日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS18] 海洋物理学一般

2025年5月26日(月) 13:45 〜 15:15 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:土井 威志(JAMSTEC)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、座長:土井 威志(JAMSTEC)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)

13:45 〜 14:00

[AOS18-07] 日本沿岸海況監視予測システム10年再解析値を用いた日本海側の冬季降水量の解析

*國府 陽一郎1 (1.気象庁)

キーワード:日本海、日本沿岸海況監視予測システム10年再解析値、全球日別海面水温解析値、アメダス

日本列島における冬季の日本海側の降水は、寒冷な北西の季節風により、日本海の海上から供給される水蒸気が輸送されて生じる(第1図)。海面水温が高いほど、大気に供給される水蒸気量は増大し、降水量に影響する。日本海には、黒潮から分かれ、対馬海峡(水深約150m)から流入し、津軽海峡および宗谷海峡から流出する対馬暖流(TWC)がある。TWCは、海峡や陸棚の地形の影響により厚さ約200mに抑えられ、日本海南部の表層を高温・高塩分の状態にする。北緯40度付近で水温と塩分のフロントが形成され、北側は比較的に冷水、南側は暖水の海域となっている。暖水の海域において、概ね岸と平行に、TWCは流れている。
先行研究では、数ヵ月前のTWCの流量や海面水温が冬季の降水量に影響することを示唆しているが、冬季期間をまとめた解析であり、各月の詳細な空間分布については明らかではない。本調査では、先行研究より空間と時間の分解能が高いデータを用いて、日本海の海面水温と海洋内部の熱量が及ぼしうる冬季の月別の降水量への影響について調査した。
 大気データには、気象庁のアメダスより1982年から2018年における12月から2月にかけての月合計の降水量と、冬季季節風の指標として福岡と根室の日別海面気圧の差を使用した。解析には、海面気圧差と正相関を持つ月降水量を抽出して用いた。海面水温(SST)データは、1982年から2018年の気象庁の全球日別海面水温解析値(MGDSST)(栗原 et al.2006)を使用し、海洋内部のデータは気象研究所の日本沿岸海況監視予測システム10年再解析値(JPN)(広瀬 et al. 2020)を使用した。JPNのデータからは、2008年から2018年の対馬海峡におけるTWCの東西別の海峡流量と、海面から100mまでの海洋貯熱量(OHC)を使用した。
 分析には、傾向が類似する海域ごとに区分するために、SSTとOHCの月平均に対してクラスター分析を使用し、南北に5つの海域が分類された。各海域のSST・OHCの平均を算出し、経年変動を比較した。そして各海域のSST・OHCと各月の月降水量の偏差の相関分析をした。相関分析では、12月から2月の降水量に対し、同じ月から2カ月前にかけての各月のSSTとOHCを分析した。またTWCの月平均は、降水の月と同じ月から3カ月前までを使用した。
 クラスター分析の結果、各海域のSSTは1982-2018年にかけては上昇しているが、2008-2018年にかけては低下しており、解析期間に依存していた。また2008-2018年にかけてのOHCも、SSTと同様に低下を示した。月降水量の偏差とOHCまたはSSTの偏差に相関が示された。2月の月降水量の偏差との相関分析において、東北地方で12月のTWC西側の流量の偏差と1月の東西両側の流量の偏差、中国地方で1月の東側の流量の偏差と有意な正の相関が示された。降水量と海峡の東西別のTWCの流量との相関は、月と地域によってアメダス分布が異なることを示した。