16:00 〜 16:15
[AOS17-09] 鯨遺骸分解に伴う表層堆積物中の微生物群集の時空間的変化
キーワード:鯨骨群集、微生物叢、16S rRNA遺伝子
鯨類に代表される海洋大型脊椎動物遺骸は,海底,特に深海底においてはスポット的にもたらされる巨大な有機物塊であり,多くの海洋生物によって餌・エネルギー資源もしくは固着基盤などの形で利用されている.このような大型脊椎動物遺骸を取り巻く有機物の一部は周囲の堆積物中にも拡散され,周辺の環境や生態系にも影響を与えることが考えられる.しかし,大型脊椎動物遺骸からの有機物拡散の具体的な実態は明らかになっていない.また,主に有機物の分解を担う微生物に関しても研究例が少なく,大型脊椎動物遺骸の有機物分解に伴い周辺堆積物中の微生物群集がどのように変化するか,その過程を詳細に追った研究はこれまでにない.
そこで本研究では,鯨類遺骸を人為的に海中に沈設し,その分解過程に伴う周辺堆積物に含まれる有機物量およびその安定炭素同位体比の変動,およびそれらに伴う微生物群集の変化を調査した.鯨遺骸は肉部分をおおまかに除去し骨のみにした状態で,2023年8月に石川県能登半島九十九湾金沢大学臨海実験施設沖の水深約15 mの海底に設置し,その後約3カ月間にわたり定期的な表層堆積物サンプリングを行った.堆積物のサンプリングは遺骸から1 mの範囲で水平方向に一定間隔で採取を行い,堆積物中に含まれる全有機炭素量(TOC)およびその有機炭素の安定炭素同位体比(δ13C vs. VPDB)の測定を行った.また,16S rRNA遺伝子を用いて,各堆積物サンプル中の微生物群集解析を行った.
その結果,遺骸を沈設してから1-2週間ほどで遺骸直下の堆積物に影響がみられるようになり,沈設から3か月後まで継続して堆積物中のTOCが1.5wt%を超え,バックグラウンド値と比較して高い状態を維持していた.δ13C値は遺骸沈設1カ月後から値の変動が見られ,バックグラウンド値と比較しやや低い値(−22.5‰)となった.遺骸の影響が確認できたのはTOC・δ13C値ともに遺骸から50 cmまでの範囲であった.
微生物群集に関しても,主な変化が見られたのは遺骸から50 cmの範囲であった.硫酸還元菌(SRB)に着目すると,SRBは遺骸からの距離に応じた変化が大きく,全体的に遺骸から遠ざかるほど割合が減少した.遺骸の影響がほぼ無いとみられる遺骸から1 mの距離では3か月間通して20%以下の割合で一定だったのに対し,遺骸から10 cmの場所では多い時で50%近い割合を示し,通常環境の倍近い割合となった.一方,硫黄酸化細菌(SOB)に着目すると,SOBは距離よりも時間経過による変化が大きく,Sulfurimonas属やSulfurovum属などで遺骸沈設後1か月以降に急激な割合の上昇がみられた.しかし全期間を通してSOBは存在割合が低く,遺骸の分解が進み徐々に還元的な環境から回復しているものの,遺骸周辺は三か月後も依然として還元的な環境であったと考えられる.
そこで本研究では,鯨類遺骸を人為的に海中に沈設し,その分解過程に伴う周辺堆積物に含まれる有機物量およびその安定炭素同位体比の変動,およびそれらに伴う微生物群集の変化を調査した.鯨遺骸は肉部分をおおまかに除去し骨のみにした状態で,2023年8月に石川県能登半島九十九湾金沢大学臨海実験施設沖の水深約15 mの海底に設置し,その後約3カ月間にわたり定期的な表層堆積物サンプリングを行った.堆積物のサンプリングは遺骸から1 mの範囲で水平方向に一定間隔で採取を行い,堆積物中に含まれる全有機炭素量(TOC)およびその有機炭素の安定炭素同位体比(δ13C vs. VPDB)の測定を行った.また,16S rRNA遺伝子を用いて,各堆積物サンプル中の微生物群集解析を行った.
その結果,遺骸を沈設してから1-2週間ほどで遺骸直下の堆積物に影響がみられるようになり,沈設から3か月後まで継続して堆積物中のTOCが1.5wt%を超え,バックグラウンド値と比較して高い状態を維持していた.δ13C値は遺骸沈設1カ月後から値の変動が見られ,バックグラウンド値と比較しやや低い値(−22.5‰)となった.遺骸の影響が確認できたのはTOC・δ13C値ともに遺骸から50 cmまでの範囲であった.
微生物群集に関しても,主な変化が見られたのは遺骸から50 cmの範囲であった.硫酸還元菌(SRB)に着目すると,SRBは遺骸からの距離に応じた変化が大きく,全体的に遺骸から遠ざかるほど割合が減少した.遺骸の影響がほぼ無いとみられる遺骸から1 mの距離では3か月間通して20%以下の割合で一定だったのに対し,遺骸から10 cmの場所では多い時で50%近い割合を示し,通常環境の倍近い割合となった.一方,硫黄酸化細菌(SOB)に着目すると,SOBは距離よりも時間経過による変化が大きく,Sulfurimonas属やSulfurovum属などで遺骸沈設後1か月以降に急激な割合の上昇がみられた.しかし全期間を通してSOBは存在割合が低く,遺骸の分解が進み徐々に還元的な環境から回復しているものの,遺骸周辺は三か月後も依然として還元的な環境であったと考えられる.