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[BBG02-10] 深部花崗岩中における微生物の生息と関連する岩石特性の解明
キーワード:地下生命圏、瑞浪超深地層研究所、緑泥石-絹雲母熱水変質、地球初期生態系
【序論】
花崗岩は現存する最古の岩石の原岩であり、生命が誕生したと推定される40億年前から存在した。光合成由来の有機物や酸化剤が地表から到達しない深部花崗岩は、光合成生物誕生前の初期地球の環境と類似すると考えられる。近年、地下深部の花崗岩から採取された地下水に、メタンと硫黄化合物をエネルギー源とする微生物生態系が、北欧や日本のメタゲノム解析の研究により明らかになった。地下水を用いた研究は進展しているが、岩石内部の微生物の生態に関しては、試料採取の掘削の汚染の問題と岩石内の微生物分析の困難さから研究事例が少ない。本研究では、深部花崗岩を地下坑道からの掘削で汚染を最小限とし、近年開発された岩石内微生物の分析技術を駆使して、微生物と鉱物の相関を明らかにすることを目的とした。
【材料と方法】
瑞浪超深地層研究所の地下400 m坑道からの掘削では、亀裂を汚染する掘削水を紫外線照射することで殺菌した。10MI26号孔の17.35-43 meters along borehole(mabh)で採取された岩石コア試料は、両端が亀裂であったため分析を行った。コア試料は亀裂面と外縁部に分割した後、粉末化した。粉末試料はSYBR Green IでDNA染色後、蛍光顕微鏡観察により全菌数測定を行った。鉱物分析も粉末試料で行い、不定方位と定方位でX線回析(XRD)図形を取得した。未分割試料の一部はダイヤモンドバンドソーを用いて3 mm厚の薄片に切断し、SYBR Green I染色後に蛍光顕微鏡で観察した。その後、薄片の細胞染色された箇所で光熱変換赤外分光法(O-PTIR)を行った。エネルギー分散型X線分析装置付属の走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)と電界放出型電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA)による観察と元素組成分析を行った。FE-EPMAでは波長分散型X線分析装置(WDS)を用いて定量分析も行い、その結果を用いて岩石生成時の温度を計算した。走査型軟X線分光顕微鏡(SFXM)による分析ではAl、Mg、Fe吸収端のスペクトル解析を行なった。
【結果】
全菌数測定の結果、亀裂部は外縁部と比べて有意に細胞数が多く、亀裂部に生息している微生物は掘削時の汚染でないと考えられる。XRD分析の結果、緑泥石と雲母が含まれることが明らかになった。SYBR Green I染色後の薄片観察の結果、亀裂面付近の有色鉱物に微生物の密集が確認された。一方、薄片の外縁部や中央部の有色鉱物には微生物は確認されなかったため、亀裂部の有色鉱物に密集する微生物は掘削や薄片作成時の汚染でないと判断された。亀裂部でDNA染色された微生物が観察された部位のO-PTIR分析の結果、アミド基のピークが検出され、微生物細胞の存在が確かめられた。SEM-EDSおよびFE-EPMAでの観察・分析の結果、SYBR Green Iによって染色されていた有色鉱物はAl, Si, Mg, Feを含むが、Kは含まないため黒雲母ではなく緑泥石であると判断された。また、微生物が多数存在した領域は、AlとSiの比から細粒の白雲母である絹雲母であると判断された。緑泥石と絹雲母の境界付近の空隙に関してFE-EPMAによる高空間分解の元素マッピングを行った結果、局所的にSとCaが分布していることが明らかとなった。Sの存在状態に関しては、元素状硫黄(S)、黄鉄鉱(FeS2)、石膏(CaSO4)の可能性が考えられるが、S、Ca、Feの分布が異なるため元素状硫黄の可能性が高い。Caはリン酸塩鉱物や珪酸塩鉱物に含まれておらず、炭酸カルシウムの可能性が高い。また、緑泥石温度計の計算に四面体中のAlのmol数を用いて計算した結果、形成時の温度は281-392 ℃と推定された。また、SFXMにの分析により緑泥石と絹雲母の鉱物相と緑泥石がFe(III)を含むことが確認された。
【考察】
本研究により深部花崗岩の亀裂部に形成する緑泥石に汚染でない土着の微生物が密集することが明らかとなった。緑泥石の微生物密集部には元素状硫黄が存在することが示唆され、地下水のメタゲノム解析で推定されていた微生物の硫黄化合物代謝と整合的である。元素状硫黄は硫化水素とFe(III)を含む鉱物の反応により形成されることが知られており、緑泥石中のFe(III)は300℃付近で効率的に進行する脱水素化反応で八面体シート中のFe(II)が酸化されると考えられる。初期地球において、花崗岩マグマの貫入後の熱水活動は普遍的にFe(III)に富む緑泥石を形成し、硫化水素も供給し元素状硫黄を生成すると考えられるため、微生物が生息していた可能性が示唆された。
