15:30 〜 15:45
[AOS21-07] 志津川湾における降雨時pH低下プロセスのイベント別解析
キーワード:沿岸酸性化、降雨、河川有機物、一時生産
現在の日本沿岸域のpHはまだ概ね十分高い値を保っているが、降雨の後に数日〜数週間程度のpH低下イベントがしばしば発生しており、その際には飼育実験上のマガキの酸性化影響発現閾値であるΩara=1.5程度までアラゴナイト飽和度が低下することがある事が判明している(Ono et al., 2024等)。降雨後にpHを低下させるプロセスとして、降雨で増水した河川から供給される有機物が沿岸で分解する過程と、同じく河川から供給される栄養塩を用いた生物活動により沿岸水中で有機物が生成され、それが分解する過程の二つが考えられる。我々は2022年7月に宮城県域で発生した集中豪雨期に志津川湾のpH変動の詳細観測を行っており、この集中豪雨時には降雨直後に湾内の濁度が急激に増加し、それに続いてpHの低下と溶存酸素濃度の低下が生じたこと、さらに湾内における生物生産の指標であるChla濃度の増加はpHの低下よりも1週間以上後だったことを確認した(小埜、2024)。これらの事実は、この集中豪雨後に湾内のpH低下イベントを引き起こしたのは河川由来の有機物の分解であり、湾内の生物生産はpH低下イベントの主要因ではないことを強く示唆しているが、この一回のイベントで見られたpH低下過程が他の降雨イベント時にも共通に成り立っているかは不明であった。
そこで我々は、日本財団海洋酸性化適応プロジェクトにより2020年から志津川湾で取得されているpHの連続観測データから、個々の降雨イベントに際して生じている塩分、濁度、Chla、pHの短期的変動シグナルを抜き出し、降雨の大きさとこれら諸量の変動の大きさとの関連や、各量の変動発生の時間的前後関係について個々の降雨イベント毎に調査した。
南三陸町では上記調査の始まった2020年9月から2023年12月までの間に、積算降水量20mm以上の降雨イベントが55回生じており、そのうち53回で有意なpHの低下イベントが生じていた。イベント毎の積算pH低下量は積算降雨量、積算塩分低下量、塩分低下日数の3つと有意な正相関を示しており、降雨イベント後に正じるpH低下の規模が降雨そのものだけでなく、降雨時に供給された淡水の湾内における保持時間によっても規定されていることを示唆している。
濁度・Chla計を導入した2021年4月以降の全ての降雨イベントが濁度の低下を伴っており、そのうち77%でpHの低下は濁度の低下と同一日、もしくは濁度の低下日以降に生じていた。濁度の低下以前にpHの低下が生じていたケースが全体の23%あり、これらのケースでは河川から供給された有機物の分解によるpHの低下よりも、淡水の流入による塩分の低下に伴う非生物的なpHの低下プロセスの寄与が大きかったものと考えられる。
Chlaの増加は、全pH低下イベントの62%でpH低下の後に生じていたが、38%のケースではpHの低下以前にChlaの増加が生じていた。さらに各イベントの積算pH低下量を、pHの低下ピーク日からのChla増加ピーク日の遅延日数に対してプロットすると図のようになり、Chlaの増加がpHの増加よりも遅延するほど、湾内の積算pH低下量が統計的に有意に増加するという現象が観察された。
降雨後のpH低下に際して分解される有機物のソースとして、河川由来の有機物だけでなく湾内の一次生産由来の有機物も有意に貢献しているのであれば、pHの増加に先行してChlaの増加が生じている時の方がpHの積算低下量が大きくなるはずであるが、観測事実はその逆の関係を示している。このことから、やはり降雨後のpH低下イベントの要因は河川由来の有機物の分解であり、pHの低下前にChlaが増加しているケースでは、むしろ河川由来有機物の分解で生じたDICが湾内の一次生産によって回収されることで、湾内のpH低下量が抑制されているのではないかと考えている。発表時には2024年の降雨イベントのデータも加えて、より詳細な解析結果を報告する予定である。
そこで我々は、日本財団海洋酸性化適応プロジェクトにより2020年から志津川湾で取得されているpHの連続観測データから、個々の降雨イベントに際して生じている塩分、濁度、Chla、pHの短期的変動シグナルを抜き出し、降雨の大きさとこれら諸量の変動の大きさとの関連や、各量の変動発生の時間的前後関係について個々の降雨イベント毎に調査した。
南三陸町では上記調査の始まった2020年9月から2023年12月までの間に、積算降水量20mm以上の降雨イベントが55回生じており、そのうち53回で有意なpHの低下イベントが生じていた。イベント毎の積算pH低下量は積算降雨量、積算塩分低下量、塩分低下日数の3つと有意な正相関を示しており、降雨イベント後に正じるpH低下の規模が降雨そのものだけでなく、降雨時に供給された淡水の湾内における保持時間によっても規定されていることを示唆している。
濁度・Chla計を導入した2021年4月以降の全ての降雨イベントが濁度の低下を伴っており、そのうち77%でpHの低下は濁度の低下と同一日、もしくは濁度の低下日以降に生じていた。濁度の低下以前にpHの低下が生じていたケースが全体の23%あり、これらのケースでは河川から供給された有機物の分解によるpHの低下よりも、淡水の流入による塩分の低下に伴う非生物的なpHの低下プロセスの寄与が大きかったものと考えられる。
Chlaの増加は、全pH低下イベントの62%でpH低下の後に生じていたが、38%のケースではpHの低下以前にChlaの増加が生じていた。さらに各イベントの積算pH低下量を、pHの低下ピーク日からのChla増加ピーク日の遅延日数に対してプロットすると図のようになり、Chlaの増加がpHの増加よりも遅延するほど、湾内の積算pH低下量が統計的に有意に増加するという現象が観察された。
降雨後のpH低下に際して分解される有機物のソースとして、河川由来の有機物だけでなく湾内の一次生産由来の有機物も有意に貢献しているのであれば、pHの増加に先行してChlaの増加が生じている時の方がpHの積算低下量が大きくなるはずであるが、観測事実はその逆の関係を示している。このことから、やはり降雨後のpH低下イベントの要因は河川由来の有機物の分解であり、pHの低下前にChlaが増加しているケースでは、むしろ河川由来有機物の分解で生じたDICが湾内の一次生産によって回収されることで、湾内のpH低下量が抑制されているのではないかと考えている。発表時には2024年の降雨イベントのデータも加えて、より詳細な解析結果を報告する予定である。