日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BG 地球生命科学・地圏生物圏相互作用

[B-BG02] 岩石生命相互作用とその応用

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、白石 史人(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、西原 亜理沙(国立研究開発法人理化学研究所 バイオリソース研究センター )、座長:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)

09:00 〜 09:15

[BBG02-01] 球状シアノバクテリアの石灰化によるペロイド形成の試み

*白石 史人1、田中 秀明1富岡 尚敬2高橋 嘉夫3 (1.広島大学、2.海洋研究開発機構、3.東京大学)

ペロイドは炭酸塩岩中に一般的に含まれており,岩石薄片では微晶質(ミクライト質)で無構造の粒子として観察される.ペロイドには様々な起源があるが,微生物起源のものも多く,しばしばストロマトライトを構成するなど,地球表層の炭素循環に重要な役割を果たしてきたと考えられる.しかしながら,微生物がどのようにペロイドを形成するのか,その詳細は未だ十分に理解されていない.いくつかの先行研究では,地質時代と現世の微生物炭酸塩岩の検討から,球状シアノバクテリアのコロニーが炭酸カルシウムに包埋されることでペロイドが形成した可能性を指摘している(Adachi et al., 2004; Shiraishi et al., 2017).そこで本研究は,本当にそのような現象が起きるのか,実験で確認した.
実験には球状シアノバクテリアであるSynechocystis sp.およびStanieria sp.を用いた.酸-塩基滴定および蛍光染色の結果から,Synechocystis sp.の方が細胞表面や細胞外高分子(EPS)にカルボキシ基を多く含んでいることが示された.これらの菌株を光合成誘導炭酸塩沈殿に適した実験水に浸し,光を照射して経過を観察した.その結果,Synechocystis sp.では周辺にペロイド状の球形鉱物などが観察された一方で,Stanieria sp.ではそのような鉱物は確認されなかった.これは,酸性EPSが炭酸塩鉱物の核形成に重要な働きを果たしていることを示唆している.透過型電子顕微鏡(TEM)および走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いた観察では,Synechocystis sp.の周辺で形成された鉱物は双晶を伴う単結晶方解石から構成されており,一部では非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含むことが確認された.しかしながら,方解石の内部にはSynechocystis sp.の細胞が取り込まれておらず,先行研究で報告された地質時代と現世のペロイドとは特徴が異なっていた.これは,実験に用いたシアノバクテリアの細胞密度が低く,光合成による飽和度上昇が不十分であったためかもしれない.

引用文献
Adachi N., Ezaki Y., Liu J. (2004) The fabrics and origins of peloids immediately after the end-Permian extinction, Guizhou Province, South China. Sedimentary Geology 164, 161–178.
Shiraishi F., Hanzawa Y., Okumura T., Tomioka N., Kodama Y., Suga H., Takahashi Y., Kano A. (2017) Cyanobacterial exopolymer properties differentiate microbial carbonate fabrics. Scientific Reports 7, 11085.