行っている。実際には水面形状を考慮した補正が必要であり、これについては今後の課題とする。また、今後の展開では、水面下の流速構造の解明にはレーザーシートを用いる。レーザーシートを上方から水中へ照射し、高速カメラで撮影すれば原理的に可能である。現在、京都大学宇治川オープンラボラトリーで計画している直径2~3mの大型回転模型では、スリップリングを使って、有線接続の高速カメラを回転場に設置できるよう検討している。