本研究は日本原子力研究開発機構瑞浪超深地層研究所との共同研究で採取した試料を用いましたので謝辞を申し上げます。
花崗岩は現存する最古の岩石の原岩であり、生命が誕生したと推定される40億年前から存在した。光合成由来の有機物や酸化剤が地表から到達しない深部花崗岩は、光合成生物誕生前の初期地球の環境と類似すると考えられる。近年、地下深部の花崗岩から採取された地下水に、メタンと硫黄化合物をエネルギー源とする微生物生態系が、北欧や日本のメタゲノム解析の研究により明らかになった。地下水を用いた研究は進展しているが、岩石内部の微生物の生態に関しては、試料採取の掘削の汚染の問題と岩石内の微生物分析の困難さから研究事例が少ない。本研究では、深部花崗岩を地下坑道からの掘削で汚染を最小限とし、近年開発された岩石内微生物の分析技術を駆使して、微生物と鉱物の相関を明らかにすることを目的とした。
【材料と方法】
瑞浪超深地層研究所の地下400 m坑道からの掘削では、亀裂を汚染する掘削水を紫外線照射することで殺菌した。10MI26号孔の17.35-43 meters along borehole(mabh)で採取された岩石コア試料は、両端が亀裂であったため分析を行った。コア試料は亀裂面と外縁部に分割した後、粉末化した。粉末試料はSYBR Green IでDNA染色後、蛍光顕微鏡観察により全菌数測定を行った。鉱物分析も粉末試料で行い、不定方位と定方位でX線回析(XRD)図形を取得した。未分割試料の一部はダイヤモンドバンドソーを用いて3 mm厚の薄片に切断し、SYBR Green I染色後に蛍光顕微鏡で観察した。その後、薄片の細胞染色された箇所で光熱変換赤外分光法(O-PTIR)を行った。エネルギー分散型X線分析装置付属の走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)と電界放出型電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA)による観察と元素組成分析を行った。FE-EPMAでは波長分散型X線分析装置(WDS)を用いて定量分析も行い、その結果を用いて岩石生成時の温度を計算した。走査型軟X線分光顕微鏡(SFXM)による分析ではAl、Mg、Fe吸収端のスペクトル解析を行なった。
【結果】
全菌数測定の結果、亀裂部は外縁部と比べて有意に細胞数が多く、亀裂部に生息している微生物は掘削時の汚染でないと考えられる。XRD分析の結果、緑泥石と雲母が含まれることが明らかになった。SYBR Green I染色後の薄片観察の結果、亀裂面付近の有色鉱物に微生物の密集が確認された。一方、薄片の外縁部や中央部の有色鉱物には微生物は確認されなかったため、亀裂部の有色鉱物に密集する微生物は掘削や薄片作成時の汚染でないと判断された。亀裂部でDNA染色された微生物が観察された部位のO-PTIR分析の結果、アミド基のピークが検出され、微生物細胞の存在が確かめられた。SEM-EDSおよびFE-EPMAでの観察・分析の結果、SYBR Green Iによって染色されていた有色鉱物はAl, Si, Mg, Feを含むが、Kは含まないため黒雲母ではなく緑泥石であると判断された。また、微生物が多数存在した領域は、AlとSiの比から細粒の白雲母である絹雲母であると判断された。緑泥石と絹雲母の境界付近の空隙に関してFE-EPMAによる高空間分解の元素マッピングを行った結果、局所的にSとCaが分布していることが明らかとなった。Sの存在状態に関しては、元素状硫黄(S)、黄鉄鉱(FeS2)、石膏(CaSO4)の可能性が考えられるが、S、Ca、Feの分布が異なるため元素状硫黄の可能性が高い。Caはリン酸塩鉱物や珪酸塩鉱物に含まれておらず、炭酸カルシウムの可能性が高い。また、緑泥石温度計の計算に四面体中のAlのmol数を用いて計算した結果、形成時の温度は281-392 ℃と推定された。また、SFXMにの分析により緑泥石と絹雲母の鉱物相と緑泥石がFe(III)を含むことが確認された。
【考察】
本研究により深部花崗岩の亀裂部に形成する緑泥石に汚染でない土着の微生物が密集することが明らかとなった。緑泥石の微生物密集部には元素状硫黄が存在することが示唆され、地下水のメタゲノム解析で推定されていた微生物の硫黄化合物代謝と整合的である。元素状硫黄は硫化水素とFe(III)を含む鉱物の反応により形成されることが知られており、緑泥石中のFe(III)は300℃付近で効率的に進行する脱水素化反応で八面体シート中のFe(II)が酸化されると考えられる。初期地球において、花崗岩マグマの貫入後の熱水活動は普遍的にFe(III)に富む緑泥石を形成し、硫化水素も供給し元素状硫黄を生成すると考えられるため、微生物が生息していた可能性が示唆された。
本研究は日本原子力研究開発機構瑞浪超深地層研究所との共同研究で採取した試料を用いましたので謝辞を申し上げます。