日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS20] 海洋化学・生物学一般

2025年5月27日(火) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:安中 さやか(東北大学)、大林 由美子(愛媛大学)、川合 美千代(東京海洋大学)、座長:安中 さやか(東北大学)、川合 美千代(東京海洋大学)

10:45 〜 11:00

[AOS20-01] 西部北太平洋亜寒帯域・亜熱帯域における細胞外プロテアーゼ活性プロファイル

*大林 由美子1、浦久保 陸人1佐藤 光秀2児玉 武稔3浜崎 恒二3 (1.愛媛大学、2.長崎大学、3.東京大学)

キーワード:細胞外加水分解酵素活性、微生物ループ、栄養塩再生

海洋生態系において、従属栄養性原核微生物(以下、従属栄養細菌とする)は、溶存態・粒子態の有機物を栄養基質として利用し、代謝・増殖する。この従属栄養細菌は、捕食されることで高次栄養段階へと繋がっていく“微生物ループ”と呼ばれる物質の流れを駆動し、同時に、代謝により栄養塩類の再生にも貢献すると考えられる。従属栄養細菌が有機物を利用するには、取り込みに先立ち、取り込み可能な分子に細胞外で変換される必要がある。このために細菌は細胞外加水分解酵素を用いる。主要な細胞外加水分解酵素としてタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)がある。
西部北太平洋の亜寒帯域と亜熱帯域は、一次生産の場としての特徴や主要な一次生産者が異なることが知られているが、従属栄養微生物による有機物代謝の違いについての情報は多くない。本研究では、白鳳丸KH-23-3次航海(2023年7月)において、西部北太平洋の亜寒帯域の測点K2、亜熱帯域測点KEO、S1、KEOSで、表層200 mまでの海水で、複数タイプの細胞外プロテアーゼ(アミノペプチダーゼ、トリプシン型酵素)活性を測定した。アミノペプチダーゼはペプチド鎖のN末端からアミノ酸を切り離すエキソ型酵素であり、トリプシンはペプチド鎖内部を切断するエンド型酵素である。これらの活性およびその比と、植物プランクトン・従属栄養細菌・栄養塩類の分布等を合わせて考察することで、亜寒帯域・亜熱帯域の生物地球化学的特徴を検討した。
亜寒帯の測点K2のプロテアーゼ活性は、表層0~10 mで最も高く、深度とともに低下した。またプロテアーゼ活性とクロロフィルa濃度の間に正の相関があり、一次生産の高い層で有機物分解活性も高いと考えられた。一方、亜熱帯の測点KEO、S1、KEOSでは表層の活性は亜寒帯測点より低いが、深度とともに高くなり、60~80 m付近で極大となった。トリプシン型活性とアミノペプチダーゼ活性の比(T/A比)をとると、亜寒帯より亜熱帯の方が大きく、特に亜熱帯亜表層のT/A比が大きかった。また、主要栄養塩が枯渇している層でT/A比が高い傾向があった。これらのことから、亜熱帯の表層~亜表層ではエンド型酵素による効率的な有機物代謝およびそれに伴い再生された栄養塩が即座に利用されることで、貧栄養下での再生生産を支えている可能性が考えられた。