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[BCG06-15] 東北日本に分布する最下部白亜系の炭素同位体比変動と国際層序対比

キーワード:下部白亜系、相馬中村層群、唐桑層群、炭素同位体層序、U-Pb 放射年代
地球表層の安定炭素同位体比は,顕生代を通じて変動し続けており,汎世界的な炭素同位体比の変化は,有機無機炭素の両方に記録される(Kump & Arther, 1999; Cramer & Jarvis, 2020) . 白亜紀前期のBarreasianからHauterivian(145–126 Ma)にかけては,巨大火成岩岩石区(LIPs)の形成(Gomes & Vasconcelos, 2021)や,モンス–ン強度の変動(Martinez et al., 2023)などによって,炭素同位体比変動が引き起こされたと考えられている.その中で最も顕著な同位体比変動として,Weissert Eventがあげられる(Weissert et al., 1998; Erba et al., 2004).
Weissert Event(134.6–132.3 Ma; Martinez et al., 2023)とは,Valaniginian後期に発生したδ13Cの顕著な正の変動(2.0–4.0‰)で定義づけられる炭素同位体比変動イベントである.Weissert Eventの発生は,パラナ–エテンデカ洪水玄武岩の形成と関連しているとされるが,詳細なメカニズムや地球システムへの影響については議論が続いている.また,日本を含むパンサラッサ海域では先行研究がないため,この海域での炭素同位体比摂動はわかっておらず,炭素同位体比変動に関連して,どのような環境変動が発生したのか不明である.一方で,東北地方には,下部白亜系が連続して露出する地層が確認されており,パンサラッサ海域におけるWeissert Eventを含む炭素同位体比変動が復元できる可能性がある.
本研究では,北西パンサラッサ海域における炭素同位体比変動とその数値年代および当時の古環境変動を明らかにするために,相馬中村層群小山田層と唐桑層群小々汐層~磯草層を対象に,全岩有機炭素同位体比分析,凝灰岩のU–Pb放射年代測定,TOC,DOP分析を実施した.
その結果,小山田層中部から上部にかけて,炭素同位体比の約2.5 ‰の顕著な正の変動が確認され,小山田層に挟まる複数の凝灰岩層からは,Valanginianを示すジルコンU–Pb放射年代が得られた.一方で,磯草層中部においても約1.5 –2.0 ‰の顕著な正の変動が確認されたが,磯草下部からはValanginian前期,磯草層上部ではHauterivianを示すジルコンU–Pb放射年代が得られた.
これらの炭素同位体比曲線を基に,ヨ–ロッパ地域の代表的な下部白亜系と層序対比を実施したところ,本研究で得られた炭素同位体比変動は,Valanginian~Hauterivian GSSPセクションにおけるWeissert Event区間の炭素同位体比変動と極めて類似していた.加えて,磯草層の同位体比曲線には,Berriasian/Valanginian境界やValanginian/Hauterivian境界付近の炭素同位体比変動を記録している可能性が示された.また,得られたU–Pb放射年代は,最新の数値年代モデル(Martinez et al., 2023)と調和的であった.さらに,小山田層泥岩試料の化学分析の結果は,小山田層堆積当時に酸化的な環境が卓越していたことを示したが,同位体比が上昇する区間で一時的に還元的な環境に転じていた可能性が示された.
参考文献
Erba et al., 2004, Geology, 32.2, 149–152.
Martinez et al, 2023, Earth–Science Reviews, 104356.
Percival et al., 2023, Geology, 51.8, 753–757.
Weissert Event(134.6–132.3 Ma; Martinez et al., 2023)とは,Valaniginian後期に発生したδ13Cの顕著な正の変動(2.0–4.0‰)で定義づけられる炭素同位体比変動イベントである.Weissert Eventの発生は,パラナ–エテンデカ洪水玄武岩の形成と関連しているとされるが,詳細なメカニズムや地球システムへの影響については議論が続いている.また,日本を含むパンサラッサ海域では先行研究がないため,この海域での炭素同位体比摂動はわかっておらず,炭素同位体比変動に関連して,どのような環境変動が発生したのか不明である.一方で,東北地方には,下部白亜系が連続して露出する地層が確認されており,パンサラッサ海域におけるWeissert Eventを含む炭素同位体比変動が復元できる可能性がある.
本研究では,北西パンサラッサ海域における炭素同位体比変動とその数値年代および当時の古環境変動を明らかにするために,相馬中村層群小山田層と唐桑層群小々汐層~磯草層を対象に,全岩有機炭素同位体比分析,凝灰岩のU–Pb放射年代測定,TOC,DOP分析を実施した.
その結果,小山田層中部から上部にかけて,炭素同位体比の約2.5 ‰の顕著な正の変動が確認され,小山田層に挟まる複数の凝灰岩層からは,Valanginianを示すジルコンU–Pb放射年代が得られた.一方で,磯草層中部においても約1.5 –2.0 ‰の顕著な正の変動が確認されたが,磯草下部からはValanginian前期,磯草層上部ではHauterivianを示すジルコンU–Pb放射年代が得られた.
これらの炭素同位体比曲線を基に,ヨ–ロッパ地域の代表的な下部白亜系と層序対比を実施したところ,本研究で得られた炭素同位体比変動は,Valanginian~Hauterivian GSSPセクションにおけるWeissert Event区間の炭素同位体比変動と極めて類似していた.加えて,磯草層の同位体比曲線には,Berriasian/Valanginian境界やValanginian/Hauterivian境界付近の炭素同位体比変動を記録している可能性が示された.また,得られたU–Pb放射年代は,最新の数値年代モデル(Martinez et al., 2023)と調和的であった.さらに,小山田層泥岩試料の化学分析の結果は,小山田層堆積当時に酸化的な環境が卓越していたことを示したが,同位体比が上昇する区間で一時的に還元的な環境に転じていた可能性が示された.
参考文献
Erba et al., 2004, Geology, 32.2, 149–152.
Martinez et al, 2023, Earth–Science Reviews, 104356.
Percival et al., 2023, Geology, 51.8, 753–757.