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[BCG06-17] バイオマーカーに記録された手取層群における前期白亜紀河川平野の堆積環境と自然火災

キーワード:前期白亜紀、バイオマーカー、河川性堆積物、季節性、自然火災
白亜紀は大気中二酸化炭素濃度が高く温暖だった時代であり、とくにアプチアン期–チューロニアン期は極域まで温暖帯が拡大した「超温室地球」であった。さらに、当時は緯度ごとの乾燥帯の広がり、植生構成要素、火災レジームなど、陸上古環境の諸要素が現在とは大きく異なっていたと考えられるが、その実態は十分に解明されていない。本研究の対象である福井県勝山市の北谷恐竜化石発掘現場では、下部白亜系手取層群北谷層の蛇行河川性堆積物が連続露出し、堆積構造の直方・側方変化が詳細に記載されている (Suzuki et al., 2015)。そこで、堆積物中のバイオマーカーおよび燃焼起源多環芳香族炭化水素(PAHs)を堆積相情報と組み合わせて解析することで、前期白亜紀の河川平野における微地形スケールの環境多様性を復元することを目的とした。
バイオマーカーおよびPAHsは、堆積岩試料を粉砕後、有機溶媒で抽出してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画し、GC-MSで測定した。また、堆積物中の有機物のバルク組成を得るために、ロックエバル分析を実施した。
分析の結果、植物光合成色素に由来するプリスタンやフィタン、真菌由来とされるペリレン、バクテリア起源のホパン類、シアノバクテリア由来の2α-メチルホパンなどが検出された。ペリレンは放棄流路埋積相やオーバーバンク堆積相の泥岩層で比較的多く含まれ、当時の河川平野がある程度湿潤な環境にあったことを示唆する。一方、放棄流路埋積相の最下部砂岩層では、還元的環境の指標(ホモホパン指標)や2α-メチルホパンの比率が突出して高かった。現世の放棄流路では、降水量が少ない時期に水位が低下しシアノバクテリア優占が生じる事例 (Bovo-Scomparin et al., 2008) が知られており、これに照らすと季節的な水位変動が前期白亜紀においても起こっていた可能性がある。
北谷層が属する赤岩亜層群(アプチアン期–前期アルビアン期)では、植物化石や土壌性炭酸塩ノジュールの存在から温暖化・乾燥化の進行 (酒井ら, 2018) が示唆される一方、脊椎動物化石の安定同位体比からは局所的な降水増加も指摘されている (Amiot et al., 2015)。本研究では、季節的な降水量の変動を想定することで多様な古気候指標を調和的に理解することを試みた。放棄流路埋積相にみられる水位低下期は、こうした季節降水のコントラストが河川周辺の局所環境に顕在化した例と考えられる。
また、北谷層の堆積物からはコロネンなど高温燃焼由来とされる高分子量PAHsが下位層準 (Hasegawa & Hibino, 2011) と比べて多く見つかる(矢野ら, 2023. JpGU)。しかし、オイル生成帯に相当する成熟度のため続成起源PAHsとの判別が必要であり(e.g. Xu et al., 2019)、単純な芳香環数による区分では不十分であることも示さた(矢野ら, 2024. JpGU)。こうした課題に対応するため、本研究では主成分分析(PCA)を用いて続成の影響を強く受けたPAHsと燃焼起源PAHsを区別し、燃焼起源PAHsの寄与や燃焼強度を見積もる改善指標を得た。その結果、オーバーバンク堆積相の泥岩層では燃焼由来PAHsの寄与と火災強度指標が高く、ボーンベッド層準や放棄流路埋積相では燃焼起源成分が相対的に低いという明確な差異が見いだされた。この分布パターンは、自然火災の発生頻度や強度が河川周辺の地形や植生分布と密接に関連していた可能性を示唆する。また、北谷層で示唆された大規模な自然火災は、季節変化の増大による極端な雨季と乾季を背景に発生していた可能性がある。
バイオマーカーおよびPAHsは、堆積岩試料を粉砕後、有機溶媒で抽出してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画し、GC-MSで測定した。また、堆積物中の有機物のバルク組成を得るために、ロックエバル分析を実施した。
分析の結果、植物光合成色素に由来するプリスタンやフィタン、真菌由来とされるペリレン、バクテリア起源のホパン類、シアノバクテリア由来の2α-メチルホパンなどが検出された。ペリレンは放棄流路埋積相やオーバーバンク堆積相の泥岩層で比較的多く含まれ、当時の河川平野がある程度湿潤な環境にあったことを示唆する。一方、放棄流路埋積相の最下部砂岩層では、還元的環境の指標(ホモホパン指標)や2α-メチルホパンの比率が突出して高かった。現世の放棄流路では、降水量が少ない時期に水位が低下しシアノバクテリア優占が生じる事例 (Bovo-Scomparin et al., 2008) が知られており、これに照らすと季節的な水位変動が前期白亜紀においても起こっていた可能性がある。
北谷層が属する赤岩亜層群(アプチアン期–前期アルビアン期)では、植物化石や土壌性炭酸塩ノジュールの存在から温暖化・乾燥化の進行 (酒井ら, 2018) が示唆される一方、脊椎動物化石の安定同位体比からは局所的な降水増加も指摘されている (Amiot et al., 2015)。本研究では、季節的な降水量の変動を想定することで多様な古気候指標を調和的に理解することを試みた。放棄流路埋積相にみられる水位低下期は、こうした季節降水のコントラストが河川周辺の局所環境に顕在化した例と考えられる。
また、北谷層の堆積物からはコロネンなど高温燃焼由来とされる高分子量PAHsが下位層準 (Hasegawa & Hibino, 2011) と比べて多く見つかる(矢野ら, 2023. JpGU)。しかし、オイル生成帯に相当する成熟度のため続成起源PAHsとの判別が必要であり(e.g. Xu et al., 2019)、単純な芳香環数による区分では不十分であることも示さた(矢野ら, 2024. JpGU)。こうした課題に対応するため、本研究では主成分分析(PCA)を用いて続成の影響を強く受けたPAHsと燃焼起源PAHsを区別し、燃焼起源PAHsの寄与や燃焼強度を見積もる改善指標を得た。その結果、オーバーバンク堆積相の泥岩層では燃焼由来PAHsの寄与と火災強度指標が高く、ボーンベッド層準や放棄流路埋積相では燃焼起源成分が相対的に低いという明確な差異が見いだされた。この分布パターンは、自然火災の発生頻度や強度が河川周辺の地形や植生分布と密接に関連していた可能性を示唆する。また、北谷層で示唆された大規模な自然火災は、季節変化の増大による極端な雨季と乾季を背景に発生していた可能性がある。