11:45 〜 12:00
[AOS18-05] 海洋レーダによる波浪観測技術の高度化
キーワード:海洋短波レーダー、波浪観測、SN比、ドップラスペクトル
1.はじめに
海洋レーダは沿岸から沖合まで、面的に広範囲の情報(波浪・流況)を連続的に観測できる陸上設置型の観測機器であり、近年では波浪観測への活用の期待が高まっている。しかしながら、波の高さを直接観測する従来の観測機器(例えば沖合のGPS波浪計)と異なり、電波を使って波を観測するという特性上、波浪観測精度の向上には外部ノイズ対策が必須となる。本研究では、海洋レーダを使った波浪観測について新たな解析手法を開発し、GPS波浪計との比較検証を通して、従来は困難であった高波浪時においても波浪の観測精度を飛躍的に向上させることに成功した。
2.海洋レーダの特性を考慮した観測手法の開発
(1)SN比を考慮した空間補間
海洋レーダによる波浪の観測精度に大きく影響を与える要因である「外部ノイズ」を「信号とノイズの比(以下、SN比)」として評価した。検討対象とした海域では外部ノイズが大きく、様々な状況のSN比を用いてノイズ対策を試行した。その結果、観測地点から同心円状の範囲を探索し、当該範囲に含まれるSN比が高い観測結果のみを抽出して、それらデータの中央値を採用する新たな手法を開発した。
(2)双峰型ピークの出現領域判定
海洋レーダによる波浪解析は、観測データ(ドップラスペクトル)の主領域(一次散乱領域)と副領域(二次散乱領域)のエネルギーの比を取ることで波高と周期を計算するため、領域を明確に区分できることが精度の高い波浪観測の条件となる。しかしながら、例えば黒潮周辺海域等の複雑な流れ場においては、一次散乱領域のピークが二山形状に割れるいわゆる「双峰型ピーク」が出現することがあり、このような場合、領域を正しく分離することができず観測精度が低下するといった問題があった。そこで、双峰型ピークを自動で判定する方法を考案し、当該ピークが出現していない領域で解析を行う新たな手法を開発した。
3.開発手法による波浪観測精度の改善効果
(1)SN比を考慮した空間補間
主に波高に対して改善効果がみられた。従来手法では観測地点のSN比が低い場合は観測精度が低下した(観測1地点のSN比のみに依存)が、新手法では観測地点周辺のデータを空間的にSN比も考慮して補間することで、高波浪時においても精度の高い観測が可能となり、異常値が少なく従来の波浪計に近い解析結果を得られるようになった。
(2)双峰型ピークの出現領域判定
主に周期に対して改善効果がみられた。従来手法ではうねり性波浪の来襲時に周期を過小評価していたが、新手法では検証データと同等程度の周期の算出が可能となった。
4.おわりに
従来の海洋レーダに本手法を適用することで、より安定的なデータ取得が可能となることが明らかとなった。今後、従来の観測機器のバックアップや代替機能を提供する観測機器として、活用の可能性を模索していきたいと考えている。
海洋レーダは沿岸から沖合まで、面的に広範囲の情報(波浪・流況)を連続的に観測できる陸上設置型の観測機器であり、近年では波浪観測への活用の期待が高まっている。しかしながら、波の高さを直接観測する従来の観測機器(例えば沖合のGPS波浪計)と異なり、電波を使って波を観測するという特性上、波浪観測精度の向上には外部ノイズ対策が必須となる。本研究では、海洋レーダを使った波浪観測について新たな解析手法を開発し、GPS波浪計との比較検証を通して、従来は困難であった高波浪時においても波浪の観測精度を飛躍的に向上させることに成功した。
2.海洋レーダの特性を考慮した観測手法の開発
(1)SN比を考慮した空間補間
海洋レーダによる波浪の観測精度に大きく影響を与える要因である「外部ノイズ」を「信号とノイズの比(以下、SN比)」として評価した。検討対象とした海域では外部ノイズが大きく、様々な状況のSN比を用いてノイズ対策を試行した。その結果、観測地点から同心円状の範囲を探索し、当該範囲に含まれるSN比が高い観測結果のみを抽出して、それらデータの中央値を採用する新たな手法を開発した。
(2)双峰型ピークの出現領域判定
海洋レーダによる波浪解析は、観測データ(ドップラスペクトル)の主領域(一次散乱領域)と副領域(二次散乱領域)のエネルギーの比を取ることで波高と周期を計算するため、領域を明確に区分できることが精度の高い波浪観測の条件となる。しかしながら、例えば黒潮周辺海域等の複雑な流れ場においては、一次散乱領域のピークが二山形状に割れるいわゆる「双峰型ピーク」が出現することがあり、このような場合、領域を正しく分離することができず観測精度が低下するといった問題があった。そこで、双峰型ピークを自動で判定する方法を考案し、当該ピークが出現していない領域で解析を行う新たな手法を開発した。
3.開発手法による波浪観測精度の改善効果
(1)SN比を考慮した空間補間
主に波高に対して改善効果がみられた。従来手法では観測地点のSN比が低い場合は観測精度が低下した(観測1地点のSN比のみに依存)が、新手法では観測地点周辺のデータを空間的にSN比も考慮して補間することで、高波浪時においても精度の高い観測が可能となり、異常値が少なく従来の波浪計に近い解析結果を得られるようになった。
(2)双峰型ピークの出現領域判定
主に周期に対して改善効果がみられた。従来手法ではうねり性波浪の来襲時に周期を過小評価していたが、新手法では検証データと同等程度の周期の算出が可能となった。
4.おわりに
従来の海洋レーダに本手法を適用することで、より安定的なデータ取得が可能となることが明らかとなった。今後、従来の観測機器のバックアップや代替機能を提供する観測機器として、活用の可能性を模索していきたいと考えている。