11:30 〜 11:45
[AOS20-04] 前処理が条鰭類の歯の炭酸基同位体組成に及ぼす影響

キーワード:魚、歯、同位体、炭酸基
条鰭類(Actinopterygii)は水圏生態系で最も繁栄している分類群の1つだが,その進化や多様化の過程には未解明な点が多く残されている.過去の条鰭類について知るための有力な手掛かりが歯化石であり,新生代以降の海底堆積物中に多く含まれる重要な試料である.特に,歯に含まれる炭酸基の炭素・酸素安定同位体比(δ13C・δ18O)は環境情報や生態・生理学的情報を提供すると期待される.しかし,現生試料の研究が十分に行われておらず,炭酸基同位体組成の変動要因についての理解や指標としての頑健性が十分に検証されていないため,化石試料分析結果の解釈は難しい状況にある.
化石の歯試料と比較して,現生歯試料には有機物が多く含まれる.現生試料を常温保存して有機物が腐敗した場合,試料が劣化するだけでなく,発生するCO2ガスや揮発性有機物が,分析して得られる同位体組成を変化させたり,分析装置の汚染を引き起こしたりする可能性がある.そのため,炭酸基の同位体分析を行う際には化学処理により有機物を除去することがコンセンサスとなっていた.しかし,歯の中で最も大きな割合を占める象牙質に対し,炭酸基同位体組成を保持する有効な有機物除去処理は未だ提唱されていない.そこで,本研究では象牙質に含まれる炭酸基の同位体分析を行うための有機物除去手法を開発した.
本研究は,インド・西太平洋に広く分布し大きな歯を持つシロサバフグを研究対象とし,その歯を採取して試料とした.続いて,前処理による炭酸基同位体組成の変化を評価するため,試料に前処理を施した.前処理では物理的なクリーニング(物理除去)のほかに,有機物を固定するエタノール・アセトン,有機物を酸化する過酸化水素水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液,有機物を加水分解する水酸化ナトリウム水溶液,中性・アルカリ性のパンクレアチン水溶液などの試薬を用いた化学処理も行った.その後,それぞれの前処理を経験した試料について,炭酸基同位体組成の変化を測定した.また,炭酸基量(wt%)の変化も測定し,前処理による炭酸基の二次生成を判別した.
物理的なクリーニングを経験した試料(物理除去試料)には目視で確認できるほど多くの有機物が残存したものの,揮発性有機物は同位体分析に影響を与えなかった.また,物理除去試料は炭酸基の二次生成が起こり得る保存処理を経験しておらず,分析で検出した炭酸基量(wt%)は先行研究で報告された値に近かった.したがって,分析において物理除去試料から発生するCO2ガスは炭酸基由来であり,物理除去試料から初生的な炭酸基の量(wt%)と同位体組成を分析できたと判断した.そのため本研究では,物理除去試料に含まれる炭酸期の量(wt%)と同位体組成を基準とし,化学処理による炭酸基の量(wt%)と同位体組成のその基準からの変化を評価した.
生物酵素から構成されるパンクレアチンの中性・アルカリ性水溶液を用いた処理では,有機物が見かけ上十分に除去された.また,処理によって炭酸基の量(wt%)とδ13Cは変化しなかったため,パンクレアチン水溶液を用いた処理は初生的なδ13Cを保持すると判断した.したがって,象牙質に含まれる炭酸基のδ13Cを分析するための有機物除去処理として,中性もしくはアルカリ性のパンクレアチン水溶液を用いた処理が推奨できる.
一方,有機物を十分に除去し,炭酸基の初生的なδ18Oを保持すると考えられる前処理は確認できなかった.次善の策として,δ18Oの変化が比較的小さかった,中性のパンクレアチン水溶液を用いた処理が推奨できる.この処理によるδ18Oの変化(Δ18O)は分散が比較的小さく,変化の程度が一定であったため,処理によって改変されたδ18Oを補正できる可能性がある.
化石の歯試料と比較して,現生歯試料には有機物が多く含まれる.現生試料を常温保存して有機物が腐敗した場合,試料が劣化するだけでなく,発生するCO2ガスや揮発性有機物が,分析して得られる同位体組成を変化させたり,分析装置の汚染を引き起こしたりする可能性がある.そのため,炭酸基の同位体分析を行う際には化学処理により有機物を除去することがコンセンサスとなっていた.しかし,歯の中で最も大きな割合を占める象牙質に対し,炭酸基同位体組成を保持する有効な有機物除去処理は未だ提唱されていない.そこで,本研究では象牙質に含まれる炭酸基の同位体分析を行うための有機物除去手法を開発した.
本研究は,インド・西太平洋に広く分布し大きな歯を持つシロサバフグを研究対象とし,その歯を採取して試料とした.続いて,前処理による炭酸基同位体組成の変化を評価するため,試料に前処理を施した.前処理では物理的なクリーニング(物理除去)のほかに,有機物を固定するエタノール・アセトン,有機物を酸化する過酸化水素水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液,有機物を加水分解する水酸化ナトリウム水溶液,中性・アルカリ性のパンクレアチン水溶液などの試薬を用いた化学処理も行った.その後,それぞれの前処理を経験した試料について,炭酸基同位体組成の変化を測定した.また,炭酸基量(wt%)の変化も測定し,前処理による炭酸基の二次生成を判別した.
物理的なクリーニングを経験した試料(物理除去試料)には目視で確認できるほど多くの有機物が残存したものの,揮発性有機物は同位体分析に影響を与えなかった.また,物理除去試料は炭酸基の二次生成が起こり得る保存処理を経験しておらず,分析で検出した炭酸基量(wt%)は先行研究で報告された値に近かった.したがって,分析において物理除去試料から発生するCO2ガスは炭酸基由来であり,物理除去試料から初生的な炭酸基の量(wt%)と同位体組成を分析できたと判断した.そのため本研究では,物理除去試料に含まれる炭酸期の量(wt%)と同位体組成を基準とし,化学処理による炭酸基の量(wt%)と同位体組成のその基準からの変化を評価した.
生物酵素から構成されるパンクレアチンの中性・アルカリ性水溶液を用いた処理では,有機物が見かけ上十分に除去された.また,処理によって炭酸基の量(wt%)とδ13Cは変化しなかったため,パンクレアチン水溶液を用いた処理は初生的なδ13Cを保持すると判断した.したがって,象牙質に含まれる炭酸基のδ13Cを分析するための有機物除去処理として,中性もしくはアルカリ性のパンクレアチン水溶液を用いた処理が推奨できる.
一方,有機物を十分に除去し,炭酸基の初生的なδ18Oを保持すると考えられる前処理は確認できなかった.次善の策として,δ18Oの変化が比較的小さかった,中性のパンクレアチン水溶液を用いた処理が推奨できる.この処理によるδ18Oの変化(Δ18O)は分散が比較的小さく,変化の程度が一定であったため,処理によって改変されたδ18Oを補正できる可能性がある.