日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS21] 沿岸域の海洋循環と物質循環

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:永井 平(水産研究教育機構)、中島 壽視(東京大学大気海洋研究所)、日髙 弥子(鹿児島大学)、牛島 悠介(愛媛大学)

17:15 〜 19:15

[AOS21-P12] 伊万里湾におけるKarenia mikimotoi赤潮の挙動解析~パッチ状の高細胞水塊の形成要因~

*山口 創一1、朝生 光貴1 (1.九州大学)

キーワード:Karenia mikimotoi、赤潮、伊万里湾、粒子追跡法

伊万里湾は九州北部に位置する閉鎖性の強い内湾であり,大小の島が点在する複雑な地形を有している.トラフグ等の養殖が盛んだが,渦鞭毛藻類Karenia mikimotoi(以降K.mikimotoiと表記)の赤潮によって養殖魚の大量斃死が発生し,大きな漁業被害が生じている(山砥ら,2006).近年では2022年夏季に大規模な赤潮が発生した.この時,湾奥に位置する福島の東部海域で初期増殖が見られ,そのまま赤潮化し,その後に湾口に位置する鷹島の南部へ赤潮が拡大した.細胞数変動に基づいた比増殖速度から,この赤潮の拡大は移流型赤潮と考えられ,鷹島南部においてはパッチ状の着色域が確認された.本研究では2022年の赤潮を対象として,高解像度沿岸海洋モデルと能動的鉛直移動および生物的成長・死滅を組み込んだ粒子追跡モデルを用いて,K.mikimotoi赤潮の動態解析を行った.
 数値モデルにはFVCOM(Finite Volume Community Ocean Model, Chen et al., 2006)を採用し,外海条件にDreams_D(Hirose et al., 2005),淡水流入量評価に降雨流出氾濫モデルRRI(Rainfall Runoff Inundation model,佐山・岩見, 2014), 気象条件に解析雨量,メソ数値予報モデルMSM/GPVを用いた.FVCOMは水平方向に三角形の非構造格子を採用しており,湾奥で最小50mまで解像度を上げ,海岸・海底地形を忠実に表現した.これにより拡散・流動場を高精度に再現し,K.mikimotoiによる能動的鉛直移動および生物的成長や死滅(Moum and Lueck,1985; Loyer et al., 2001; Gentien et al., 2007)を組み込んだ仮想粒子を福島東部に投入することで赤潮の動態を解析した.能動的日周鉛直移動は2022年に行った現地観測データをもとに設定した.
 仮想粒子は細胞数の急増が確認された8月17日の0時に福島東部の海底直上に放出した.その後,鷹島南部へ輸送され,パッチ状の高濃度域が再現された.福島東部で増殖した赤潮は鉛直移動を繰り返しながら,表層塩分の低下と共に狭い水道を通過して北部に輸送された.ここには,比日水道から潮流と平均流が合わさった強い流れが表層から中層に間欠的に流入し,高島南部へとぬけている.福島東部から北部へ輸送された赤潮粒子は日周鉛直移動によって日中に表層から中層に浮上し,一部がこの流れに取り込まれることで鷹島南部にパッチ状に輸送された.生物過程によってパッチにおける細胞数が高く維持されることも確認した.